からメシ 第128話 手打ちにしてやるぜ

大晦日の朝。
昨日も、風呂から上がったあとも
遅くまで勉強していて疲れが溜まっている

とはいえ寝る時は高木さんにくっつかれるので中々寝れない。
高木さんのいい匂いと高木さんのやわらかな感触攻撃、好きな人にこんなことされてすやすや寝付ける男子高校生なんか居ないだろう。

というわけで必然的に目覚めが悪くなり、朝は高木さんの独壇場となる。

起こし方も最近口でアレを……っていう必殺奥義まで覚えたので(クリスマスの時以来まだ使わせてないが)うかうか寝てられないのだ。

ほら、今日もだよ。こちょこちょする。よりによってあそこを
眠い目を必死にあけガバッと起きる。

「高木さん!その起こし方やめてよ///」

「えー。まだ服の上から触っただけなのに。」

「まだ、ってどこまでやるつもりだったのさ!///」

「えーそれは、西片のを飲み込むまでだよー。」

ようするに口で、出るまでする気だったと。

「残念だったね起きちゃって。寝てたら気持ちよーくなれたのに」

高木さんめ!

「それより今日、早く起こしたのは意味があってさ」

高木さんが着替えはじめる

「高木さん!?当たり前のように俺の前で着替えるのやめない!?」

「えー私の部屋なんだしここで着替えるのは当たり前でしょ?他の部屋で着替えるとかやだよー。着替え誰かに見られたら」

「今まさに俺に見られてるんですけど///」

「西片にだけはいいんだよ。」

「……俺だって男なんだから。そういうことしてると……///」

「襲って❤」

「襲わないからっ///」

「せっかくゴムたくさん買ったのになー。」

高木さんめ。

着替え終わると高木さんはなんか法被みたいな服を着てねじり鉢巻をしていた。

一体何を……

部屋から居間に行くと何やら色々持ってくる。

新聞紙を広げ。その上に
でっかい漆塗りの容器とかでかいまな板とか変な形した包丁とかを並べる。

「そば打ちをします。ふふふ。手打ちにしてやるぜ」

なるほど。年越し蕎麦を打つのか。それにしても、服装とかねじり鉢巻とか形から入る高木さん、かわいいな。
手打ちにしてやるぜってセリフも映画かなんかのセリフっぽい。……そば打ちのシーンじゃないだろうけど

こういう細かいところまで一つ一つ。愛しい。

高木さん母「西片君に手打ちそばご馳走するんだ!って張り切ってわざわざ買ったのよ?」

西片「す、すいません。ありがとうございます。」

高木さん父「いや、買ったのは娘が、だから。」

西片「ありがとう。高木さん。……なにか手伝おっか?」

高木さん「大丈夫だよ。ありがと。」

しかし高木さん。手つきが上手い。こね方も美味い。

綺麗に生地がまとまり、それをめん棒で広げていく

素人だとここで割れてぼそついちゃう気がするが、高木さんのは割れたりしない。

「高木さん上手いね。」

「まあ二八そばだしね。それに勉強したから、作り方。西片に下手なもん食べさせられないでしょう?」

うち粉をし畳んで切っていく。
これもまた上手い。均一だしボソボソにならないし。蕎麦屋できちゃうんじゃないかな

「こっから出汁とったり、天ぷら作ったりもするんだけど、いっぱい蕎麦作ったから昼は打ち立て、食べてみる?」

「ぜひ!」

高木さんがお蕎麦を茹で、その間に麺つゆを作る。といってもつゆの素の水割りで簡易的なものだが。
あと、残りの麺は蕎麦紙という専用の紙に包み、ラップをしておく
こうするとそばの劣化を防げるそうな。

「茹で上がったから食べて。西片。お父さんお母さんも。そば湯もあるからね」

「「いただきまーす」」

早速高木さんの打った蕎麦をすする。
打ち立てだからかそばの風味がすごい。

西片「美味しい!高木さん!蕎麦の風味がすごくて、ちゃんとツルッてしてて。プロだよこれ」

高木さん父「乾麺より全然美味い」

高木さん母「香りが違うわ。」

高木さん「ありがと。作った甲斐があるや」

西片「こちらこそありがとう。止まらないよ。高木さん」

あっという間に完食。

西片「じゃあ蕎麦湯も貰おうかな。蕎麦湯もそばの香りがすごいね。つゆに合う。もうこれスープだよ」

高木さん「味変に七味唐辛子もあるよ?」

西片「七味唐辛子も合う。ほんと美味しい」

高木さん父「蕎麦って一味より七味のがあうんだよな」

高木さん母「山椒とかが合うのかしらね。」

「「ごちそうさまー」」

お世話になっているので俺が率先して食器を洗う。

「悪いね。西片。お湯使って?しつこい汚れとかあったら洗剤入れたお湯に付けとくといいよ?拭いてしまうのは私がやるね」

「ありがと。」

「夜は出汁とって、天ぷらも作ってもっと本格的にするから楽しみにしててね。とろろもすろうかな」

「高木さんとろろ好きだよね」

「うん。大好き。あ、でも西片のがずっと大好きだよ」

「…知ってるよ。」

「あと、西片から出てくるとろろも好きかな。独特な風味があって」

「……そ、そういうこと言っちゃダメだからっ///」

「あははははは。顔真っ赤。相変わらずだね」

こうして、大晦日のお昼は高木さんの手打ちそばを食べた。

第128話 完

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