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「写真と文学」 - 世界を視るメディア

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2017年初夏からインプレス社刊行のデジタルカメラマガジンにて連載していた12回分の記事をまとめたマガジンに、その後似たようなテーマで書いた文章を追加してます。
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2019年2月の記事一覧

写真と文学 第四回「多重露光、あるいは時の積層としての写真」

写真と文学 第四回「多重露光、あるいは時の積層としての写真」

世界は多重露光で出来ているのではないか。いや、それは言い過ぎだとしても、世界を見ている我々の視線、あるいはその記憶は、多重露光的に構成されているのではないか。そんなことを思ったのは、マーク・トウェインの自伝的旅行記である『ミシシッピの生活』の中のある一節を、大学生のときに読んで以来のことだ。本の中でトウェインは、かつて自らが蒸気船の「水先案内人」として船頭したミシシッピ川を、20数年後に小説家とし

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写真と文学 第三回「光と闇で構成された都市の二面性」

写真と文学 第三回「光と闇で構成された都市の二面性」

 高層ビルから見下ろす都市の夜景は、普段地上で見ている世界とは違う美しさを見せる。光が満ちあふれ、ビルは輝くバベルの塔のように、世界にその虚栄を誇る。人工光の力は、人間の文明が作り出した「新しい風景」の1つだ。だからこそ、夜景を見たとき、我々の心が躍る。1つ1つの光の下で、大事な家族が健やかに生き、かつて別れた恋人が新しい恋を見つけ、離れ離れの同級生たちが元気にやっていることを想う。夜景写真は我々

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写真と文学 第二回「逆光がもたらす見えないもののドラマ」

写真と文学 第二回「逆光がもたらす見えないもののドラマ」

 2016年に最も世間の話題をさらったエンターテイメント作品といえば、新海誠監督の映画「君の名は。」だろう。そのキービジュアルは2人の主人公である立花瀧と宮水三葉の2人が、太陽と流星を背に描かれているシーンだ。

宣伝で多用された最も有名な1枚だろう。この1枚以外にも、「君の名は。」の多くの映像には共通点がある。逆光が多いのだ、それも非常に。映画全編に渡って、新海誠監督は朝焼けや夕焼け、強い光源を

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写真と文学 第一回「そこに風の歌は聴こえるだろうか?」

写真と文学 第一回「そこに風の歌は聴こえるだろうか?」

【承前】
 次回からはこの前置きはなしでいきなり本文に入りますが、noteで初のマガジンを作ります。12回完結です。内容は、2017年から2018年まで、一年間、「デジタルカメラマガジン」で連載した「写真と文学」という記事の全文公開です。デジタルカメラマガジン編集部及び出版元インプレスさんの理解を得て、この12回分の連載記事を公開することが可能になりました。
 この文章、僕にとっては多分、これから

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