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少子化対策の研修

自治体職員向け研修なんてものを企画していると、まあ大枠のテーマとして「少子化」は外せない。一方で悩むのは、研修そのものとして、メタに考えたときに、少子化対策に役立つ研修とはいかなる研修であるか、という点である。

東京で、1泊2日の研修を、月に1回、半年間繰り返す。このような構造を持つ研修に参加できる地方公務員は、家庭環境からしても限られる。これまでの受講生の属性を見ても、8割くらいは男性だし、女性の参加者は未婚者がほとんどである。とてもではないが、子育て中の女性が参加できるようなタイプの研修にはなっていない。これは「男は外で、女は中で」というような日本の「子育て観」を代表しているともいえるし、このようなタイプの研修に出す人を選定する人事サイドの感覚を代表しているとも言える。

子育て中の女性を、どのようにして研修の場に引っ張ってくるか。このような観点から考えたとき、対象を「当該女性1人」として、その上でカリキュラムを編成するよりも(それは従来行われてきたことだが)、対象を「当該女性が所属する家族」としてカリキュラムを編成した方が、マシな結果を生むのではないかという仮説を持つに至っている。例えば、親は親でキャリアアップの研修を受け、子は子でネイチャーキャンプのような泊りがけのプログラムに参加する。夏休みに2泊3日で1回、シルバーウィークの連休で1回、冬休みにやはり2泊3日で1回。これらを通算すれば、大人はまあまあのキャリアアップが図れるし、子どもは新しい友だちとわいのわいのできるだろう。

これを実現するための課題としては、まあ企画側としては大変だけどリソースを投じれば何とかなる。参加する大人と子どもも、大変だけど何とかなる。何ともならないのは、送り出す自治体の人事サイドである。人事サイドは職員育成という名目で受講料や交通費を出すがために「(研修受講中の)子どもの保育代」みたいなものは予算に積んでいない。あるいは、職員を送り出すとしても、それが純粋な「職員のキャリアアップ」とは言えないものだから、そもそも「自治体職員として参加すべき研修」とは認識されない可能性すらある。

ここまで考えて、日本という国は、とことん子育て世代に対して厳しい制度を構築しているのだな、ということを思い知る。子どもを育てる責任を個別の家庭に押し込めて、会社ではその支援は行わない。その結果、子育て中の女性のキャリアアップは阻害され、女性の社会進出のハードルとなる。これを忌避する女性は、子育てを行わない。

研修の中の個別テーマの1つとして「少子化」を取り上げるのではなく、そもそも「少子化に優しい研修」「子育て中の女性に優しい研修」を企画する。それは「子育てお悩み相談」というようなタイプではなく、純粋にキャリアアップに役立つものとして。お金と時間を投じる価値は、十分にあろう。

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