見出し画像

上から下まで「忙しい」おかしさ


状況把握をしながらよく感じたことは、以下の2つでした。

・社長やマネージャーがどうでもいいことに怒っている
・下っ端がどうでもいいことに精を出している

そして共通語として交わされるキーワードが「忙しい」です。「忙しい」はすべてのコミュニケーションをシャットアウトします。が、使っている本人は自己陶酔の最中にあるので、叩き起こさないと組織内での協調性を乱すよね、というのが実感でした。

トップに、忙しさに対して点数をつけてもらった

とある事例で、トップマネージャーが毎日誰かとミーティング漬けになっているので、この人に「それぞれの会議に出来栄えとして点数をつけるとしたら何点ですか?」と聞いてみたところ、ほとんどが「30点」とか低スコアなものばかりで唖然としました。

・思ったように従業員が動かないイライラ
・話がまとまる前に議題として持ち込まれてしまう
・社長決裁でなくてもよい判断を社長がする無意味さ

というようなことがイライラと低スコアの真相でした。

これらの会社はミーティングの日を決めて人が集まってくる構図だったので、資料が揃っていなくても、話がまとまっていなくても集まっていたので、こういう不満が蓄積されていました。おもしろいのは(?)この状態を問題だとうすうす感じていても何かを変えようとアクションを起こす人が皆無だったこと。

そこで、定例ミーティングを廃止し、「何かがまとまったら会議にする」という非常にシンプルなことを新しくルールとして導入することを提案したり、導入したりしました。

導入したケースでのこと。ところが、今度は待てど暮らせど次のミーティングが設定されない。

そして口々に「忙しい」はやみません。

個別の取り組んでいることについて、

・その仕事に見通しがつくのか、つかないのか。
・見通しがつくとしたらいつごろ終わらせそうか。
・具体的に終了期日が設定できるなら、それはいつか。
・期日設定は妥当といえるのか。

という4つの視点を各位にふって、自発的に締め切りを切ってもらったのです。
締め切りがきた時点で「資料や話し合いの材料がそろった」とみなし、会議を開きますので、次の日取りも締め切り日に合わせて設定する、ということになります。

見通しを立たせる

つまり、締め切りを決めたことで、作業の見通しがたち、見通しが立った順に処理をしていくようにしたわけです。

これで理由も具体的にしない「忙しい」という口癖を封じました。

それでも「忙しい」というへんな人には、ひとつひとつの内容を聞き出し、「それはいつ終わらせますか?」と、具体的な日にちの設定を迫りました(笑)。これはクルーでもパートでも社長でも関係なく日にちを切ってもらい、実際にその日に結果をもとめてトイレまでついていく「張り付き」をしていきます。社内でポジションに関係なく2,3人ほど張り付くいけにえを見せると、ぴたっと「忙しい」がやみましたw 逆ギレする人も多数。しかし、「言ったことを守らないのはあなただろ」をいろいろなことばで伝えると、わかって(?)もらえます。

(注)こういった対処術は、ビジネス本などにはわんさとでていることなので、もっときれいにかっこよくみなさんはできると思います。トイレにまでついていくことは決してマネしないようにw

っていうか、忙しい封じはこの記事の主テーマではないですよ。為念。

できない仕事を選別し、断る

これまた笑っちゃう話ですが、忙しい、という人はほぼ「お人よし」です。仕事を引き受けすぎて飽和状態になっていることが多い。段取りを組む前に作業に入ってしまうこともある程度の共通性があります。こういう人からは、まず仕事をひっぺがさなければいけないw

・まず、約束をしていることを自覚させる
・約束を破ったら必ずその場で埋め合わせをしてもらう
・できる約束しかしないようにさせる
・できる仕事とこなせない仕事を仕分けしてもらう
できない仕事を断らせる

最後の「できない仕事を断らせる」がコミュニケーション上の中間キーとなる目的です。最終的には「忙しい」を口に出さなくさせ、考える時間を1日当たりの総労働時間に対して20%以上作れるようにしたい(8時間労働なら1日当たり92分)のです。

仕事のクオリティアップが忙しい封じの目的

できもしないことをやらない。人からおしつけられたことをおしつけ返す。古今東西、前後100年、仕事ができる人は基本的にこの2つができている人です。かわりに引き受けた仕事は全力でやる。そしてひとつひとつのクオリティを向上させようと工夫している。さきにあげた内容では、「議題がそろってから会議を行う」「期限を切って仕事の工程を見える化する」「プロセス管理でミスを警戒し自発的に改善ポイントをさぐる」「見通しを立たせることで、できる仕事できない仕事をはっきりさせる」というようなことをさせて、仕事の大半を作業でなく考え工夫し成果を出す構造にかえていく。忙しいことを指摘されて逆切れする人多数ですが、締め切りを切らせることでほとんどのことが改善されていくので、結局は許してくれますけどねw

ひとつひとつをあげていくと、ばかみたいなことばかりです。しかし、「忙しい」と言葉を発してそれに身も心もゆだねてしまうと、人間って、考えなくなります。まわりも「忙しい」と安心して、ばかなことをしていることを「おかしい」と思わなくなる。数社を見ていて、きもちわるいくらいに共通点が見えておもしろかったし、ぞっとしたし、でした。

やっと「忙しい」を封じる第一歩目に

パブリックリレーションズは『考える仕事』です。ロボットの延長みたいな、考えないで手を動かすだけだけど時間が過ぎていく、という作業ではありません。戦略の適合性を常にはかりながら、必要なものをそろえる手はずを整え、進行中の案件をチェックする。そのすべてに考える時間が必要なのです。作業は考えなくなります。考える仕事をする人たちにとって、作業は仕事をするうえで最高の逃げ場となります。その極みが「忙しい」を常に口にして何の具体的成果も出さない状態です。トップの「忙しい」も、下っ端のくだらないクオリティの成果に振り回された結果の「忙しい」であると、経営的に危険な状態、といえます。30点くらいのものしか集まってこない会議を連発されて、経営者の一日が30点で終わってしまうのは、ぞっとすること。情報発信も30点クオリティの集大成で発信しても、記者からスルーされます。

忙しいの解消、パブリックリレーションズの仕事か?とさいごにみもふたもないオチというか疑問をあげてみますが、「パブリックリレーションズの仕事です!」と言っておきましょう。これは立派に組織内コミュニケーションのカテゴリーであり(インターナルコミュニケーション、オルガニゼーショナルコミュニケーション、エンプロイーリレーションズ)、近年ではナレッジデータベースなどの整備にからめて、ひとりひとりの生産性改善に寄与する仕事です。生産性があがり、コンプラが整備され、説明責任が果たせる知見を社員誰もが有したとき、はじめてまっとうな情報発信ができるわけで。

パブリックリレーションズは、ニュース原稿を読むだけのキャスターではありません。それだったら「キャスター」あるいは「アンカー」という職種名がつくはずです。パブリックリレーションズは原稿がそろうまでの編集と、情報提供すべき人たちがそれを提供できるようにする環境整備を総合的にプロデュースする必要があるわけです。社外だけがリレーションではなく、社内にも同じようにリレーションを作らないと、まったく知らない人に響くメッセージは作れない。

おかしな「忙しい」が上から下まで蔓延している組織はやばいですよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?