からメシ 第84話 からキャン△

4月末ごろ。ある日の放課後。一緒に帰ってる時。
「西片、キャンプに行こうキャンプ」

突然高木さんが言い出した。

「え、突然何を言い出すんだい高木さん」

「昨日テレビでキャンプするアニメやってて、見てたら西片とキャンプしたいな~って思ってさ」

「うん……唐突すぎない?まず俺今お金ないんだけど。島外の宿泊デートなんてとても……」

「オリーブ公園にわりと安いキャンプ場あるんだよ。西片こないだの旅行で大変そうだし、私が奢るよ」

「いや、そんなの悪いよ……大体オリーブ公園までどうやって荷物を…いまバイクも使えないし…」

「お父さんが車でオリーブ公園まで行ってくれるって」

「キャンプ用品買う金が…」

「お父さんが昔ソロキャンプ趣味だったから道具一式あるよ」

「……バイトが」

「…5月のゴールデンウィーク前の休みなら急遽入れてもいいよって太田さんが言ってたよ」

「……」

「……はい決まりね!」

という訳で週末キャンプをすることになった。
近場なのであまりキャンプ感は無い気もするけど
林間学校以来か……キャンプ
高木さんと二人きりなら初めてのキャンプである

西片「すみません。車出してもらって。キャンプ用品までお借りして。ありがとうございます。」

高木さん「ありがと、お父さん」

高木さん父「いいって。明日、帰りまた連絡してね」

西片「はい!」

とりあえず早々にチェックインを済ませる。
しかし荷物がクソ多い。
でも高木さんのお父さんが持ってたキャリーカートのおかげでなんとか一度で運びきれた。

さて、設営だが。高木さんも俺もキャンプ初心者。お互いネットとかyoutubeとか見ながら見様見真似でやってみる。

「あれ?このペグっての、ささらないな」

「西片斜めにしすぎだよ~。まっすぐもテントがたるみ張らなくなるからダメだけど斜めすぎても刺さらないよ?」

組み立てとかペグ打ちとか、初めてのことばかりだけどふたりで協力して進めていく。
なんとか設営完了!もう夕方近くになってきてる

「ふぅ、やっとできたや」

「うん、時間かかったけど」

「私たちの愛の巣と名付けよう!」

「は、恥ずかしいから///そういうの!///」

「あはははは」

「汗かいちゃったね、西片。先に併設してる温泉入りに行こうよ。」

「うん!」

着替えとタオルなどを持って一緒に温泉に向かう。一応高木さんがテント用の鍵をテントにかける

「結構慎重だね。財布とか持ってくのに」

「女の子だからね、一応。勝手にはいられたり私物に変なことされたら嫌だから。西片には何されてもいいけど、他の人に変なことされるの絶対嫌だから。私物とかにでも」

高木さんも日々、色々気苦労あるんだなあと思った。なんとか少しでも俺が助けになればいいんだけど

「西片~、行き帰りに松ぼっくりあったら拾っていこう。はいこれ袋」

「なんで松ぼっくり?」
言われるとおり松ぼっくりをさがし、あれば拾っていく

「天然の着火剤だからね。後で火起こしする時に使うんだよ」

「なるほど。」

そうして松ぼっくりを拾いながら温泉に向かい
温泉に入る。もちろん別々!
今はキャンペーンやっててどうやらキャンプ利用客は温泉タダらしい。
しかしキャンプ場に温泉ついてるっていいなあ。
温泉いいよなあ~温まるし。高木さんも堪能してるかな?
高木さんのが時間かかるだろうし、ゆっくり温泉を堪能した。

温泉を出てしばらくすると、高木さんがあがってきた。
湯上りの高木さん。髪の毛がほんのり濡れていて、石鹸の匂いがする高木さん。……俺の大好きな高木さん。

「懐かしいね。西片。中学2年の時一緒に銭湯行ったっけ。あれからそろそろ3年経つのか~」

「一緒に行ったと言うより、たまたま高木さんも銭湯来てて一緒に帰ったのでは?」

「たまたまじゃないよ。あれ。というか西片も待ち構えてると思ってたでしょ?」

「そ、そうなんだけどさ」

松ぼっくりを探し拾いながらテントへ向かう
外はもうかなり暗くなってきている。

「高木さんそういえば着替えジャージなの?しかも中学の時の。」

「いいでしょ。これ。西片が林間学校の時の思い出とか思い出してくれるかなって、雰囲気出るかなってあえてのチョイスです。」

「でも、いいよね。2人でお風呂に行って2人で同じ場所に帰るって。」
「でもちょっとジャージは冷えるね。白い手ぬぐいだけどマフラーにしよっか」

「い、言ってる意味がわからないよ」

「そういう昔の歌があるんだよ~。冷た。タオル濡れてて余計冷たくなるからやめよっか」

「俺の上着、貸すよ。湯冷めしたら大変だし。」

「悪いよそんな」

「いいから。俺、風呂長く入ってたし、別に今寒いって思ってないからさ。むしろ着てきすぎたかな~って」

「ありがと……私は西片のやさしさ、怖くなんてないよ。大好きだよ。」

「さっきからなにを……」

「そういう昔の歌があるんだよ」

そんなこんなしてテントに着いた

「愛の巣に到着ー」

お腹はもう腹ぺこだ
こっから火を起こし、米をたき、肉なりなんなり色々焼いていく

「今回はご飯と、肉とか色々焼くだけのシンプルなスタイルにしました。荷物もより多くなるし色々凝るのはまた今度ね。」
高木さんが張り切っている。ジャージ姿に上着で、だから林間学校の時のキャンプの思い出がたしかに思い浮かぶ。
でも、今回は、高木さんと二人っきりだ。

松ぼっくりに火をつける。いや、つくことにはつくんだけど。すぐ消えたり。なかなか炭に燃え移らなかったり
二人で一生懸命息をふきかける
なんとか炭に火が移った

「顔が近かったから照れてたの?西片」

「そ、そんなことは無いね///」

「炭だけじゃなく西片の顔にまで火が移ってるみたいに赤かったよ?」

高木さんめ、いつなんどきでもからかいは、忘れないのな

「さ。こっからが肝心だよ。火を絶やさないようにして、ご飯を炊こう」

しかし、ご飯の炊き方がよく分からないので調べると

「た。高木さん大変だ!米をといだ後1時間水に浸すって書いてあるよ!こ、これから1時間も浸してその後炊くの…?」

「ふっふっふ。そう言うと思って既にお風呂の前にといで浸しておいたのです。伊達に西片の料理番やってないもんでね」

さすが高木さんである。

焚き火台の炭を片方に多くよせそこに薪をくべ強火のところと弱火のところを作る。
まずは強火で一気に炊いていく。
上手くメスティンとかいう取っ手の着いた飯盒を動かし、ムラなく同じところに火が当たりすぎないようにしていく

吹きこぼれてきたらすかさず弱火のところに置く
あくまで、弱火であり、冷まさないようにするのがコツだそうだ

高木さんがクーラーボックスからお肉とか出して準備をしながら、やさしく的確に指示をくれるのでやりやすかった。
弱火で15分ほど。一瞬だけ蓋を開け水が完全に蒸発してるのを確認したら
タオルに包み10分ほど蒸らす。
その間に高木さんの方の準備も完了。串焼である。予め家で串に刺しておいたようだ。

「これが小豆島オリーブ牛のカルビ、牛タン、同じく小豆島オリーブ豚のバラ肉、豚トロ、これが地元のジビエのイノシシ肉。あとエリンギとナスとピーマン」

「ぴ、ピーマン!?」
そう、俺はピーマンが苦手である

「は、入ってなかったや。あと、玉ねぎの野菜串だね」

「玉ねぎとピーマン全然違うんですけど!」

「あはははは。」

串を焼いていく。美味しそうだ。豚肉はよく火を通さないとな。焼けたやつは弱火ゾーンに移していく。なるほどこの為の弱火ゾーンでもあるのか。さすが高木さん。

「さ、焼けたよ西片。いい肉使ってるからね。美味しいはず」

「高木さんから食べなよ。今回キャンプ提案してくれたのも食材持ってきたり調理してくれたのも高木さんなんだし」

「西片。私はね、西片が美味しい美味しいって食べてくれるのを見るのが、一番美味しさを感じるんだよ。」

「……そ、それはこっちだって一緒だから。ご飯よそってくるよ。そしたら一緒に食べよう」

「……うん。ありがとね西片。」

味付けは塩コショウ、レモンがある。

「それでは」

「「いただきまーす」」

「た、高木さん。牛肉美味しいよ!このカルビ、旨みがすごくて。脂ものってて」

「牛タンもコリコリしてて旨みがじゅわーっと。最高だね。西片。やっぱり牛タンにはレモンだね~」
「また西片が炊いてくれたご飯がおいしいこと。お肉に合う」

「た、高木さんの指示がうまかったんだよ」

「豚トロとバラ肉も焼けたよ~野菜もそろそろいいかな」

「豚トロと野菜が合うね。この濃厚な脂と野菜のサッパリ感が」

「ナス、玉ねぎ、エリンギ全部脂と相性いい野菜だからね。よく炒めて使うでしょ?豚バラとも合うよ」

「た、たしかに!」

「さて。そろそろイノシシ肉も行きますか…!」

イノシシ肉。初めて食べる。どんな味なんだろうか。臭みとかあるのか?

恐る恐る。
「お、美味しい!臭みとかないんだね。豚肉と味似てるかも」

「脂は豚より少なくて固めだけど旨みはこっちのが濃いかも」
「あと、屋外でたべてるのと、なによりも…西片と一緒に食べてるってのが一番ごはんを美味しくしてるポイントかな。西片と一緒だから…おいしいんだよ。」

「……///お、俺も……た、高木さんと一緒に食べるからこんなに美味しいんだと思う…。///」

「西片顔赤いね///」

「た、焚き火の赤さが反射してるの!///」

そんなこんなで、全部食べ終えた。おなかいっぱいだ。
手分けして片付けをする。もう相当夜遅くだ。

しかしこの後…あんな展開になるなんて

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片付けが終わりもう夜中。深夜に近い時間帯だ。あとは寝るだけ。

「高木さん、寝袋あるんだよねたしか。」

「うん。ほら、お父さんが使ってたから大きいやつだけどね」

「……あれ?……これってさ……」

「あ。ちゃんと綺麗に洗ってるから大丈夫だよ。お父さんの匂いとかしないから。……私も西片以外の匂いがするの嫌だし……」

お父さん…ちょっと可哀想になったが俺以外の、とひとくくりなので別に親子仲が悪いわけでは無いと思う。見てても。そんなことより

「いや。そういうことじゃなくて、寝袋一つなの?」

「そうだよ?お父さんソロキャン派だし」

「……えっ……じゃあ高木さん使ってよ」

「ダメだよ西片。まだ4月なんだから朝方は冷えるんだよ?寝てたら尚更。そんな寝袋使わせないなんてことさせられないよ。」

「そ、それは俺も同じだよ!高木さんさっき寒がってたし余計にそんなこと……」

「……わかった。じゃあさ……」

な。納得してくれたか

「二人で一つの寝袋に入って寝ればいいんだよ……///」

「えええええええええええ!」

第84話 完

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