三原じゅん子

モデル年金に関するファクトチェック

先日国会で、安倍首相の問責決議案を提出した野党に対して「愚か者の所業」と罵った三原じゅん子議員ですが、その演説の中で、以下のような発言がありました。

「民主党政権のあの3年間、年金の支給額は、増えるどころか、何と引き下げられていたのです。安倍内閣は全く違います。今年、年金支給額はプラスになりました」

これに対して、毎日新聞が次のような記事で、三原議員の発言内容をチェックしています。

記事の内容は、モデル世帯(サラリーマンの夫と専業主婦)の年金額の推移について、民主党政権時代と安倍政権時代を比較したもので、以下のような比較になっています。

モデル世帯の年金額推移
民主党政権時代(2009年度~2012年度):232,592円→230,940円(▲1,652円)
安倍政権時代(2012年度~2019年度):230,940円→221,504円(▲9,436円)

これを見ると、安倍政権時代の方が年金額の落ち込みが大きいのではないか、と三原議員の発言は誤りであると指摘しています。

しかし、この毎日新聞による「ファクトチェック」も、数字の表面だけをとらえただけで、誤解を招く恐れがあるので注意が必要です。

下の「平成29年版厚生労働白書資料編」の抜粋をご覧ください。モデル世帯の年金額の推移が示されており、その数字は記事で紹介されているものと同じです(何故か1円の誤差がありますが)。2019年度の数字は出ていませんが、2016年度と同じ221,504円で間違いはありません。

でも、表の下に書いてある(注1)~(注3)をよく見て下さい.....って、文字が小さくて見づらいですね。すみません、以下に抜粋したものを見て下さい。

(注1)特例水準の計算式によって算出された給付水準(詳細資料②参照) (夫が平均的収入(平均標準報酬月額(賞与を除く)36.0万円)で40年間就業し、妻がその期間全て専業主婦であった世帯が受け取り始める場合の額) (注2)本来の計算式によって算出された給付水準 (夫が平均的収入(平均標準報酬額(賞与含む月額換算)42.8万円)で40年間就業し、妻がその期間全て専業主婦であった世帯が受け取り始める場合の額) (注3)2014年度額と2015年度額を比較すると減額となっているのは、2015年度については、特例水準の解消により、直近の状況に即してモデルの前提・計算式を改めたことによるもの。

まず(注3)を見ると、2014年度と2015年度にかけて、226,925円→221,507円と5,418円減額となっているのは、計算式を改めたことによるもの、と記述されています。

その計算式の変更というのは、2014年度までは(注1)に記載されている計算方法で、2015年度以降は(注2)に記載されているものに変更されているうことです。

これは簡単に言うと、2003年4月以降は年金額の基礎となる報酬の算定方法が、賞与も含めた総報酬制に変更になったので、それに基づいてモデル世帯の年金額も計算するように変更したのです。

注意しなければいけないのは、実際の年金額の計算においては、2003年4月前とそれ以降の加入期間に応じて報酬月額制と総報酬制を併用して年金額が計算されているので、2015年のモデル世帯の年金額の変動の影響は全く受けないということです。

あと、もう一つ気を付けなければならないのは、2000年~2003年に物価が下落したにも関わらず、年金額をマイナス改定せずに保留した分(▲2.5%)を、2013年~2015年の間に調整したということです。つまり、安倍政権前のツケを安倍政権時に清算したことになります。

結局、民主党政権と安倍政権のそれぞれの期間に係る、賃金・物価変動およびマクロ経済スライドによる改定率をトータルすると、以下のようになります。

民主党政権:▲0.7%
安倍政権:+1.7%

冒頭に紹介した三原議員の発言の根拠は分かりませんが、間違いではありませんね。そして、それを誤りと断じた毎日新聞のファクトチェックには疑問が残ります。

幸いなのは、この記事をきっかけに、2000万円問題のような馬鹿らしい年金制度批判が拡散しなかったことです。メディアにおいては、表面的な数字だけを見て誤解を招くような記事は謹んで欲しいと思いました。いつもそう感じていますが.....(笑)




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