からメシ 第18話 誕生日


6月か7月の某日

今日は高木さんとの会話が少ない…
そっけないというか…

「じゃあ、西片、私今日どうしても外せない用事があるから先帰るね」

おかしい…
なんでだ?怒らせるようなことしたのか?今日俺誕生日なのに…

ため息をつきながら玄関を開けようとした時

パーン
大きな音が鳴り響く
びっくりして転びそうになった所を高木さんに支えられる
色とりどりに光るテープが宙を舞う

「お誕生日おめでとう。今日から16歳だね。西片。」

ようやく理解できた。クラッカー🎉ってやつだ

もしかして、今日そっけなかったり外せない用事があるって…

「西片の誕生日を祝うのが絶対外せない用事だよ。
そっけないふりするの大変だったよ」

聞くと、誕生日ケーキを作ってきてくれてそれを自宅に取りに行き、さらに玄関横の茂みに隠れ俺が来るのを待たないといけないので
大急ぎで帰ったとのこと。
高木さんめ
でもうれしい

「ありがとう」

「どういたしまして」

「さてケーキ冷やしとかないと
後で一緒に食べよ❤」
「じゃあ私料理作っちゃうね」

高木さん。制服にエプロンをつける
一旦ケーキ取りに帰ったとはいえ着替える間すら惜しんでサプライズしてくれたんだな

としみじみ見ていると

「」西片は制服にエプロンがそそるのかな?」

「そ、そうじゃないから!」

「いいんだよ?制服エプロンなんて高校までしか見れないんだから。なんなら西片の好きな事しちゃっても」

「そ、そんなつもりないから!大体料理中に危ないだろ!」

「わかった!料理中じゃなかったらいいんだね」

「そうじゃなくて!」

高木さんめ
誕生日でもからかいは健在か

「まあ、西片が着て欲しいっていうなら高校卒業してもいつでも着てあげるから。一生見れるね。制服エプロン」

なんで制服エプロン好きの烙印を押されているのか…

「西片、焼き方ってどんな感じがいい?」

「焼き方?」

「今日は1年で1番おめでたい日だからね
ステーキだよ。お肉も持ってきたんだ
しかもただの肉じゃございません
小豆島オリーブ牛だよ
餌にオリーブの絞りカスを与えて育てたんだって」

俺のためにそこまで…ありがたいしうれしい…しかし焼き方か…どうしよう…うちで極たまに食べる時はウェルダンばかりだからなあ…ここは…

「じゃあレアで」

「西片は生でするのが好き、と」

「そんなこと一言も言ってないだろ!!!」

「あはははは、焼く前のお肉くらい顔赤いよ」

「そうだ、私はよく焼いてみるから
ちょっとだけ替えっこして食べ比べてみようよ!」

手際よく肉を焼く高木さん
同時にサラダも作る
お肉が焼けたところで

あともう一品
と、お肉から出た油でニンニクを炒め

そこに炊いたご飯を投入
ガーリックライスだ

「お待たせ」
高木さんが料理を持ってきた

サラダにステーキ、ガーリックライス
焼き方は俺のがレアで高木さんがウェルダン

「いただきまーす」

「あ、西片、ちょっとまって。今日は西片誕生日なんだから、私が食べさせてあげるよ」

「いや、いいよ」

「いいからいいから」
「あーん」

は、恥ずかしい

もぐもぐ
「美味しい!レアステーキ初めて食べたけどさっぱりしてるんだね。お肉がいいのか脂もしつこくなくて」

「私のも食べてみてよ
はい、あーん」

「よく焼いたのも美味しい。旨みが凄くて。ありがとう。高木さん。美味しいよ!」

「どういたしまして」

「私も食べさせて欲しいな。あーん。」

「え、俺もそれするの!?」

「うん」

恥ずかしいけど、高木さんがここまでしてくれたんだから、俺もそれに答えないと

高木さんの口にお肉をいれる
「美味しい!西片が食べさせてくれるとやっぱ一段と美味しいなあ。」

「そこは美味しさと関係ないだろ!」

「あははは」

「でも、関係あるよ。こうやって西片と2人で食べるから美味しいんだよ」

「ガーリックライスも美味しい。肉の脂を吸ってて」

「あ、にんにく食べちゃったけど気にしないでキスしていいからね。」

「なっ…別にそんなつもり…」

ちゅっ…

「た、高木さん?」

「私からしちゃった///
…好きっ…大好きっ…❤」

「西片っ…❤」

「…///そ、そうだ、ケーキあるんだよね?
高木さん。食べようよ」

「そうだね
頑張って作っ…」

途端に表情が曇る高木さん。

「ごめん。西片…
自転車で運んでたから、動いちゃったのか、潰れちゃってる…
西片の誕生日だったのに…ケーキ潰れちゃって…ごめんなさい…」

「ちゃんとしたの買ってくるから…」

「…高木さん!俺はその高木さんの作ってくれたケーキが食べたい!潰れちゃっても味は変わんないだろ!美味しいに決まってる
だから高木さんの作ったケーキ、食べさせて欲しい。」

「…ありがと…西片
そっか、そんなに手作りケーキ私にあーんして欲しかったのか」

元気が出るととたんにからかってくる高木さん

でも、高木さんが元気になるなら恥ずかしいけど食べさせてもらうのもいいかも

「はい、西片、あーん」

高木さんの作ったケーキは最高に美味しかった

「ふー、お腹いっぱい
食べたねー」

「ありがとう。高木さん。最高のプレゼントだったよ」

「プレゼントはまだあるよ?西片
まずこれ、ランニングシューズ
西片走るの好きみたいだから」

「ありがとう!でもよくサイズとか分かったね!サイズピッタリ!」

「最近ずっと西片の足観察してたからね~」

それで分かっちゃうとか高木さんエスパーなの?

「あははは、西片にだけはエスパーかもね」
「あと、まだあるよ…///」

「高木さん…?」

「プレゼントはわ・た・し…///」
耳もとで囁く高木さん

なっ…ちょっと…誕生日だからって軽々しくそういう事…

「軽々しくじゃないよ?だって私は…一生西片と一緒に幸せになるって決めてるから…」

「高木さん…」

「西片っ…❤」
ぎゅっと高木さんを抱きしめる

心臓の音がやばい
自分のも高木さんのも…
ど、どうするんだ…高木さんの気持ちを受け止めるべきなのか…でも…

「西片っ❤」

決心をする時なのか…

その時
ガチャッ

多分親が帰ってきて玄関が開く音だろう

「…ドキドキしたね…❤」

ドキドキなんてもんじゃない…あのままいってたら

どうなっちゃってたのだろうか…

「すみません、勝手ながらお邪魔してます
いまからお二人のステーキも焼きますね」

高木さんがまた手際よく料理をつくる
俺と俺の両親と高木さんで団欒
もう完全にうちの家族の一員かというくらい溶け込んでるというか

帰り、高木さんを家に送ることになった

梅雨の時期?だが綺麗な星が広がる

「西片、今日ずっと言いたかった事があるんだ」

「なに?」

「西片、生まれてきてくれてありがとうね」

「そ、そんな大袈裟だよ…」

「大袈裟じゃないよ?誕生日っていうのは生まれた事、生まれてきてくれたことに感謝する日なんだよ
西片がいるおかげで私は幸せだよ」

「私が西片の誕生日を毎年祝って
西片が私の誕生日を毎年祝ってくれて
で、そのうち…2人で誕生日を祝う子が出来たら…嬉しいな」

「それって…」
「…そうだね
そんな幸せな未来になるようにしていきたい…いや、していこう。高木さん。」

「うん!」

手を繋ぎながら高木さんを家まで送った

(10年ほど後)

「おとーさん。そのくつボロボロ
いつもはいてるよね。
どーして?」

「ははは、ちー、ボロボロかどうかなんてことは重要じゃないんだよ。
これはお母さんからもらった大事なプレゼントだからね。だから穴があいても直してはくんだよ」

「そーなんだ!おかーさんもこのあいだ
かみでつくったはこをだいじそうにながめておんなじこといってたよ。おとーさんがつくってくれたびっくりばこなんだって。」
「おとーさんとおかーさん、おんなじだね。」

「そうだね。おんなじだ。」

「お父さん、ちー!ケーキ焼けたよ!」

「わーケーキだ!おかーさんが焼いたの?」

「そうだよ。」

「今日はちーの誕生日だからね
美味しいケーキ作ったよ」

「プレゼントもあるぞ。」

「うれしい!ありがとう。」

「ありがとうって言いたいのはお父さんとお母さんだよ。ちー」

「なんで?」

「生まれてきてくれたからね。」

「お誕生日おめでとう。ちー」

「生まれてきてくれてありがとう。」

18話完

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