からメシ 第113話 若潮部隊

土曜日。
高木さんと取材にいく。
といってもテレビ取材みたいなそんな仰々しいものではなく、デジカメとメモ帳と飲み物くらいしか持ってってない。

場所は...
なんと俺と高木さんが卒業した中学の裏山である。いつも花火を見てる思い出深い裏山だ。

ここに、戦争の傷跡があると言うのか。

「西片と花火見るのにいい場所無いかな~と思って探してた時にたまたま見つけたんだけどさ」

高木さんに案内され、脇道、とも言えないくらいの小さな石段を登っていく

すると、碑みたいなものが出てくる。
隣に緑青の吹いた銅像が。

その横に石版のようなものがあり、説明が書かれていた。
それによると小豆島は、若潮部隊という舞台の訓練地で、15~19歳の8000人が訓練したらしい。
そしてその部隊の目的は...特攻
二度と帰って来れない戦いを強いられるのだ。

まず俺と高木さんは
深々とお辞儀をして、手を合わせる

「...これって西片と同じ歳くらいの...」

震え、涙声の高木さんの手を握る。

「ひどすぎるよ...こんなの...」

もし、俺と高木さんがこの時代に生きていて、俺が...戦争に連れてかれたら。というのを高木さんは想像してしまうんだろう。

だから、より強く高木さんの手を握る。

「大丈夫だよ。高木さん。もし仮に戦争なんて起こって徴兵制なんてできても、俺は絶対行かないから。
人の命を奪ったりするのなんて嫌だし。なにより高木さんを置いて消えたり、遠くになんて絶対いかない。高木さんを絶対悲しませない。」

「うん…わかってる。私だってそんなことになっても西片を絶対行かせない。だけど…」
「でも本当はこの人たちだって、殺したくなんかなかっただろうし、死にたくなんかなかっただろうし。大切な人と離れたくなかったんだよね。」

「うん。……だからこんなこと二度と起こしちゃいけないんだ。」

「うん。死なせること。殺させること。大切な人と引き離すこと。こんな残酷なこと。絶対起こしちゃいけないよね。」

「うん。」

資料として、写真を撮ったあと、
俺の家で資料をまとめ、記事を書いていくのだが

お腹がなる。
「…とりあえず腹ごしらえしよっか。西片。キッチン借りるね。」

手際よく高木さんが料理を作っていく

「今日はそうめんチャンプルーを作ってみました。何気にこれ、そうめんだけじゃなくてごま油も小豆島の名産だからある意味この島の名産料理って言えるかも」

「いただきます。……美味しい。初めて食べたけどそうめんって炒めてもおいしいんだね。ごま油の風味と合う。」

「でしょー?たんとお食べ。豚肉も合うでしょ?」

「うん。最高」

その後。記事のレイアウトとか構成を考える。

「まずは調べてわかったことを書いてこっか」

「うん、写真も交えてね。」

「で、この島で起こった出来事、ももちろん重要だけどさ…それを受けて、何を伝えたいか、をしっかり書かないとね。」

「そうだね。…そうだ。それはそれぞれ俺と高木さんで書こっか」

「うん、そうしよう。」

まずレイアウトを考えていく
印刷した写真はどこに貼ろうかとか
次に文章を吟味しながら下書きしていく。

時折、高木さんと手が触れたりする。
いい匂いがしたり。って何考えてんだ俺は
真面目にやらないといけないテーマだぞ

「ここはこうしてみた方がいいかな?」

「うーん。それだと伝わりにくいか…」

などなど

最後にマジックで清書。慎重に…慎重に…
ああっ間違えた!

「慎重にやると間違えちゃう所、西片らしいや」
「そんな西片のかわいい所大好きだけどね。」

「…///」

そんなこんなで夜になり、模造紙に書いた俺と高木さんの展示資料は完成した。

「……結構すごいのできたね」

「……私と西片の愛の結晶ってやつ…?」

「言い方!///それに真面目にやんなきゃいけないテーマだからからかうのなし!///」

「ごめん。ごめん。そうだよね。...だからあんま今日はからかってないよ。」

さて、来週末はついに文化祭。
クラスでは特進に記事勝負で勝つぞー!と盛り上がってるが、俺と高木さんはあまり興味は無い。

ただ、この島でも戦争の傷跡があること、悲しい出来事が起きたことを知って欲しい。
そして、悲劇を繰り返さないためにどうするか、考えてほしい。と思って記事を書いた。

第113話 完

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