からメシ 第20話 Over Drive
終業式の日
「西片っ❤一緒に帰ろうよ」
「ごめん。高木さん。今日は大事な用事があって…」
「…そっか……じゃあ明日どっか行こうよ」
「申し訳ないけど…数日外せない用事があって会えないんだ。バイトも数日入れてない…」
「……そっか。」
(高木さんが泣きそうな顔してる…心が痛い…でもこれは内緒にしないと…高木さんを驚かすために!)
そう、俺はある試験を受ける
その名も
【小型二輪免許】
元々バイクに興味はなかったが。
こないだテレビでツーリングの番組をやっていてね
「高木さんと一緒にツーリングできたら…いいな。って何独り言言ってるんだ俺は!」
でも調べると
こないだ16歳になったのでもう免許は取れる
16だと大型以外は取れるのか…一番安くて早く取れるのは原付1種…でも…
「二人乗りできないんじゃ意味ないよな…」
というわけで受験料も高く取得に必要な時間も多くかかるが、小型二種免許を取る事にした
猛勉強し、学科、技能講習を経て、いざ試験
そして、合格。晴れて小型バイクの免許持ち
そして念願の小型バイクを買う
今回試験講習代とバイク、中古だけど…バイト代だけでは足りなかったので親に何度も頭を下げ、お金を借りた。
いや、バイクにはあまり興味は無いのだけれど…
高木さんとバイクで二人乗り…
それに俺がバイクを買ったとなれば
「西片、カッコよすぎる!こんなに西片かっこいいなんて!もうからかう方法が思いつかない!」
ってなるはず!さあバイク乗りになったカッコよすぎる俺を見ろ高木さん!!!
さて、終業式から5日以上は経ってしまった。
…そういえば…こんなに高木さんに会ってないのなんて何年ぶりなんだろう…中三の頃にはもう休みも毎日会うのが当たり前の様になってたしな…
高木さん…心配してるかな…
高木さんを喜ばせるためとはいえ…
高木さんの家の前でバイクを止める
高木さんに電話をする。
~
西片…寂しいよ…
西片と数日会えないだけでこんなに辛いなんて…
西片っ……グスッ
西片っ……会いたいよ…
電話…西片だ!
「西片!」
「わっびっくりした、高木さん……フフフッ今君の家の前にいるよ?窓を開けてご覧」
どうだい、このキザなセリフ…ちょっと恥ずかしかったけど…俺だって日々成長している!
高木さんが窓を開ける
「よっ!」
これは決まった!惚れ惚れするだろう高木さん!
「あはははははは。西片なにそのセリフw」
「久しぶりに会ったと思ったら思いっきりカッコつけた西片がいるから、おかしくて、あはははははは笑いすぎてお腹痛いよw」
「カッコつけた時の西片は大体かっこ悪いからね」
(高木さんめ!)
「でも、そんなかっこ悪い西片も私は大好きなんだけど❤」
「会えないし…理由も教えてくれなかったから寂しかったけど…でも多分西片の事だし、私を驚かせようとしてるんだろうなとは思ってたよ?」
「ごめん…バイクの免許取ってて」
「そっか、そんなに私とツーリングしたかったのかー」
「…うん///」
「でもすごい寂しかったなー。西片はこれから私をバイクでどっか連れてってくれるんだよね?まだこんな早朝だし」
「…ちょっとその辺をぷらぷらとしようかなと」
「じゃあさ、私が行先決めていい?」
「……いいけど」
「じゃあね……日本海!日本海見てみたい!」
「えーーーー!」
「それからね、出雲大社!」
「ちょ、ちょっ高木さん、遠すぎだって!ここ小豆島ですよ?瀬戸内海ですよ?」
「せっかくなんだから、西片とどこまでも遠くに行きたいなって」
「私着替えてくるから。よろしくね!」
とんでもない事になってしまった…
高木さんが、寝まきから動きやすい服装に着替えてきた。
「土庄港の朝便、もう出ちゃうから、急ごう」
「そもそも俺今回のバイクに使ってお金ないし、フェリー代もガソリン代もないんだけど…」
「全部私が出すから~!バイト代結構溜まってるからね!有り金全部もってきてやったぜ、フフフッ」
(西片を旅行につれてく計画しててそれでコツコツ貯めてたやつだけど、もうちょい先に伸ばそう)
(高木さん、西部のダンディみたいな口調でノリノリだな)
~フェリーの中~
「ごめん。高木さんフェリー代まで」
「いいっていいって、西片のバイクで、西片とツーリングなんて夢が一つかなったみたいだよ」
「…///そんな大袈裟な…」
「大袈裟じゃないよ?私の高校生活で西片とやりたいことリスト100にも入ってるよ」
「100って多すぎでしょ!というかそんなの作ってるの!?」
「ちなみに。西片、その100のやりたい事リストの中にはね」
高木さんが耳元で囁く
「西片に初めてをあげるってのも…入ってるんだよ❤」
「た、高木さん!///」
「顔真っ赤だよ西片。ほんとこういうの弱いよねw。でもほんとだよ?」
フェリーが岡山港に着く
「さ、西片。行こっか」
新岡山港朝8時20分
スマホホルダーにスマホを設置しナビを起動
音声で画面を見なくても道がわかる
高木さんにヘルメットをかぶせ、自分もかぶる
「高木さん、暑いけど、しっかり後ろにつかまっててね」
「うん」
高木さんの柔らかい感触が背中に伝わるが、今はそんなことを気にしてる場合じゃない。集中して、高木さんに絶対に怪我がないように、運転する。
(西片、流石だな…普段なら、密着したらうろたえる所なのに…今はからかっちゃ、ダメだよね)
「西片?」
「どうして、西片はこんな朝早く会いに来てくれたの?」
「高木さんに会いたかったから」
「そっか…///」
より、ギュッと力を込め背中に抱きつく高木さんを感じながら
安全に…ゆっくり岡山の街を北上していく
20話
完
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