からメシ 第114話 オリーブの島なんでも博覧会vs特進クラスによるテーマ展示

クラスの皆で各記事のレイアウトを決め
いよいよ文化祭だ。

俺と高木さんの記事は一番最後
こういう問題提起は余韻を残した方がいいんではないかということで出口付近に掲示された

入口から入るとまずは日々野さんら料理部員のお料理レシピが貼られている。
……ちなみにこの記事にはいままでにない工夫をするらしい。

そしてその隣にはミリタリーの記事。(戦争に問題提起を置く俺と高木さんの記事とは離したほうが良さそうということでこの位置)

さらにその後ろには高尾他数名のゲームについての記事。おすすめゲームからレトロゲームのバグを使った裏技集まで、目白押しだ。さらに革新的な工夫がある!と高尾が言っていた。

そして、居眠りについて、ギャルメイクについて、アニメについて、などなど様々な個性的な記事が並ぶ。

そして最後に構えるのが俺と高木さんの記事だ

自分たちで作ったものだが改めて読んでみる。

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若潮部隊を知っていますか
~二度と悲劇を起こさぬように~

                                                         西片・高木

今日、当たり前のように私たちは平和を享受して、勉学に、部活に、友達との時間に、そして恋にと青春を謳歌しています。
ですが、ほんの80年ほど前にはそんな当たり前の幸せも叶わず、愛する人から引き離され、命を奪われていった人達がたくさんいるのです。そしてここ、小豆島でもそれは例外ではありません。

皆様は「若潮部隊」をご存知でしょうか。
1944年、この小豆島に存在した部隊です。
ここで海上挺進戦隊としての出撃に向けた秘密の実戦訓練が始まります。
そしてこの部隊の目的は特攻です。
耐水ベニヤ板でできた舟艇の両脇に120キロずつ爆雷を取りつけ、敵船に最接近して投下し、急速にUターンして離れるというもの。
長さ5メートル余、幅2メートルほどの小型舟艇にまともな攻撃兵器はありません。敵の砲火の中に突っ込む、事実上の体当たり攻撃です。

小豆島はその訓練地となりました。私の出身中学の裏山に彼らの慰霊碑があります。
訓練では勇んでいた兵士でも出撃が眼前になると、緊張と恐怖感に襲われます。愛する者を残して死にたくなんかないのです。

全ての海上挺進戦隊ではフィリピンや沖縄などに計3125人が派遣され、6割近い1793人が亡くなられました。ほぼ全滅した部隊もあります。

・取材を通じて 西片

まず最初に、亡くなられた方にご冥福をお祈りします。
まず、最初にショックを受けたのは、この自分の住んでいる島で自分と同じくらいの歳の人たちが
自爆して死ぬための訓練をさせられていたということです。
俺だったら……絶対行きたくない。いや、行かない。人を殺すのも、自分が死ぬのも絶対嫌だし、なにより、
大好きな人を残していくなんて絶対にできません。でも、この戦争で亡くなられた方々も俺と同じ気持ちだった人は沢山いると思います。
だから絶対に、戦争なんてあっちゃいけないことだと思います。
絶対に大事な人を悲しませてはいけないのです。
先日、原爆資料館を見学しました。平穏に暮らしたかっただけの人達が、それこそ俺みたいに好きな人と一緒に幸せに過ごしたかっただけの人もいたでしょう。
そんな命が奪われ、生き残っても、後遺症が残ったり、大事な人が死んでしまったりと、辛い思いをするわけです。
こんな残酷なことは絶対もう起こしちゃいけないと、思いました。

・取材を通じて 高木
まず最初に、亡くなられた方々にご冥福をお祈りします。
私がこの時代に生きていたら、と思うとゾッとしました。…たしかに私がこの時代に生きていても徴兵はされないかもしれません。
ですが、空襲などの攻撃でいつ命を奪われてしまうか分からない時代です。そしてなにより、辛いのは
大事な人を奪われてしまうかもしれない事です。私には大好きな人がいます。
その人が、いつ帰ってこれるかもわからない、いや、二度と帰って来れないかもしれない戦いに参加させられ、
離れ離れになるなんて事は、私にとって死ぬより辛いことです。私はもしその時代に生きてても絶対にその好きな人をなんとしてでも戦地に行かせないようにしますが
それでも無理やり連行されてしまうこともあるかもしれません。そんなことを考えると辛くて辛くて仕方ないです。
また、戦争で命を奪うということは、その相手や相手の大事な人にもこのような絶望を味合わせるということです。
命を奪った相手だって大事な人を残して死にたくなんかなかったでしょうし、残された人も死ぬより辛い様な思いをします。
また、みな、そんな思いを人にさせたくないのに、無理やり命を奪うことを強いられる。大切な人にそんなことを絶対させたくありません。
戦争に限らずですが、大事な人、愛し合ってる人同士を引き離す事や、死ぬかもしれないことをさせたり、人にするのを強制させることほど世の中に惨いことは無いと思います。
二度とこんなことが繰り返されませんように。

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ふむ
書きたいことは全部書けたかなと思う。

「西片、伝わってくれるといいね。」

「うん。」

さて、文化祭が始まる。
初っ端から俺と高木さんは案内の係員をやることになったが、
あれ、日々野さんが残ってるぞ?つか高尾も残ってるぞ?なぜだ

お客さんが来た。
まず一番最初に目につく日々野さんの記事を見ている。

客A「最後の発酵バターのクッキーっておもしろそうだね。」

客B「食べてみたいな~」

ミナ「えへん、ここにあります!」

とクッキーを差し出す

ミナ「世界初?食べれる記事です。」

食べれる記事というのが厳密に合ってるかはともかく、紹介したレシピのクッキーを実際に作り、食べてもらうというのは斬新すぎる試みじゃないか?

客A「おいしいー!」

客B「普通のクッキーとちょっと違うかも」

と好評である。

俺と高木さんも1枚貰うことにした

「おいしいね。高木さん」

「風味がなんか違う気がするや」

たしかに美味しい。だけど…

「高木さん、あのさ。」
「高木さんの焼いたクッキーのが…好きだな…///」
高木さんに耳元で小声でささやいた

「…///ありがと、西片。」

そういうと高木さんは脇腹をつんつんしてきた
「く、くすぐったいから高木さん!///」

「あはははは」

すると高尾の絶叫が

高尾「あああああ」

どっかの子供の親「すいません!すいません!ほらあんたもあやまんなさい!」

どっかの子供「ご、ごめんなさい」

どうやら高尾も体験できる記事として昔のポータブルゲームを置いて居たらしいのだが子供が落として壊しちゃったらしい。
ご愁傷さま。

30分ほどたち、受付を交代する。
今年はもう高木さんと俺の自由時間だ。

「まずどこ行く?高木さん」

「やっぱ北条さん達のクラスかな。テーマがおなじで勝負するわけだし」

ちなみに勝負の仕方は、一般審査員にそれぞれ50点満点でそれぞれの記事を採点してもらい、一部の先生(有志)が特別審査員として50点満点で採点。
それぞれ各記事で一般審査員の平均と特別審査員の平均を出してそれを合計し100点満点で競う。
というシステムで、クラス対抗の仕方はそのクラスの記事の平均点勝負、となった。

「北条さんと浜口くん。一緒に二人で記事書いたんだね。」

「ほんとだ…なになに、サマースクールを通じてカナダという国を考えるって題か……あれ…この内容…」

「北条さんと浜口くん、一緒にサマースクール、カナダまでいったんだね。今年」

「えええええ」

ちょっとビックリした。

特進クラスの記事はちょっと難しい内容のが多かった。

そんなこんなで高木さんと俺は文化祭を楽しんだ…のかな?一応。
※二人で廻る文化祭の話の続きは次の話でします。

そして、文化祭が終わり、結果発表が訪れる。

クラス対抗では…ざんねんながら特進クラスの勝ちになった。
ただ得点はうちのクラスが70.2点 特進クラスが
71.0点と僅差であった。

というか、正直な話、高尾が子供にゲーム機壊されてなかったら勝っていたらしい。
(ゲーム機壊れる前の評価が90点近くあり、感想も実際にゲームができるなんて面白い。だったが、壊された後見事に半分程度の得点になり、
動かないゲームの残骸が放置されてて残念だったとか書かれていた)

それはそれとして、優秀賞は
3位、銅賞が特進クラスの記事。(北条さん浜口ではない) 88.6点

2位、銀賞がうちのクラスの日々野さん達の記事。93.2点
やはりレシピにある食べ物が実際に食べれるのが斬新すぎる&楽しめて好評だったらしい。

そして1位、金賞が……なんと
俺と高木さんの記事だった!95.5点
小豆島に住んでるのに、知らなかった。勉強になった。心に訴えかける文章だった。などなど
の感想が寄せられた。

「まさか私たちが1位だなんてびっくりだよ」

「一生懸命書いたからね」

「だね。思ったことを書いたのも良かったのかな……しっかり伝わったよね」

「うん。」

最優秀賞に選ばれても別になにも貰える訳でもないが
俺と高木さんの合作が評価されたこと、そして
、皆に伝えたいことが伝わった事が良かったと思った。

第114話 完了

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