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とは言っても、結局は相性

パブリックリレーションズは経営層、特に社長とどのようにして情報発信を中心にしたリレーションシップをステークホルダーたちと取っていくかを「二人三脚」で行なっていく。しかしこれは、単にパブリックリレーションズ担当者がスキルフルであるだけでは成立しないややこしさがある。

社内コミュニケーションへの適応力

社長との相性

この2つが重要になるものだ。

本場アメリカはもとより、世界のパブリックリレーションズの教科書であるEffective Public Relationsにも、「成否は社長との相性次第」ということが堂々と書かれている。

というのも、パブリックリレーションズプラクティショナーは、社長への提言のみならず、諫言すら率先して行わなければならず、ムッとさせることしきりだから。怒りを収めて冷静に言われたことを考えるようになるには、言った人(プラクティショナー)との信頼関係がどのくらいあるか次第なところであり、どんなにスキルが満たされていても、成果を達成していても、相性が悪ければ最終的には機能しない。

「おそらく、企業内の上級経営層との関係で、何よりもまず、CEOとパブリックリレーションズ担当上級役員との相性が最も重要である。仮に経営層との関係が良好であるならば、パブリックリレーションズ担当者は、誰にも知られないように「あなたがこれをすれば、大きなミスを犯しますよ」と進言することができる、CEOの「忠実な反対派」となる特別な機会が与えられるのである」(タイレノール事件当時のPR担当役員のコメント、1995)

パブリックリレーションズにとって、とくに長期化するPR課題解決において必要なのは、メソッドでも、戦略でもなく、相性。ジョンソン&ジョンソンのパブリックリレーションズ担当者がコメントに明かすように、あの大事件では相性が結論を左右したと言い切っていいかもしれない。

まあ、これにはパブリックリレーションズ担当者の中立性が強烈に効いているという裏もあるとは思うけど。

社長がパブリックリレーションズに約束しなければいけないこと

さて、相性に至るまでにPRを長期に成功させるには、以下の協力が経営から必要とされる、と、世界のPRのテキストブックにも書かれている。

1.パブリックリレーションズに対するコミットメントと積極的な参加
2.有能なパブリックリレーションズカウンセルの確保
3.方針決定にパブリックリレーションズの視点を盛り込むこと
4.内部関係者と外部関係者との双方向コミュニケーション
5.発言内容と実際の行動の一致
6.目的と目標を明確に定義すること

経営にありがちなのが「リリース書いといて」「こっちの都合で売ってしまおう」「昨日言ったことは明日はかわるかもよ、だって社長なんだから」というような経営陣の自分よがりな姿勢。これにパブリックリレーションズ担当者が必要に応じて空手チョップを振り下ろすことができるか。できても聞き入れてくれて修正してくれるか、ということに尽きます。

経営陣との相性をよくするにはどうしたらいいのか、というと、これは会ってみないとわからない。天からの当たりくじを待つように探しているのでは、まず出会いはない。

パブリックリレーションズの面談、とにかく会うしかない。会わせるしかない!

ほかの職能と違って、パブリックリレーションズの採用は、この上記の要因がかなり重要なので、応募者すべてと社長を会わせるのは鉄板である、と言えるかもしれない。相性とはだいたい、

・それぞれの経営感覚や時代をとらえる感覚
・時事情報をどんな角度で見れるか・それを認められるか
・タイミングを取る”間”が合うか、合わないか

というような、感覚に左右されるものが大半を占める。

だから履歴書としては、PRの定義とメディアミックスのディレクション経験、コミュニケーション戦略の重要性の理解と実践ができていれば、「とにかく会わせてみる」しかないのである。

ところが目先のことしか考えられない人事担当者や転職斡旋業者が、すでにセットされたキーワードに合致しない、年齢があわない、性別が違う、というような、つまらない要素でこういう応募者を退ける構図が一般的。

パブリックリレーションズの性質を理解する経営者からすれば、奸臣の行為そのものであり、会社の営業妨害と認定してもいいくらいの惨事だ。

パブリックリレーションズ担当者を探すのは意外と大変、と思っている経営者の人は、採用プロセスで業者や人事担当者に任せてしまっていないかをまず点検すべき。そしてこの件に関しては自分がまず書類を見る、と規定しないといけない。パブリックリレーションズ専門家でもない人の視点で彼らの履歴書を見ても、分かりはしないのだ。

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