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状況把握に見る力量差

特定の会社で働く前にやっておけばよかったな、と思うことは、状況把握シートを作って、それをもとに社内取材をする、ということでした。残念な人のインストラクションに付き合わされて、十分な情報を適正な期間のうちに得ることができなかったからです。

パブリックリレーションズで途中合流する場合、いかに早く、深く企業の状態を内側から把握するのかが重要になると思います。たいていの企業は新人・中途に対し、誰かが総合的に社内状況をレクチャーするケースが多いですが、その人の力量差により、初動に開きが出るな、といろいろ経験して感じたことでした。

たいていは残念なインストラクションになる

大きな組織でない限り、新入社員に対するガイダンスはひとりかふたりの先輩社員の裁量よるものになります。この人たちが会社の何をどのくらい知っていて、あるいは理解しているかによって、新人たちの基礎知識の度合いが左右されます。

で、残念なことに、ほとんどのケースでいい情報を得ることはできません。以下のどれかのパターンになっています。

1)体系化された人事制度を運用側で経験したことのない人による
2)若手すぎてビジョンは夢物語に終始し、マネジメント的視点は皆無
3)作業員の延長マインドでその人の補助程度の認識で説明される

少人数の会社なら社長がまずはつきっきりで、経営面から業務内容を教えてくれた方がはるかに多くのことを知ることができます(これは面接段階からトップが出てくるかどうかで決まるケースがほとんどですけどね)。


状況把握のポイントは、PR課題抽出の下準備

細かく知れば知るほどいいですが、要はPR課題の抽出に必要な基礎情報のすべてを知らなければならないのです。しかし、インストラクションにあてられる人はほとんどのケースが事業活動の一部の一部を担っている「従業員」であり、社長やそれに近い経営陣によるものではありません。情報が断片的なため、得られたことをもとに仮説を立て、別の人にヒアリングをして仮説を現実のデータに変換していく作業がはじまります(はっきりいって、時間のムダの作業です)。

PR課題抽出には、内部要因と外部要因があり、その項目はだいたい10項目ずつくらいです。これらを「成果が出そうだ」という視点で短期・中期・長期に振り分けてみると、要素のみですがだいたい以下のようなことをまず入社1か月以内に知りたいところです。

短期:
・何らかの情報発信成果を取れる材料を発見する(注1)
・会社の基本的な情報すべて
・事業のビジネスモデルのしくみ
・社内の人間関係の概要

中期:
・現状、現場が感じているPR課題のヒアリングとリスト化。そこから分析した解決策の仮説
・経営戦略がどのくらい明確で、決算データがどれくらい従業員に公開されているか
・決算データの非公開具合が、将来緩和されるかの肌感覚

長期:
・PR課題から逆算した戦略の素案 VS 経営戦略から構成したコミュニケーション戦略の素案
・運用上トラブルとなりそうな要素の完全なリスト

これらのことは、最初の説明が不十分でも、入社後1週間から1か月で見切れます。残念な説明なら「残念な体制」があるだけで、その残念さはどうでもよく、今後改善できるのかが見通せるのか、ということが評価指標になりますね。

ダメなところは見通せません。脱出です。

たとえば、会社の基本的な情報すべてを知ろうとして、全事業所の住所を郵便番号から知りたい、と言ったときの社員の反応。めんどくさそうになんだかんだで数日たっても上がってこない場合は「こら、やばいぞ」となります(笑)。←しかし実際に直近にお世話になった会社で起こった事実です。

担当者の状況把握

いつのまにかPR統括候補にさせられていた事例では、すでに担当している人たちから状況を教えてもらうことになりました。このヒアリングでは、担当者それぞれの力量が放っておいても出てしまったな、と振り返ります。

1)ストラテジックコミュニケーション型か、バイトの延長程度か
情報庶務の場合、今何をやっているかのリストを報告しておしまいです。どんなビジョンのもとにどういったミッションを企画し、それぞれの進捗がどのくらいでどのような課題を抱えています、なんていう報告はなく、二言目には「忙しい」と言い出します。
当然ながら、先にリストしたような成果目標は測れませんし、単なる事実確認の域を出なくて「この人はアルバイトさんか?」と思うような問答になります。

2)その人の領域に踏み込むと2通りの反応に分かれる
気づいたことを指摘したりすることになりますが、嫌な顔をされる場合と、前向きに改善策を一緒に考える場合に別れました。コミュニケーションを工夫すれば嫌な顔をされませんが、率直に伝えた場合どんなリアクションをするかな、と試してみよう、と思ったので、当人たちからは「厄介な人がきたなあ」と、思われてしまったかもしれません。

3)締め切りをリストするか、しないかでも力量が分かれた
忙しいと言い訳をする人は総じて仕事の見通しが立たず、目先のことに振り回されています。これをどう改善して、自分のペースで仕事をできるようにするかが、プロジェクトマネジメントの基本原理だと私は思っていて、情報発信を担う者は等しくこのマインドが必要だと思っています。ですので、ヒアリングでは説明されたそれぞれの仕事に期限が設定されているかを聞いていきました。バイトの延長な仕事をしている人はほぼ、その設定がなく、指摘されても気にもとめませんでした。


状況把握はハードとソフト両面から行うもの

PRには状況分析が必要で、その第一歩は状況把握からはじまります。でないと、お門違いな情報発信をしてしまい、世の中を混乱させてしまうかもしれないからです。そのメソッドの一例をあまりまとめずにずらずらと書いてみましたが、仕事に取り組む人たちがどんなところに意識しているのかによって、伝えるべき内容にばらつきがみられる課題があります。

これに流されずに知りたい情報を短期間のうちに集めるには、やはり受け身ではなく、こちらから聞きたいことをあらかじめまとめ、取材していくしかないようです。

会社(=社長)がPRに求める内容がどういったものなのか、の把握も重要です。「広報」と言っていて実は「マーケティング」だったなんてことはザラですし、そうなると広報とマーケティングの両方をしっかりとおさえなければいけないはずなんです。「秘書」をやらされることもあれば、「経営企画」なども求められているかもしれません。用語づかいをそもそも間違っているので(目的と目標の違いが説明できない、とかもこれにあたるし、KPIをKFS抜きで語るフシギちゃんとかもいる)、このあたりの注意も必要です。しかし、間違いを指摘するのではなく、携わる人たちがどんな目線で目標設定をしていて、何に困っているのかをリストしていくのが、真のヒアリングです。

記事では目標成果を取ることを中心に書いてみましたが、本筋は組織にとってのPR課題を探し出し、解決することなので、困っていることを解消していくことが地味ながらも主要業務になっていくでしょう(っていうかそうでないとおかしい)。



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