恵みの使途(1)

仏教には、出家者の修行の一環として「不浄観」というイメージトレーニングがあったそうだ。どういうものかといえば、本能的に忌避してしまいそうになる人体の破壊的かつ猟奇的、凄惨な姿、現代で言う「グロ画像」の様な光景を強く想像することで、ショック療法的に肉欲に類する煩悩を絶つというものである。

僕がそう説明すると、イナセは「つまり萎えるってことね」と要約した。的を射ているので良しとする。

「で、それがどうした?」イナセは仰向けに寝転んだ姿勢を変えず、足だけを組み替えて続きを促す。人の話になんか興味が無いような態度を取りつつも、意外としっかり聞き手を務めてくれる。コイツの唯一の美点だ。
「唯一は余計だがな」
しまった、心が読めるタイプの世界線だったのか。Note初投稿だから分からなかった。僕は咳ばらいを挟み、続きを口にする。
「そう、つまりどんな次第でも、大事なのはイメージだってことさ。今夜実行される僕らの作戦にも、それは同様に言える」
僕はわざとらしくならない程度に読者の興味を惹くようなマクガフィンを示唆しつつ、そしてマクガフィンとは物語において登場人物たちが話を進めるための仕掛けのことであると親切に説明しつつ、不敵な笑みを浮かべた。

そう、今夜、今夜だ。そこで全てが変わる、あるいは、分かる。

「あのさぁ、ナツオ。それとは全然関係ないんだけど」
イナセはわざわざ僕の名前を呼びかけるようにした。多分、このあたりで語り部の名前くらい開示しておかないと読者がつっかかると思ったのだろう。律儀というか何というか、根っこの部分は実直な奴なのだ。どうせ後に知らしめられる情報を無駄に隠匿して引っ張ったって良いことが無いのは、ゴールドラッシュの時代より明らかだ。
「なんだそのゴールドラッシュの時代からってのは」
意味なんか無い。言ってみたら勝手に忖度されてそれっぽくなるかなと思ったのだ。計画通り上手くいったと思う。
「で、今何を言いかけたの」
「いや、俺たちの名前、著作権とか的に大丈夫かなって」
「なにそれ?」
僕にも分からないことはある。あるいは、シラを切りたいことは。

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ニノ口(にのくち)

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恵みの使途

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