マガジンのカバー画像

「写真と文学」 - 世界を視るメディア

34
2017年初夏からインプレス社刊行のデジタルカメラマガジンにて連載していた12回分の記事をまとめたマガジンに、その後似たようなテーマで書いた文章を追加してます。
運営しているクリエイター

2019年5月の記事一覧

写真と文学 最終回 「世界の断絶と写真という小さな窓」

写真と文学 最終回 「世界の断絶と写真という小さな窓」

大学での最初の授業のことをいまだによく覚えている。広い構内の南東にあった教室は年月を経た建造物特有のカビと木の懐かしい匂いで満たされていて、小さな窓から斜めに入る光が舞い上がる埃を輝かしく照らしていた。それは新しいデジタルカメラで撮影された、とても古い写真を見ているような光景だった。目の前のすべてはクリアに存在しているのに、その光景はどうしようもなく遠く懐かしいという不思議なアンビバレント。その教

もっとみる
写真と文学 第十一回 「パラレルワールドと認識の拡張」

写真と文学 第十一回 「パラレルワールドと認識の拡張」

 1995年、「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」という目を引くタイトルの映画が公開された。もともとはテレビのオムニバスドラマの一編だったが、あまりにも出来が良かったために映画として翌年公開されたという逸話が残っている。

監督は映画「Love Letter」でその名を日本中に知らしめた若き岩井俊二だった。この2本の映像作品をきっかけとして岩井俊二監督が頭角を現したというのは、映画ファン

もっとみる