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ビジョン設定をあとまわしにする共通さ

情報発信がうまくいかない会社や団体の共通点。そのひとつがビジョン設定をしない、あるいはあってもキーワード化をあとまわしにしていることです。この設定をしないため、営業活動は目先のことばかりをおいかけたり、引き合いにあわせて商品設定をアレンジしてしまうなど、そもそもなんでその創業をしたの?というような活動に変質してしまっていることが多いわけです。

え、ビジョン設定していないから、営業活動が変質?いや、ちがうでしょ、そういう問題じゃなくて、マーケ分析が足りないとか、営業手法がなってないとかじゃないの?

とか、言い出す人が社長を筆頭にわんさと出てくるのですが、だいたい営業成績が悪いところは、ビジョン設定をしていないからなんですよね。だってどんなメッセージを出せばいいか戸惑うからです。

たとえば、リゾートホテルのビジョン設定。「都会の人たちのオアシスとなるリゾート施設運用を目指す」としたとしましょう。そしてインスタに2種類の写真をあげようということになりました。どっちの傾向の写真を載せますか?

A

B

都市部の人は、自然そのものの写真に魅かれ、地方の人は建物の写真に魅かれる傾向があります。つまり、ビジョンに沿った写真のチョイスは、都市部の人たちが憩いの場として利用してもらうような運営を心掛けたいので、都市部の人たちにヒットするAのほうがより効果を期待できる、ということになります。Aのような傾向の写真をたくさん載せることになるでしょう。

ビジョン設定をしておらず、単にリゾートというファジーすぎるくくりでインスタを運用したとすると、AもBも使うことになると思いますが、メッセージやターゲッティングがぶれていくので、1発信ごとの集客期待も効果も小さくなります。

つまり、ビジョン設定をしっかりしているところは、宣伝も営業も相当絞り込んだメッセージを使って最大の効果をあげるようすべてにおいて努力しており、ビジョン設定をしないところは、何を誰にどうアピールしていいのかわからないため、フロントラインの担当者のカンや経験という裁量に頼らざるを得ない構図になっている、ということです。

ビジョン設定の先送りが営業方針をねじまげた例

わたしが実際に在籍していた貸し会議室の営業でのこと。ここは高級モデルをウリにしていたのですが、そのサービス内容をよく理解していない顧客からあるとき、30%オフというめちゃくちゃな値引き要求をされてしまい、末端の営業担当がそれを受けてしまいました。事業部長は営業担当者を呼び出して叱責、となりました。しかし、営業担当者は仏頂面です。営業目標に寄与したのだから、何が悪い、というカオでした。

この会社はビジョン設定をしておらず、かわりにミッション設定がビジョンのような役目を果たしていて、ややもすると「空いている会議室を売れ、売れ、売るんだぁぁぁ」という、いつの時代だ?、と言いたくなるような営業方針が示されることがありました。売れば正義、という危険な考え方です。

さらに、こまったことに、低価格・狭小会議室の価格競争分野にも足を突っ込み、手持ちの小さい会議室をネット販売する暴走が始まりました。

あれ?高級路線だよな?小さい会議室は大きな会議室の控室利用、という側面で提案するんだったよな?と、現場は大混乱。ネット販売部門まで作りましたが、クレームの9割がこの部門に入ってくるもの、という結果になりました。

少しずつのズレがチリツモで、大きな差を生んでしまっているのに気づいていない。

ビジョンなんて、営業成果に直接的にかかわりないから、空いた時間にやればいい、という人結構多いです。しかしすべての会社が業績伸長に悩んでいます。事業計画書をもとに、ある程度のビジョン仮説をたて、実際に行われている情報発信を分析していると、

高級路線なのに常に値引き

高付加価値を求めるはずがドミナント戦略みたいなことをする

というような正反対の営業活動をしていたりするのです。その結果、無駄な対応やおよびでないお客に商品やサービスが荒らされて、既存の顧客も来なくなってしまう、という悪循環すら生んでいます。

インスタの例を示しましたが、ビジョン設定をしていない会社は、Webからチラシ、雑誌の出稿、ポスター、ブログ、FBなどSNSと、ありとあらゆるチャンネルでとんちんかんな情報発信を365日継続しているわけです。発信活動を毎日していなくても、すでに発信されたとんちんかんは掲示されつづけていますよね。ひとつひとつの差異など大したことがないですが、お門違いも1年続けば業績悪化になるでしょう。そしてなっています。

ビジョンと業績が結びつかないと錯覚する危険さ

そもそも、会社はなぜ創業したのか。ほとんどのケースが何らかの特殊なサービスや商品を通じて社会に貢献することがお題だったはずです。事業を進める過程で、顧客の声を聴き、その商品やサービスを改善・改良していくはずなんですが、いつのまにか売り上げやお客の「声をききすぎる」あまりそもそものお題を忘れてしまって低迷に陥っている、というケースは意外と多いんだな、と複数社を見ていて感じます。だから、社員ひとりひとりに、「この会社ってそもそもどういう経緯で創業したんですか?」と聞くと、ほとんどの人たちが答えられない。小さい会社でこれです。なんのためにあなたたちは働いているの?と同義で、何のために会社は存在するのか、という答えが出せないわけで。そういう人たちがまわす会社、寒気がします。

ということで、ひとまず聞いてみる

あなたが参加している会社のビジョンってなんですか?

これに答えられない場合、あなたの会社はインターナルコミュニケーションを必要としているかもしれません。ビジョンを共有する、目的を明確にする、無駄な仕事をしない、どうでもいいストレスを持たない。日々の、嫌だな、と思うことのほとんどは、ビジョンに沿った活動を志向していないから起こっていることです。行動指針が決まっていれば、意に沿わないものがなにかがはっきりするので、断ることができるようになる。ビジョンに沿って活動しようと考えるようになります。その主導は人事でも経営企画でもなく、パブリックリレーションズの役目です。自社にパブリックリレーションズがあって、自分がビジョンのことを語れないなら、パブリックリレーションズのせいにして(笑)、彼ら、彼女らにこう迫るといいかも。

「会社のビジョンを改めて明確にしませんか?」と。

まあ、このアクションは本来は社長がとらないといけないことですが、社長が動かないとても残念な組織の場合、パブリックリレーションズに音頭をとらせ、社長をたきつけるか自分たちで自律的に考え行動するかのどちらかです。

ビジョンコンテストをやってみるといいかも

パブリックリレーションズがビジョン設定の重要さを滔々と説明した企画書をそえて、全社員あてにビジョンとなるキーワード案を複数考えてもらうコンテストを開催しました。聞いてみると意外とたくさんの案が寄せられてきます。会社の将来の方向性をイメージしながら、アイデアの数は小さい会社で50近く集めることができました。

まっとうな会社なら、これを機に全社ミーティング型の合宿を開いて、この会社のありようを徹底的に議論する、という手があります。

逆に集まらないのは、説明抜きで単に募集をするケース。実態をちゃんと説明し、これを導入することによってどんないいことがあるのかを語らなければ、「あとまわし」マインドの人たちには響きません。

これだけ書いてもビジョン設定をあとまわしにする人は、わたしとは縁がないかもw









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