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意外だったSNS規定part2

私が一時期所属した会社で、ある日SNSを使ったLINEいじめ型の上司に対するハラスメント事件が起こりました。SNSはLINEのグループ機能のことをさしますが、これは社内で利用許可を出していない手段で、かつ社員はそれぞれ私用端末を使ってやりとりをしていた、というもの。私たちの身近でありがちなことではないでしょうか。

くわしくはpart1に書いています。
https://note.mu/takafumitanaka/n/nb19ffa095f82

この、ハラスメントや規定外のことをしていた社員に対し、会社は奇妙な懲罰と規定でSNS利用を制限してきました。改めて、part1記事からその部分を抜粋してみます。

・担当部の事業部長を戒告処分
(人事考課に記録されるので今後の昇進などに悪影響を及ぼすもの)
(報酬減額などの措置にはならず)
・ハラスメントを行った従業員には具体的な罰則はなし(表向きは)
・被害者であるマネージャーに具体的な保護策もなし
・SNS利用規定として、利用を認めていないものは即刻パソコン、スマホから削除すべし(私用携帯端末、ノートPCの場合は「該当するもの」を削除)

今回はその規定に対して、パブリックリレーションズ的な動きはどうすべきか、ということを勝手に考察してみます。

いじめ対策や私用端末から類推する企業内コミュニケーションの課題

LINEいじめが出てしまう背景は(拡大するとSNSを通じたパワハラが起こってしまう背景は)、業務の進め方にいらぬストレスがかかっていることの積み重ねではないのか、とも思います。マネージャーに文句を言っていた従業員は、何か言いたいことが抑圧されているからこういう行動に出たわけで、日々の進捗を観察していると、そういう要素を生んでしまう環境がこの会社にはあったかな、と振り返ります。

・事業ミッションと業務ビジョンの混同
・事業ビジョンが浸透していないので仕事する意味感がバラバラ
・人手不足による過大な業務量

この会社はわかりやすい事業スローガンを設定して内外にアピールしていたのですが、言葉の意味をくみ取るとどう考えても「事業ミッション」で、「経営ビジョン」ではありませんでした。事業ミッションを経営ビジョンと混同すると、「売れ!売れ!売れ!」みたいなことが平然とまかり通る社内環境が生まれます。売ることしか自分たちの活動の正義を見いだせない、というような、アホな状況になるわけで。

その他いろいろとおかしな要素が並んでいくのですが、それをあげるときりがないので、要点をしぼりこんでみると、社内コミュニケーションとは、「基本的に会社が持つ事業ビジョン実現のためにどうやっていこうか、ということを対話すること」であると思うので、無駄なミッションや不要な対応、余計な仕事に使うことは言語道断、ということになります。

パブリックリレーションズは、社内コミュニケーションを円滑にはかり、社内文化を作る手助けをするインターナルコミュニケーション、エンプロイーコミュニケーションという2つの分野を担う必要から、こういう会社ではまず2つの対策を打たなければならないかな、と思いました。

1.無駄なコミュニケーションを排除する
2.社員全員のストレスを緩和させる具体策を実行する

まず、1ですが、事業ビジョンを改めてキーワード化してそれぞれに必要な貢献とは何か、を定義してもらいます。そうすると、無駄な仕事をしなくなるのと、どうでもいいルールをやめます。どうでもいい目標設定を見直し、日々の活動のすべてが論理的に説明できるようになっていく、はず。

そして2は、当然ながら、貢献に寄与する活動の上で、障害となるものすべてが改善できる、と思える制度を社内に敷くことです。おそらく、就業規則の大幅な改定や、もしかしたら賃金規定の見直しなどにも踏み込んでいくことになるかもしれません。私用携帯端末の問題を例にとれば、これを会社支給にするのか、とか、じゃあ運用ルールはどうする?みたいにどんどん広がっていくわけで。

これらを簡単にあげていますが、実際にやるとなると相当難しい(笑)。ポイントは、紛争が起こった時に組織としてどういう保護策を講じるか、ということです。が、厳密にはパブリックリレーションズが直接的にかかわるものではなく、ルール化全般について経営企画、財務、総務・経理(バックオフィス全般)と、部署や職掌をまたいだ大幅な連携が前提の改定になると思います。しかし、これらの活動は社長がまず率先してかかわっていかなければならない、とも思うので、PR的には社長をたきつける必要があります。

パブリックリレーションズは世間一般の導入事例をリサーチし、理想形をプレゼンしながらローカルルールにあわせて一番核心を突く提案をし、第1歩目の動きを取らせることと、進捗を観察しながら動かない課題に対して、外圧を使って行動を促す役目を担うことでしょう。そのためには膨大な量のインプットを日ごろから行っていなければいけないかも。

常日頃からの声かけなどで気軽に相談できる環境づくりを進化させる、とか

相談しにくい世の中になった、という言われ方が、凶悪犯罪が起こるたびに巻き起こっています。定義がふえつづけるハラスメントなどはコミュニケーションの壁になっている、と感じる人も増えているようで、これは社内でのコミュニケーションを阻む要素になっているかもしれません。その場合は、思い切ってすべてのハラスメントを学び、社内研修に活用してしまう、という手があります。今ある問題すべてを知ったうえで、できることをはっきりさせる、という考え方ですね。まあ、これは人事部の仕事です。

パブリックリレーションズのアプローチとしては、コミュニケーションを記録すること(取材材料=外部へのアピール材料の蓄積)を通じて社内でできあがったノウハウを社内で活用できるようしくみづくりを行う主導者になることでしょう。ナレッジデータベースをどのように作っていくか、ということは、結局のところ、業務進捗の改善や、相談が増えるなどのコミュニケーション機会を提供していくことと同じことになります。

ファジーなような対策、実現できるのか?

このケースは上にあげたようなチェックポイントを通過するようマネジメントすることは可能かな、と思っています。ただし、社長が賛同してくれるかどうかで成功率は1%になるか、99%になるか、というくらい振れるようなテーマです。

しかし、どっちみち解決しなければ採用で人は来なくなるし、取引先も離れていくし、お客も減っていくでしょ、これって。

従業員を粗末に扱った会社がブラック企業として世間に認定されてしまったら、その後どうなっているかは私以上にたくさんの読者が知っているはずですからね。

また、この解決策が取れなければ、情報発信などは夢のまた夢。パブリックリレーションズ活動など不可能です。

有名になればなるほど社会的責任が重くなるのに、ブラック企業では、記者からあらさがしされてしまいます。顧客にもブラックな部分を隠してアピールを繰り返すわけで、これはもうプロパガンダ。PR担当者は、会社を去るかどうするか、という岐路に立たされている、というレベルでもあるわけで、わたしが「大丈夫だろう」と思ったタイムスパンを我慢できなければ、おそらく去って行ってしまうだろうなあ、っていうくらいのことです。

「へんな投稿するな!」な世の中の標準とは違ったSNS規定、実は組織のあり方の根幹に迫るテーマだったかも、と振り返ってみて思ったことでした。




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