からメシ 第115話 激突!ラーメン大食い対決

※前回一度途中で飛ばした、高木さんと文化祭を廻った話になります。

さて、特進クラスの展示発表を見たあと、俺と高木さんは調理室に向かう

「そろそろお腹すいたねー。西片。」

「うん。ぺこぺこ」

「朝から文化祭の支度してたから朝ごはん食べれてないもんねー。」

というわけで向かったのである。

調理室は2-4、木村がいるクラスの出し物だ

なんでもラーメンを出すらしく、去年ラーメンを出したうちとしては気になりどころではある。が。

木村いわくうちは質より量とのこと。
なんと全部袋麺らしい。

「西片~なんか大食い大会やるらしいよ。西片出てみる?」

「え、いいよ俺は。そんな大食漢じゃないしさ」

「あはははは。そうだね。私も、少食って程じゃないけどあんまたくさんは食べれないし……それに西片とゆっくり楽しく食べる方が好……」

ふと大食い大会の右の隅に書かれた文字に高木さんが目をやる

優勝者には年内いつでも使える高級旅館「小豆島ホテル」のペアチケットプレゼント!
とあった。

「……西片、もしこれで私が太っちゃっても、私のこと好きでい続けてくれる」

「もちろん太ったって高木さんは高木さんだし好……って高木さん出んの!?」

「いってくる。」

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この歳でようやく結婚した弟に子供が生まれたとの事で、東京から遥々高松まで来た。姪っ子の顔を拝んで帰るつもりだったが…
ふと見かけた、小豆島の高校の文化祭のチラシを目にした。ラーメン大食い大会開催。の一文字
ここまで来てなお、ラーメン大食い大会の文字を見つけるとは、つくづく私とラーメンの縁、大食いの縁があるのだろうと感じ、気がつくと池田港に向かった。

文化祭とはいえ、神保町のマシマシママと言われた私が、大食い大会を目にして引く訳には行かぬ。

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大食い大会は豪華賞品の割に参加者は少なめだった。それもそのはず。
なんとこの大会、1位は豪華賞品を貰えて、大会におけるラーメン代は無料になるのだが、問題は2位以下。
2位以下は敗者として扱われ、なんと普通の注文の金額と同じだけ食べたラーメン代を支払わなければならないのだ。
しかもなんの工夫もない袋麺で1杯300円もする。(通販で大量に安く買ったらしく、1杯200円ほどの儲けが出るらしいが実はこれは、豪華景品を出しても赤字にならないようにする為だとか。
そもそもホテル宿泊券はそのホテルのオーナーの孫が木村のクラスで、1位に豪華賞品出したいからと直談判して、宿泊券を売上から購入する形なら...と渋々折れてくれたらしいから仕方ない。)
ちなみに3位まで景品があるが、2位はどんぶり。3位は袋麺1つ。と正直……って感じの景品である。

つまり負けた時のリスクがでかいのだ。
5杯食べて負けたら1500円
30杯食べて負けたら9000円の支払いである。

故に、我こそは優勝するという、強者だけが名乗りをあげる大会となる

参加者は10名。
ルールは味は豚骨(ちなみにこれは少ない量でも腹にたまるからという理由らしい。)の素ラーメン。と言っても袋麺で粉末スープを別の大鍋で煮て、茹でた麺と合わせる感じ。
まず予選でラーメン3杯を食べる速さを競う。麺は替え玉で3杯になるようにするが、替え玉2つ目、つまり3杯目のラーメンは汁まで完飲したところで完食となる。

そのあとの決勝は1時間のロングタイムでの勝負。1時間に何杯ラーメン食べられるかを競う。ちなみに汚い話になるが吐いたら失格である。また、スープが無くなると係のものにつがれる

ちなみに、高木さん以外になんと木村も出ていた。主催者が出るのかよ。

まず予選が開幕。

高木さんは熱々ラーメンに苦戦してる模様。熱そうなリアクションを連発する。

59秒 早くも完食する人が出る。
...よく知らないおばさんだった。

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...熱くて中々食べられない。せっかく西片とまた旅行にいける券が手に入るかもしれないのに...
ふと横に目をやると氷水が。
なるほど...その手があるわね。...なりふり構ってられない。冷やすのはこれが一番

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高木さんが横に置いてある氷水をラーメンに入れる。
な、何やってんだ高木さん!そんなことしたら薄く...。

しかしながら高木さんの食べるスピードは一気に上がる。
なるほど、冷ましたのか。

続いて3分10秒 木村が完食。

苦しそうになりながら高木さんが完食。3分31秒

4位の人は3分33秒だった。

高木さんが俺のために頑張ってるのはわかってる
ただ、正直無理はしないでほしかったり...

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司会の女子「さて!ついに大食い大会決勝戦です。決勝戦に進んだ3人にインタビューしてみましょう。まずあなたから。うちの高校の生徒のようですね。お名前は?」

高木さん「高木です。」

司会の女子「あ、あの高木さんですか。高木選手は普段からよく食べるんですか?」

高木さん「いえ、普通だと思います。」うぷっ...

司会の女子「まだまだ行けそうですか?」

高木さん「正直お腹はもう一杯です。ですが...負けません。」

司会の女子「すごい気迫です。この小柄で華奢な身体にどれだけラーメンが詰め込めるのか!とても仲が良いと聞く彼氏さんも応援してると思います。期待したいところです。」

高木さん「...///」

司会の女子「次はうちのクラスでもよく食べると話題の木村選手。ついた二つ名はいつもなんか食ってる木村!意気込みはどうでしょうか」

木村「んー。腹5分めくらいくらいかな~まだ普通にいけると思う。」

司会の女子「さすがうちのクラスの誇る木村選手!まだ5分目と」

??????「一分目だ。」

司会の女子「えっ......とこの方は...圧倒的速さで予選通過した...えーと...お名前は」

マシマシママ「神保町のマシマシママと呼んでくれ。一つ心配なのだが。3杯じゃ前菜にもならない量だが、ここの在庫は足りるかな?」

司会の女子「...えっと...ぷ、プロの方でしょうか...ざ、在庫は営業分のもあるので多分大丈夫だと思いますけども...」

マシマシママ「そうかい。ならよかった」
この大会、おそらく苦もせずに私が勝つだろう。あの少女は既に満腹に近い。あの坊主も食べれてあと3杯だろう。取るに足らないはず。

……なのになんだこの違和感。あの少女の方から感じる...底が見えないような感じは...
おそらく、いや確実にあの少女は満腹に近い。表情からわかる。が……なんだあの眼差しは。これだけの実力差がありながら勝つのを諦めていない。
おそらく真っ先にリタイアするのはあの坊主の方だろう。

最初の1杯が配膳される
司会の女子「それじゃあ位置について、よーい、どん!」

一斉に食い始める。
やはりマシマシママの勢いが早い
しかしながら高木さんが結構なペースでラーメンをすする。

一番最初に箸が止まったのは木村だった。
6杯目(予選含む。これからは予選含む表記。)で箸が止まる。

高木さんは7杯目、マシマシママは10杯目に突入する。
高木さんの表情がとても苦しそうだ

クラスの女子A「高木さんってあんな食べる子だったっけ?」

クラスの女子B「高木さんが、西片君と一緒にお弁当食べてるの見た事あるけど、普通の量だったよ?」

西片「高木さん!無理しないで。...旅行なんて、バイトでお金貯めたら行けるんだし。...そんな限界超えてまで食べること」

高木さん「ありがと。でもね西片。たしかに...ペア旅行券のためってのもあるけど、それだけじゃないの。」
「……気持ちだけは負けたくない。うっ」

すると高木さんが立ち上がり、勢いよく座る
という行動を繰り返し、そっから一気にスピードが早くなった。

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あれは熊落とし...?大食いに縁のない少女がなぜ...本能的にしたとでもいうの?
なにがあそこまであの子をかりたたせるの?
動揺、焦りを感じた。神保町のマシマシママと呼ばれ大食いに生きた自信が…揺らぐ

少女がなにかブツブツ呟いている。

高木さん「絶対に西片と旅行にいく絶対に西片と旅行にいく。絶対に西片と」

そうか、この女。さっき心配してた男の子のこと、本気で愛してるんだ。
愛だけで食ってやがる。とっくのとうに限界が来てるのに、愛だけで食い進めている...

この子のような深い愛情があれば。ラーメン感の違いなんかで、あいつと別れることも無かっただろう。
……多分、あのごく普通の胃袋で、これだけの、10杯を超えるラーメンを食い続けるなど。そんなことが出来るくらい深い愛情は世界中でこの子しか持ちえないだろう。
愛情で、愛情だけでこれだけのことを成し遂げられるのか……あれ、10杯を超え...る?

司会の女子「なんということでしょう!高木選手12杯目!マシマシママ選手11杯目です。抜きました!」

マシマシママのどんぶりにまた、スープがつがれる。

マシマシママ「しまった!」

気を取られ箸が止まり、スピードが低下すると麺がスープを吸いボリュームが増す。
そしてスープが頻繁につがれ、次の麺もスープを吸う。を繰り返したせいで
マシマシママの量は高木さんの量より増していた。高木さんは替え玉がつがれるたびに、まず麺をありったけ口に含み、
次の麺を持ちあげスープを吸わないようにする、を繰り返していた。

作戦が素人のそれじゃない。
愛だけでここまで食える。もはやあの子は
【喰える側の人間】

なら私も容赦しない。全力で勝つ!
こっちにも、大食いとしてのプライドがあるんでね。

そこからは熾烈極まる麺のすすりあいだった

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司会の女子「高木選手22杯目に突入!おーっとマシマシママ選手も22杯目だ」

ここで追いつかれたら負ける。なんとか逃げきんなきゃ

司会の女子「タイムアーップ!2人とも22杯目なので、規定により測定に入ります」

それぞれの重量を測定し、予め計られていた器の重量を引き、より少ない方の勝ちとなる

司会の女子「えー、高木選手。28g、マシマシママ選手30gとなります。勝者はなんと高木選手です!驚きの結果です!この華奢な体のどこにラーメンが消えていったのでしょうか」

か、勝ったよ!西片。食べすぎで一言も喋れないけど。


負けた。胃袋の容積も、大食い屋としての鍛錬もポテンシャルは私の方が遥かに上だった。でも。それをひっくり返すほどの愛の力。
この子は最後命がけで食ってた。口で勝てると言うだけではなく、実際にやってのける。どれほど愛が強ければこんなこと成し遂げられるのだろうか。
感服いたす。いや、敬意を感じる。凄いやつだよあんたは。

マシマシママは6600円のお支払いをし、どんぶりを受け取り、去っていった。

高木さんは旅行券を受け取った。

「た、高木さん!大丈夫!?」

「あ、あんまうっ...大丈夫じゃないかもっ...動けなっ...」

「ほ、保健室行こ。おんぶするからさ」

「あ、ありがと。...でも満腹うっ…すぎて西片の上で吐いちゃったら...」

「その時はその時だよ。俺は別に大丈夫だから。高木さんなら。」

「ありがと。吐かないようがううっ...頑張るから。」
「ううっ...おんぶだとお腹圧迫されて辛いや。」

「...抱っこでも同じだし......」

「お姫様抱っこなら大丈夫かも...」

「ええっ...///」

恥ずかしい
恥ずかしすぎるが
そんなこと言ってる場合じゃない。
しっかり運ぶぞ。お姫様抱っこで、保健室まで

高木さんのぽっこり膨れたお腹がかわいいとか
抱き抱えた太ももの感触とか考えるな、無心で運べ、俺

「えへへ。このお腹ね。妊娠8ヶ月よ?あ・な・た❤」
「ううっ...吐きそう。つわりかな」

「こんな時まで無理してからかわないで///大体妊娠8ヶ月じゃつわり終わってるしとっくに!///」

「あはははは。うっ...」

その後高木さんを保健室に運び寝かせる。
喋るのもキツそうだ

「ごめん。高木さん。俺のために」

「ううん。私が勝手にやった事だし。西片と旅行、また行きたかったから。」

「無理しなくても、バイトでお金ためて行けるのに」

「目の前に西片との旅行がある状況で折れたく無かったんだよ。西片が好きって気持ちを掲げて挑んで、諦めたくなかったんだ。うっ...」

「ほんと大丈夫?」

「2日くらいご飯食べれないかも。これ...。西片ご飯まだだったよね。食べに行っていいよ。」

「俺のためにこんなことになった高木さんを置いて行けるわけないだろ。高木さんが満腹でも頑張ってくれたなら、俺は空腹でも頑張る。ずっとそばに居るから」

「ありがと。西片。...でもせっかく保健室で2人きりなんてシチュエーションなのにさ。何もしないのもったいないよね。」
「西片...え、えっちしよっか?」

「しないよ!学校だよ!?それに高木さんがこんな状態なのに///」

「ふふふ。そうだね。それに、お腹いっぱいすぎる今そんなことしたら間違いなく吐いちゃうね。うっ...」

「ほんと大丈夫?」

「大丈夫...だといいけど...。頭撫でてくれる?」

「...そ、それくらいなら」

高木さんの頭を撫で続けると
高木さんは眠ってしまった。
膨らんだ高木さんのお腹がぐるぐる鳴ってる
全力で消化してるのだろう。

そのまま文化祭終わる時間まで保健室に居た。

「大丈夫高木さん。歩けそう?」

「大丈夫」

高木さんの方を抱きながら、支えながら保健室を出た。

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ユカリ(えー。いま保健室から出てきたの西片君と高木さんよね?高木さんが千鳥足で、西片君が肩抱いて。2人で保健室で一体何を、ナニをしていたのー!)

第115話 完

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