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反響営業の処理を滑らかにこなせるようになるには

わたしはここ最近まで、貸し会議室の会社で営業担当をしていました。もともとはパブリックリレーションズの仕事をしていたのですが、別の資格取得を優先させたくて、生活費を最低限稼げるけれども正社員と同等のレベルでお仕事ができる環境を、とさがしていたところ、こちらにご縁があり、お世話になっていました。

今は資格取得の方針がかわって、本来のパブリックリレーションズのスキルでガンガンやっていこうということで、急きょ所属が横にスライドした関係上時給はあいかわらず低いものの、現場カンをブラッシュアップするために貸し会議室会社のマーケティングに転属させてもらっています。

パブリックリレーションズのスキルはいろいろなところに転用できます。今回は営業部に在籍していた時に活用していた進捗管理法をちょこっと書いてみます。

貸し会議室の受注までのプロセス

問い合わせをもらい、希望にそえなければ別の部屋を提案。仮押さえをとり、必要な資料を作って送り、検討結果を待つ。本申込みがもらえたら会場設営の詰めを担当者と行い、実施日をむかえる。。。。会議室のブッキング業はシンプルにいうとそういった流れで動きます。

このスタイルは反響営業、という営業スタイルに分類されるようです。

ゴールが見えているので、そこに至るまでにどんなステップを踏むか、踏まなければいけないか、担当者は判断し、作業を消化していきます。
ミスなく無事にやりとげるのが一番重要となります。

シンプルなことの反復なので、どんなに経験がある人でもプロセスが抜けてエラーやトラブルになってしまうことは起こります。頻度は下がるけれどもゼロには決してならないのです。いわゆるヒューマンエラーと呼ばれるもので、これは生き物である私たちが仕事をしているうえでしょうがないもの、避けることができないもの、でもありました。

わたしはこのシンプルな作業プロセスが非常に苦手でした。ある種のクリエイティブ癖のため、同じことを何度も繰り返すのがだめなのです。すぐに眠気に襲われ、あくびがとまらなくなります。

どうしたものか。。。

この対処法を、パブリックリレーションズのスキルで解決してみたところ、ある程度の緊張感を維持しながらミスをほぼゼロにおさめることに成功し、かつどの同僚よりも1件あたりの処理スピードを上げることができるようになりました。

会議室を貸して実施まで迎えるには、最低150のプロセスをクリアしないといけない


会議室の受注を取って実施までこぎつけるためには、業務プロセスとしてはだいたい150~200手のプロセスがあることがわかりました。

たとえば、問合せの電話を受けたら、問い合わせフォームに情報を打ち込んでいきます。絶対に必要な情報はお客さんの名前、電話番号などですが、最初にどのくらい項目を確認しているかと数えてみると、25ほどあります。

そのあと、見積書を準備し、お客さんに送りますが、内側では同時にお客さんの情報をほかのメンバーと共有できるようにクラウドの設定をしたりします。

要望によって細かい対応手順などは前後することはありますが、問い合わせごとにこれらのプロセスを繰り返すのがブッキング業務の基本です。ホテルや航空券の予約なども、似たようなものだと思います。

ただ、このプロセスの繰り返しとは、「問合せ1件に対して150手」であり、担当になって受け持つ数が50になれば、手数も×150手であること。1手は同じでも要望はさまざまなのでこれらをひとからげにまとめて効率化することができないので、ひとりあたりの処理可能件数はおのずと決まってきます。。

ブッキングのミス、たとえばダブルブッキングや、「見積書が来ていない」という再度の問合せは、多数の問合せに応じる中で発生する「未処理」が積み重なって起こることです。そしてそういったことがお客様の気分を著しく害してしまうことにつながっていきます。

くそあほらしいことでトラブルになる不合理

問い合わせが増えて忙しくなると、ひとつひとつの処理ができないまま新しい対応をしなければならなかったり、プロセスを消化しているはずが突発のイレギュラー対応などで、ふだんやっていることの「抜け」が出てくることが多くなります。ひとつかふたつの「抜け」はカバーできますが、それを放置していると、お客さんに確認忘れが起きたりでクレームやトラブルの原因に発展してしまうのです。

私が入社したとき、この対応は個々人の処理能力に任されていました。
よく考えると、これは酷な話であり、実際に慣れないいうちに手いっぱいになり、短期間で辞めていった人は何人もいました。

・適切なタイミングで確認を取らなかった

・誰でもできるステップを踏まなかった

というようなことだけで、お客さんとの間にトラブルになったり、これから活躍してくれそうな人の芽が摘まれてしまい、やめていってしまうというような「おバカなこと」が頻繁に起こっているわけで。

なんだか自分たちもいやになるし、お客さんにもいやなおもいをさせてしまい、さらにわれらは落ち込むし。なんだかなあ、と、むなしく思うことは、一度や二度じゃないのです。

個々人の負担を減らしながら処理能力の向上を図る策はないものか。

私は、パブリックリレーションズのワーク管理で普通に使っていた、ガントチャート管理の方法を、この案件対応にもちこんでみました。

ガントチャートとは?プロセスの管理手法

工事現場やソフトウエア開発などで、進捗管理に使う帯グラフ状のチャートのことです。

これを案件ごとや担当者ごとに並べていくと、誰が今なにをしているのかが一目でわかります。デスクトップの大きなモニターに常時出しておくと、社内での進捗を逐一把握できるのです。

クラウドやSNSは、顧客情報をどのようにストックするか、という課題解決ツールですが、お仕事の進行を管理するという考え方はこの会社には浸透していなくて、何年もこなせているベテランと、まったくぎくしゃくしているけど、ひとつひとつはくそくだらないことにふりまわされて嫌な思いをたくさんしているパートタイムや新人社員、という二極化状況。わたしは最初のころに、このプロセスも何らかの管理手法を導入して共有したほうがいいな、と思ったので、ガントチャートを導入してみたのです。

乱戦ほど効果を発揮した

繁忙期になると、ひとりの担当件数は50をゆうにこえます。毎日問合せ、仮押さえ、本契約手続き、打ち合わせ担当への引継ぎ、請求処理、準備途中で起こったトラブル対応などなどが、同時に毎日何件もおこります。

最初はちょっとめんどくさかったのですが、1処理が終わったら必ず印をスプレッドシートにするようにして、それがすんだら別の案件をすすめる、ということにしました。

そうしたら、それぞれの進行で抜け、漏れが劇的にさがりました。

1つのプロセスがおわったら、スプレッドシートで印をつけることをくりかえすと、今やったことの復習にもなります。はじめはノロノロ運転ですが、慣れてくると自分が得意なステップと、いつも必ず見落としてしまうステップがあることに気づきます。ですので、得意なステップは4~5ステップをひとつのくくりとしてチェックし、不得意なステップは1つずつ処理するようにして、使い勝手を3か月くらいかけて向上させていきました。

その結果、月あたりのミス発生率をほぼゼロにおさえ、進捗管理で誰よりも速い処理を達成したのですよ。さらに繁忙期ほど効果を上げて、むだな手続きやおしかりをゼロにしました。同僚のミスに頭を下げに行ったほどの余裕も生まれました(笑)。

プロセスは共通。人それぞれで違うステップを使うとどうなるか

これをパートタイムの仲間に配布したところ、面白いことが起こりました。

たとえば、わたしは100あるステップのうち、最後の引継ぎのところでミスを発生することが多いので、ステップ90から100を綿密に処理しました。また、もうひとりは最初のお客さんからのコンタクト時に、聞かなければいけないことを聞き漏らすことが多いので、最初の25ステップに注力しました。それぞれで慣れている、大丈夫なところは、簡易チェックで済ませています。これをすることによって、それぞれの弱みを消し、強みを平均レベルで維持することができ、かつそれ以外のところは最低限のチェックでいいので、共有化がしやすかったのです。

普通は、勝手気ままにステップをいじりだしますが、最初に必要なステップをすべて細かく抽出して並べたので、勝手なアレンジは起こらず、人それぞれで必要な部分だけをピックアップするようになりました。

*ちなみに、配布したのはパートタイムのおじさまばかりです。いちばん融通が利かない、というか、いちばん自分のやり方を持っている人たちでした。

それぞれの不得意なところをチャートでチェックして、その他は共有するときに非常にラクだ、という声を聴くようになりました。

あとでフォローすべきステップが増えても、入れ子のように継ぎ足して、それを共有させれば全員が同じチャートを使っていることになります。

導入はやがて、AIが引き継ぐだろう

このステップでまずノーミスの処理を恒常化させることができると、千差万別のオーダーによりきめ細かい対応ができるようになりますね。ステップごとのチェックをすることを習慣化してしまえば、どうでもいい集中力を割く必要がなくなり、本当に注力しなければいけないところに集中できるはず。

異なる顧客からの要望に応え続けていくと、それぞれのケースでどんなことをしたか、という経験値とその実現のための知識が増えていきます。これらをうまくDB化すると、わたしたちはガントチャートの共通ステップを卒業する時期が来た、ということが言えます。この部分をロボット(AI)が担うことは、千差万別のオーダーに対応するよりもはるかに簡単だと思います。

ガントチャートのマスターが仕事のゴールではない

このガントチャート管理は、人間がやらなくてもいい作業を担ってもらうことを目的につくっています。たった1つの「連絡もれ」などというつまらない作業ミスで、お客さんがうきーってなることほどくだらないことはないのです。そのくだらないことを起こさないように、これまたくだらないくらい気遣いと集中力でステップをこなす毎日って、おかしいでしょ。

こんな作業はAIにバトンタッチして、人と人のつながりにかかわるところをしっかりとやったほうがいい。AIが導入できないなら、ガントチャートでステップをこなすプロセスをなるべく考えずにパスしていくようにしないと、この仕事やってられませんし、自分の価値を高めることができない。

はじめはガントチャートの導入は、自分がラクしたいから、というよこしまな動機からでしたが、AI時代到来、と騒がれるようになってみて、この最先端トレンドとガントチャートによる進行管理、結構親和性あるよね、と思いました。



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