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からメシ 第51話 ペンキ遊び

ほんの少し話は戻り
高校1年生2学期中間テストが終わった日
明日は土曜日である。

「中間テスト終わったー」

「お疲れ様、西片。よく頑張ったね。」

「高木さんのお陰だよ。ありがとう」

「私が教えたにしても、頑張ったのは西片だよ」

「…でさ、西片勉強漬けでストレス溜まってるでしょ?思いっきりストレス発散できるとこあるんだけど。明日行かない?」

「いいけど…別にストレス溜まってるわけじゃ…」
確かに勉強漬けではあったし、1人で夜やってる時はちょっとストレスだったりもしたけど
高木さんに教えて貰ってる時は、…正直楽しかった
まあ、高木さんの教え方はドキドキしすぎて心臓いくつあっても足りない感じだが。決してストレスではない。

スカートを太ももまでめくる動作をしながら高木さんが言う
「本当は私でストレス発散してくれたらいいんだけどなー」

「た、高木さんを、そ、そんなふうに扱いたくないから///」

「……ふふっ…西片顔真っ赤…///」

「あしたは着替えでもう着なくなった感じの、汚れても構わない服を持ってきてねー。場合によっては汚れ取れない可能性もあるから捨ててもいいようなやつ。着替えいれるビニール袋とかもあるといいかも。あと始発フェリーだから」

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「汚れてもいい服…っていっても」
高木さんめ、何をする気だ?
…着なくなった服って言われても…

まてよ。中学の時の体操着ってもう着ないよな…
これもってくか

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当日
朝早くに始発のフェリーにのり
高松から電車に揺られ
ついたのは

「体育館?」

「そ、廃校になった学校を活用したプレイスペースなの」

「ここでペンキ遊びができるんだよ?」

「ペンキ遊び?」

「そ。ペンキででっかい絵とかかいたり、お互いにペンキかけあったりして遊ぶの。
更衣室、シャワー室と、洗濯機や乾燥機とかあるから服とか身体とか汚れても気にしないで遊ぶの。楽しそうでしょ?」

「なるほど、だから着替え持ってきてって言ってたのか」

「うん。一応ペンキや塗料は全部水性で人体に害がないやつみたいなんだけど、意外と水性でも洗っても落ちないもんなんだよね」

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というわけで入場料を払い更衣室で着替える
もちろん男女別なので、高木さんにえっちなからかいをされる心配はなかった。高木さん、最近着替えるとなるとすぐ誘惑してくるからな…
まあ無きゃ無いで物足りな…って何考えてるんだ俺!

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着替え、そのペンキ遊び?をするとこにいく。
白い紙みたいなのが一面に貼られており、すでに子供たちや子連れの親子ががペンキで遊んでる

あれ、結構これ子供の遊び場って感じじゃないか?高校生の男女2人が遊んでたら結構恥ずかしいやつじゃないか?

「おまたせー!西片。」
高木さんはツナギみたいな?ズボンに黒いTシャツを着ていた

「あ…西片それ着てきたんだ…」
高木さんがちょっとだけ寂しそうにする

何でだ?体操着はかっこ悪いのか?いや、文化祭1日目にずっと体操着着てた高木さんだ。それは無いはず。それに俺のファッションとかで評価が変わったりはしないと思う…

「高木さんはそれ汚れちゃっても良いやつなんだ?…け、結構オシャレな感じするけど…」

「これ実は片方、肩紐の金具壊れてて結構取れちゃうんだよ。片方だけだから着れはするんだけどね。シャツもすそのところ破けてて…」

「そうなんだ。ちょっと勿体ない気もするけど…」
自分で言って、はっと気づいた
あれ?もしかしてだけど…
そういえば高木さん…捨ててもいいようなやつ…みたいなこと…

よくよく考えたらこの体操着は中1の時に制服が雨で濡れた高木さんに貸したりとか、マラソン大会ではこれ来て高木さんと一緒に走ったりとか
よくよく考えたら結構な思い出が詰まってる…

そっか、なるほど。捨てて欲しくないんだな!
高木さんはそういうこと絶対口には出さないけど。

「この体操服は、これからペンキ遊びとかあと将来…えーと、農作業とか陶芸とかやるかもしれないし…そういう汚れそうな作業に使おうかなって」

「西片…」

「……っははははは」

「え?なに?高木さん?」

「よく見たら西片おへそ出てるw」

「あっ…///」

「背、だいぶ伸びたんだね西片…」
「キスする時も最近、背伸びしないと出来ないや」

「今ここではやめてよ?子供たちいっぱいいるんだから」

「分かってるよ、ありがとね。西片。そしたら私も西片とのデートに着た服になるわけだし、この服汚れても捨てらんないなー。」

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さて、ペンキ遊びだ。
一応目に入らないように透明なゴーグル、口に入らないように不織布のマスクが用意されている。

とりあえずゴーグルは2人ともつけたが
高木さんはマスクはつけず。
なんかの作戦か?

「まずペンキをかけあって遊ぼう。たくさん相手に色をつけた方の勝ちだよ!」

「…ち。ちょっと抵抗あるね…その遊び」

謎の遊びが始まってしまう。

「てやっ」

高木さんが先制攻撃をする
体操着に赤いペンキが

「それっ」
俺の髪の毛にもペンキがつく

高木さんめ!ぜんぜん容赦しないな!
ならばこっちも、高木さんの顔にペンキを…
……

た、高木さんの、綺麗な顔に…
ペンキを……?俺がこのかわいい高木さんの顔を…ペンキで汚すのか…?
も、ものすごい抵抗がある……
それに…口や鼻に入ってもあれだし…(無害らしいが)

まさか、マスクをしなかったのは、俺の抵抗感を増させるため…

「ピンポーン。正解」
「西片は、ペンキで私の顔を汚したくないって思ってくれてるんでしょ?」

「……ま、まあ……そんなとこ…」

「ありがと。やさしいね。でも…」
「それじゃあ勝てないよ!西片。私はペンキまみれの西片も味があっていいなって思うから容赦なくいくね!」

とさらに高木さんが追撃しようとすると
「あっ…」

「危ない!」
高木さんが足元のペンキで足を滑らせ滑りそうになる

咄嗟に体が動いて高木さんが倒れる寸前にスライディングして身体を支える。

ズサッ

「西片っ…」

「高木さん、怪我ない?」

「私は大丈夫...西片こそ、怪我とかしてない?痛いところとかない?ごめんね。私のせいで。ごめんね...」

「全然平気。今ので身体中ペンキまみれになっちゃったから、完全に俺の負けだね」

「ううん?西片の勝ちだよ。だって、本当は私がペンキまみれになって負けてるはずな所だからね。」

「ありがと。西片。でも本当に怪我とかない?」

「大丈夫。」

「よかった。...西片、かっこよかったよ。2年前の劇で助けてくれた時みたいで」

「西片にいつも、助けて貰ってばっかりだよ...西片が転びそうになった時は...絶対私が助けないと...」

「た。高木さん!お、俺は高木さんにはいつも助けて貰ってるから!お弁当作ってくれたりとか...この前の中間テストだって、高木さんに教えて貰ってなかったら...」

「...ありがと。西片。」

どっかの子供「ままー!あのひとたちおとななのにぼくよりはしゃいじゃってるよー」

どっかの母親「指さしちゃダメ!!...すみませんうちの子が」

「いえいえ」
......とはいえ内心恥ずかしいなこれ///

「ちょっと休憩しよっか...?」

「休憩ね...❤何時間コースにする?フリータイムとかがいい?」

「......?何言ってるの?高木さん」

「え?休憩ってこういう事じゃないの?」
高木さんがGoogleマップを見せてくる
そこにあったのはここからすぐそばの
ホテルpakopako...って///
これ///

「そういう意味の休憩じゃないから!///」

「あはははは、分かってるよ。」

ちょっとだけ休憩して(そういう意味の休憩じゃないよ?)また遊ぶことに
もうペンキをかけあう遊びはやめたので、今度はハケやローラーで文字を書いていき、書き切る前に何を書こうとしてるのか当てるゲーム

高木さんがでっかくローラーで文字を書いていく

西...片...大...ス...
こ...これは...
「高木さん!分かったから!正解分かったから!」
好きって伝えてくれるのは嬉しいけど...
こんな人が大勢いるとこででっかく書かれると...恥ずかしい...

「正解分かったんだ?言ってみて?」

「...西片大好き...」

「声が小さくて聞こえないなー」

「もう!///恥ずかしいんだからさ!」

「ローラーで大きく書くと恥ずかしいからハケにしない!?」
高木さんめ!
そのまま、同じことやりかえしてやる!

高...木...さん...大......

「あれ?西片、筆が止まってるよ?どうしたのw」

「ぎ、ギブアップ!!」
これ、書くのって相当恥ずかしいぞ!

「じゃあ、次私ね。」

そう言うと高木さんは俺が書いた
高木さん大
の続きを描き始めた

高木さん大好き

「はい、西片。これ読んでごらん?」

「そういう趣旨のゲームじゃなくなかった!?」

「いいからいいから。読んで欲しいな~」

「......高木さん大好き...///」

「よく読めたね。偉い偉い。ご褒美をあげようね」

高木さんが近づいてくる
まさか...キスする気じゃ...キスする気だ...///

「た、高木さん///さすがにこんな人がいるとこでキスはだめだって///」

どっかの子供「ままーあのふたりらぶらぶだねー。よるはあのふたりもぷろれすごっことかするのかなー?」

どっかの母親「もう黙ってなさい!!///」

「ほら!教育上よくないでしょ!?」

「愛し合ってれば自然なことだよー。あ、あと夜プロレスごっこしよっか?」

「プロレスごっこ?ってよくわからないんだけど。どういうこと?あんま物騒なのは...」

「ああ、それね。物騒な事じゃないよ。多分それはね...」ゴニョゴニョ

「...///。高木さんはまたそういう事を...///」

「あはははは、西片赤いペンキ塗ってるみたいに顔真っ赤だよw」

と、一通りペンキ遊びを楽しんだ

さて、シャワーを浴びて着替えて、高木さんと合流。
お金勿体ないから一緒に洗濯しようと言うことで汚れた服を洗濯機にいれ回す。
洗濯・乾燥いっぺんにやってくれるタイプらしいので時間がかかる。

その間併設された店で遅めの昼食をとる事にした。なんでもペンキ遊びにちなんでカラフルな料理を出しているらしい(もちろん食材から出た色でペンキなんて使っていない)

俺は紫色のチャーハン、高木さんは緑色のカレーを頼んだ

「替えっこしようよ替えっこ♪」

高木さんがウキウキしている

「あーんはしないからね?結構人いるんだから!」

「えー、やだ」

「人前は恥ずかしいから!い、家でならしてもいいからさ...///」

「わかった。ふーふーだけしてあげるね」

「何も分かってない!この人」

まず、高木さんのカレーが来た。
緑色のカレー...緑というか黄緑くらいかな~どうなんだろ味は

もぐもぐ
「あ!美味しい。苦いのかな~と思ったらほとんど苦味ないよ。西片もどうぞ。」

......高木さん。そう言ってめちゃくちゃ苦いんだろ?そうやっていつもからかって
もぐもぐ
「あ!ほんとだ!あんまり苦くない」

「サグカレーって緑色のカレーはほうれん草を使うことが多いんだけど...これはからし菜だね。からし菜をよく下茹でしてアクを取って苦味を取ってるんだよ。多分。今度西片にも作ってあげるよ。」

高木さんすげえ!ちょっと食っただけでそんな事まで分かるの!?

続いて俺の紫色のチャーハンが来た。
なんとレモン汁をかけると赤くなるらしい。
......大丈夫なのかこの料理...

意を決して食べてみる。
「美味しい。あんまチャーハンっぽくないけど...」

「私も食べていい?」

「どうぞ。」

「あ、なるほど。これはナンプラー使ってるんだね。エスニック料理みたいな感じだよ。この紫色は紫キャベツの色だろうね。西片、レモンかけてみて?」

レモンをかけるとお米が紫色から赤、というかピンクっぽくなる

「ほんとだ!色変わった!」

「なんでだかわかる?西片」

レモン汁で色が変わるなんて不思議だ...でもなんでだ...あれ?これってどっかで...もしかして

「これ中間テストでちょっと出てきた...酸性とか中性とかアルカリとかいうやつ...?」

「そうだよ。紫キャベツの色素は指示薬と似たような働きをして、酸性だと赤くなるんだよ。」

「なるほど!そっか!よく考えてるね」

「ん?レモン汁かけた方が美味いぞ!」

「私もレモン汁かけたとこいいかな?」

「高木さんも食べて」

「西片もカレーもっとおあがり」

「発想の面白さもそうなんだけど、ナンプラーとか使ったエスニック料理ってレモン汁が合うんだよね。爽やかになるというか。よく考えられてるよ」

「うまい。」

「美味しいね。」

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こうして2人で食事をして
洗濯物を取り出す。
まだ少し色は残ってたが汚れてもいい服、としては使えそう。

2人でまた電車にのり、高松からフェリーにのり小豆島に帰る。

「またデートいこうね。」

「うん。」

「今度は水族館行ってみない?」

「いいかもねそれ。他にもいろいろ行きたいね。」

「あと11月は紅葉見に行こうね。西片の顔と紅葉。どっちが赤いか見比べないと」

「そんな赤くならないから!」

「西片の顔を紅葉くらい赤くするのが、私の仕事でしょ?腕の見せどころだよ~」

高木さんめー!
高木さんは昔からずっと、付き合ってもかわらずにからかい続けてくる。
でも俺は昔とは違って、そのからかいが、心地いい

第51話完

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