からメシ 第32話 君と3度目の夏祭り

これを夏祭りと呼べるかはわからない。
高木さんの家で、高木さんが浴衣を着て
夏祭りの定番料理を作って食べる
打ち上げ花火もない。せいぜい出来るのは雨が弱まってる時に、玄関先で線香花火をやるくらいだ。

それでも、俺と高木さんにとっては...これは夏祭りだ...
高木さんが俺の手をギュッと握る
「西片のおかげで、今年も夏祭り、行けたね。ありがと。西片。」

リビングに行く。ホットプレートとたこ焼き器が用意してある。高木さんの家にもタコは無かったが、俺がお風呂に入ってる間に高木さんがタコさんウインナーを仕込んでくれたらしい

「さ、どんどん作っちゃうよ!」

高木さんが張り切っている

高木さん母「待ちなさい。夏祭りのお客さんが自ら料理作るって変よ?たまには私たちに任せてほしいな」

「......ありがと。...ただ、後で私も作りたいな。変かもしれないけど...西片に...」

というわけで最初は高木さんのお母さん、お父さんが屋台の人になりきり、焼きそばやたこ焼きを作ってくれた。でも、高木さん、やけに俺に料理を作るってのをこだわるな...

高木さんのお父さん。作務衣に着替えていて紙皿、紙コップを出してくれた
高木さん父「この方が、お祭りって雰囲気出るでしょ。申し訳ないけどお祭りのプラスチックのパックは無くてね。」
高木さんのお母さんがYouTubeでお祭りのお囃子のBGMを再生してくれた。

「あ、ありがとうございます!すみませんわざわざ!」
高木さんのお父さん、お母さんも少しでも夏祭りに近づけるように気を使ってくれてる。本当にありがたいし、高木さんのご両親にも歓迎されててよかった

「おいしい、美味しいです!焼きそば!」

「雰囲気もあってお祭りって感じするね!」

たこ焼きも食べる。実際はタコさんウインナー焼きか。

「西片、生地私作ったんだよ?山芋入ってるからね。あとウインナーだけじゃなくなっとう入りのも作ってみたよ」
高木さんて、やっぱり山芋となっとう大好きだよな...

でも
「すごく美味しいよ!高木さん。山芋入れたからか旨みが出て生地がふわっとしてさ。なっとうも合う」

「西片。あーん」

「ちょ...高木さん??こんな、高木さんのお父さんお母さんの前で...あーんだなんて...///」

「できないの?西片?」
高木さんが寂しそうな顔をする
高木さんのお父さんお母さんもじっとこっちを見つめていてなかなかプレッシャーが

高木さんめ!俺がその顔に弱いって知ってて

ぱくっ!
もぐもぐ
「すごくおいしいよ!高木さん!」

「西片、私に食べさせてもらうの本当好きだよねー。」

「なっ...た、高木さんからあーん、ってしてきたんじゃないか!...///」

「あはははは」

「高木さんこそ...俺に食べさせるの好きだよね」
高木さん、どうだ、さすがの高木さんでもご両親の前で、恥ずかしいんじゃないか?

「好きだよ。」
...//////そ、その言い方は...食べさせるのというよりも......///逆にこっちが恥ずかしい...///

「西片は?」
...///高木さんめ、逆手にとって言わせる気だな...でもご両親の前で...言うなんて...いや、だからこそ言うべきなのか?

「ごめんごめん、西片。からかいすぎちゃったや。西片がどう思ってるかは真っ赤になってる西片みたら分か...」

「だ、大好きです。」

「......///ありがと。西片。えへへ、幸せだな。私...」

高木さん母「青春っていいわね~」
高木さん父「愛だね」

途端に恥ずかしくなり顔真っ赤になって俯いてしまう。高木さんも、恥ずかしがってるかも

「さ、私も焼きそば作るよ!さっきはソース焼きそばだったから、私は塩焼きそば作ろっ」

高木さんが焼きそば作ってくれた
「どう?西片?」

「すごくおいしいよ!高木さん!」

「さっきの、焼きそばとどっちのがおいしい?」

「...そ、そんなの答えられないよ!選んじゃったら申し訳ないだろ!」

高木さん母「もうその口振りで分かっちゃうけどね」

「そ、そんなつもりは...すいません!」

高木さん母「いいのよ。娘の料理褒めてくれてありがとうね」

ちょうどそんなこんなしているともう夜

たまたま、土庄町は台風の目に入るそうだ
高木さん父「西片君、雨もやんでて、風も弱まってる。今なら線香花火できるんじゃない?」

高木さん母「やるなら玄関先でね!」

「「はーい」」

高木さんと俺は線香花火に火をつける
高木さんの家の庭で線香花火

「西片、夜の浜辺で線香花火ってデートっぽいけどさ...」
「夜に家の庭で線香花火って...家族っぽいね」

初めて高木さんと線香花火をした、ちょうど二年前の夜なら、大袈裟に言ってからかってるのかなと照れてるかもしれない。
でも、今は違う。高木さんは、俺には嘘つかない。いつも本音なんだ。本音というか、これは高木さんの願い。そう、まっすぐ受け止められる。

「うちでも、高木さんの家でもいいからさ、夏になったらこうやって、毎年二人で庭で線香花火できたら...いいよね」

「あ、西片の線香花火落ちた。私の勝ち!」

「つ、次は負けないから!」

「うん...でも、そのうち...三人で...線香花火できたらいいな...」

「三人って...それ...」

「うん、西片と私と。それから、西片と私の...///」

「...そうだね、家族で花火しよう。絶対」

「...西片の頑張り次第では四人五人六人ってなるかもだけど」

「...///高木さん!恥ずかしくなるから!そういう話は!」

「あ、また西片の線香花火落ちた。私の勝ち。負けたら罰ゲームだよ。私が勝ったらお風呂で背中流してもらおうかなー」

「そ!そんなの出来るわけないだろ!大体お父さんお母さんがいいって言わないだろ!それに花火終わったら俺帰るし」

「もしいいって言ったら背中流してくれる?」

...///

「あ、また西片の線香花火落ちた。3-0だね。よっぽど私の背中流したいみたいだね。相変わらず私の裸が見たくて触りたくてしょうがないえっち大明神だね西片は。」

「ち、ち、違うから!とにかく!背中流しはダメ!」

「ちぇー。わかったよ。後日、他のにしとくね。」

結局戦績は 高木さん 12-2 西片
5回コールド並のスコアで線香花火勝負は俺が惨敗した
ちょうど終わる頃、また風が強くなり雨が降ってきた。
片付けて高木さんの家に戻る。もう夜9時頃...そろそろ...おいとましよう

「あの、本日は突然押しかけて申し訳ありませんでした。また、高木さんの夏祭り、一緒に開いていただいて、ありがとうございます!
突然でお土産も買ってこれずすみません!」

高木さん母「いいのよそんなの。」
高木さん父「うちの娘のためにそこまでしてくれて感謝してるんだよ?むしろ」

「じゃあ、俺。帰りますので、ありがとうございました。お邪魔しました。」

高木さん父「あ。待って、西片君。もう夜9時だ。台風も明日朝まで抜けないから、雨風も凄い。もし、西片君のご両親が良ければ、だが
今日はぜひ、泊まってってくれ」

西片「...。え、えーーー!」
びっくりしてつい。えーーー!と言ってしまった。

第32話 完

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