見出し画像

均質な大地(設問がある物語 5)

大地があった。一面が均質な大地であった。

ある時、長い距離を渡る鳥が訪れ、小さな種を落とした。ゆっくり時間をかけて、小さな芽があらわれた。芽は木となり、小さな生き物を呼び、はぐくみ、はぐくまれた。その後、木はゆっくり枯れた。大地は均質な大地に戻った。

またある時、弱った旅人がやってきて倒れた。
旅人は苦しみに大地を掻き、過ちを懺悔し、最期の言葉を大地に書き付けて死んだ。書き付けはどうしようもなく浅く、すぐ消えるしかなかった。しかし骨は残り、小さな生き物を呼び、ただ与え、長くそのようにあった。その後、骨はいつのまにか消えた。朽ちたのか持ち去られたのかはわからない。大地は、均質な大地に戻った。

と、このように、大地には時折物語が現れた。
特徴づけられ、切り取られた大地は、そうでない大地に対して、自らの上で(または中で、あるいは下で)起きたことをなにひとつ語らなかった。本当のことを言うと、大地は切り取られることも元に戻ることもなかった。大地は大地としてのみ在り、または無く(つまり大地ですらないのかもしれず)語るための言葉も、語るべき物語も、それを語る理由も無かった。

時がすぎ小さな芽があらわれた。時に曇り、雨が降り、まるで旅人の縁者がさめざめと泣くかのようだった。雨は双葉をゆらしたがそれを見るものも語るものも無かった。そこにはただ、全体しかなかった。

✂︎

ここまでで物語は終わりです。

あなたへの設問

設問1
自由な発想で「大地」という言葉を修飾しなさい。ただし、それぞれ10文字以内で、3つ回答すること。

設問2
ノートを一枚破り、破ったページがノートであるかノートでないか、あなたの考えを述べなさい。なお、どちらの立場を支持するか、はじめに表明すること。(1500字程度)

高濱です。私の小さな物語を読んでくれて どうもありがとうございます。沁みます…。 読んでくれたことがうれしい。ありがとう!