note表紙201601

これからのこと『マチネの終わりに』

あけましておめでとうございます。
人形を作り、それをつかった写真作品を作っているサイトウタカヒコです。(Portfolio Website:http://saitotakahiko.strikingly.com)
今年もよき人形、作品をつくり、ご覧いただければと思います。

また、物語も終盤になっている毎日新聞・note上で連載している平野啓一郎さんの新作小説『マチネの終わりに』との連動企画に参加しており、春にはその企画展示も予定されております。ただ写真の作品人形は『マチネ~』とは関係ありません。すみません。。


(↑現在制作中の人形は、いままで作った中ではおそらく最高齢。)

…『マチネの終わりに』は40代へとさしかかかる男女の物語ですが、
私自身は30代になり、日々過ごしていると気づきはしませんが、
「これからのこと」であったり、「こうできたであろう」過去の分岐点のことを20代の一年間よりとくに考えることが多かったかと思います。

自分の年齢の2桁目の数字が変わるだけで、これだけメンタルに変化が起きるとはふしぎなものでした。…ただ、今回の平野さんの小説の連動企画に参加させていただき、40代の人生を生きる蒔野や洋子の姿を読むこと、また制作のため読み解こうとしてきたことも、そのきっかけの1つであったかもしれません。

…人形を作り始めたころ、その前に映像や演劇の世界に身を寄せていた私は
人形に「物語」(過去)を‟持たせたい”と思っていました。
大好きだったアウグスト・ザンダーの肖像写真や、キャパの報道写真のような
写真の人たちから湧いてくるたどってきた過去や、見えない感情を。

また人形をのせる台座は、登場人物にとっての「舞台」にはできないか。
そうすると、もっともっと広い世界が人形自体にも、見てくれる人にも
その前に立ちあがってくるのではないかと思ったのです。

去年制作した「天文台技師の退職」The Retirement of an Astronomical Observatory Staff(2015)

…いま、春先からはじまった『マチネの終わりに』は最終章へと移り、小説の登場人物たちはそれぞれにたどってきた「過去」への答えをようやく見つけ出して、いま立っている地点からの「未来」へ進もうとしています。

自分の人形にも「過去」を″持たせること″だけでなく、
そのさきの「未来」を人形が″持つこと″も
作品の完成には必要なのことかもしれない
書いてしまえば当たり前なのかもしれませんが、
あらためてそれを意識して作ることができるか。
人形だけでなく、これからのいろいろなことのために。

・・・人形を作り始めて、3、4年経つなかで
ふと、そう思う新年の数日でした。

(↑・・・なにかが血迷ったのではなく、もう一体できるであろう人形との
構成を確認しているところ。 )

◇ちなみにすこし前にはなりますが、『マチネの終わりに』8章(9)にでてくる…「フィリップは、唐突に、自分の人生を、一つの風景として眺めさせられているかのような顔つきになった。そして、何か言おうとしていた。」
・・・という一節がとても好きです。

#マチネの終わりに


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