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新著『最高の一枚を写し出す写真術』第五章、全文公開します!

二回目の「全文公開」をやります。前回は全体のテーマを語る序章の公開でしたが、今日は「都市夜景」に焦点をあてた、チャプター5の公開になります。他にも公開候補はいくつか考えたのですが、最近の僕の都市夜景写真には、僕自身が都市を、あるいは世界をどうとらえているのかが、写真の中に色濃く反映されているので、これが良いかなと。もし読んで気に入って頂けたら、ぜひとも新著ご購入ください!

前回の序章の全文公開をまだ未読の方がいらっしゃったら、ぜひともまずそちらから見ていただけるとハッピーです。それを踏まえての個別の内容になってます。

この「序章全文公開」に関しては、当初は効果あるのかすごく不安だったのですが、実は売上かなり伸びました。著者だけが見られるAmazonの詳細なランキングがあるんですが、序章の全文公開日である1月8日を境にしてランキングが前日までの約800位から91位まで上がってるんです。その勢いは約6日間もそのまま続きました。これはかなりすごいことです。

というわけで、少しその勢いも収まってきたので、今回はチャプター5を公開をいたします。ぜひご一読ください。観念的な序章に比べると、ぐっと具体的になっています!

ではここから、第5章の全文公開です!

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CHAPTER 5
大都会の光と闇を紐解く

無数の人々がひしめき合って生きる、大都会。そこには、明るく華やかな舞台もあれば、暗く陰鬱な舞台もあります。人々の光と闇は、そのままハイライトとシャドウとなって、写真に凄みを与えます。生命を宿して大きく蠢いているかのような、「大都会を形成する何か」を紐解いていきましょう。

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都市の光と闇

(区画によって見事に光量が分かれている。光量の多寡は、都市自体の生産性の現れであり、そこに生きる人々の社会の現れでもある。)

強い光が生み出す、
強い影を捉える

 19世紀末頃、いわゆる「大都市」が徐々に形成されました。工業革命により鉄や鋼が安定して生産できるようになり、インフラに鉄道がもたらされ、都市の建設は鉄筋に変わりました。摩天楼が現出したのは1880年代のアメリカのシカゴであるとはよく言われるところです。技術革新により天を衝くビルが立ち並ぶ大都会が生まれました。電気によって光り輝く都市ができ、それが新たな「観光資源」になり、人間の生活と精神を大きく変えました。強い 「光」は同時に濃い「闇」を生み出します。その光と闇を描き出すことこそ、都市夜景を撮影する上での醍醐味だと思っています。

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【INSPIRATION】
輝く美しいだけの都市は「物語」を生み出さない

(光が強ければ、闇も強くなる。夕焼け特有の柔らかさはより繊細なコントラストの調整が必要になってくる。グラデーションを意識して仕上げよう。)

垂直の光が上からガンガン当たる快晴の日の昼間ほど、影は色濃いものです。それは、写真を撮っているみなさんなら、よくご存知のことでしょう。都市が生まれたとき、 我々人間は都市の光と同時に、濃い影も生み出しました。光が強くなれば、影もまた濃くなります。だから、都市を撮るときの「物語」は、長秒露光やHDRで描き出すキラキラと輝く都市夜景だけでは収まりきらないんです。都市の物語は「光と影」を意識することで成立します。光が激しく瞬くならば、 影もまた濃くなければいけません。その相克を描き出すことが、都市の写真に意味をもたせることになります。

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【SHOOTING】
光と闇をブロックで分けて見る

上の写真は、個人的に僕が気に入っている夜景写真の1枚です。さらにその一枚上の写真が現像前の写真ですが、これを撮ったとき、大通りによって都市が3つのセクションに隔てられていることがよくわかりました。右下の暗い部分、真ん中の幾分暗い部分、そして左上の明るい部分。この「断層」こそが、都市の断層であり、生活の断層であり、無慈悲なほどに人を隔てる光の濃淡でしょう。そのことを意識したとき、都市夜景の「構図」を決めることの基本的な戦略が見えてきます。単にランドマークを中心に構図を整えるとか、キレイな部分を切り取るのではなく、この空間に満ちる光のグラデーションこそが、「都市の顔」そのものであって、それが都市夜景の写真に「物語」を与えるのです。

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【RAW TECHNIQUE】
光と闇の差をつけて繊細に現像する

 闇を闇として、光を光として描き出します。ビル群を引き立てるのに明瞭度とシャープネスの調整は重要です。 ただし、やりすぎてガチガチにすると都市の「繊細さ」も失われるので注意が必要です。また、光と闇を生かした現像を心がけるわけですから、グラデーションをなくしすぎないこと。コントラストの処理、とくに光度差をきっちりつけることでクリアな光と闇を浮き上がらせます。主役だけを強く出して、他はむしろマイナスに沈ませる方向で処理します。その際、画面の中の色で区分けするとわかりやすいと思います。

ここでは都市夜景を中心に解説していますが、東京タワーの写真など、都市夕景でも同じような発想で処理します。

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《グロテスクな都市》

都市の不気味な迫力を引き出す

 都市は、人間の生活が最大限に効率化された存在です。人間の進歩の集合体とも言えます。ですが、それによって失われたものがあります。我々は最高度の「便利さ」と引き換えに、多くのものを失いました。良いとか悪いとかそういうことではなく、それこそが「都市のもたらしたもの」である以上、その都市の不気味な迫力を出すこともまた、都市夜景写真の魅力の1つです。上から見たとき、「これが人の作ったものなのか」と改めてそのグロテスクな側面を強調するような写真もまた、都市写真の語る「物語」の魅力です。下の写真などはその典型です。
 川や高速道路の蛇行を入れることで、密集地を狭苦しく縫う毛細血管のような細かさがさらに強調され、不気味な迫力を醸し出します。

(大きく湾曲する高速道路のカーブや、蛇行する川の存在のため、かえって無機質な都市の直線と密集具合が引き立つ。超望遠で圧縮すると、その情報量にめまいを覚えるほどだ。)

【POINT】
わずかな余白を入れて密集感を強調する
 グロテスクな密集感は、超望遠の圧縮効果で作る。ただ、 密集感に囚われて寄りすぎると、かえって迫力が損なわれる。見渡す限りの広々とした空間を意識させるために、写真上部にわずかに空を入れることで、「地上部」の密集感が対比される。

(空を入れないために、スケール感が失われる例。また、色彩も強いので、密集感よりも散らかった乱雑な感じが強調されてしまう。)

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《都市の血液》

道を見ることで都市の骨格が見える

 人が作った都市は、まるで人の顔のようにコロコロと表情を変えます。人が生きるのに血を必要としているように、都市もまた血を必要としています。都市空間を成立させるもう1つの重要な要素は、「道」です。道はインフラの基盤であり、そこに物流が動くことで、都市は生き始めます
 全体の彩度を下げて、都市の道の色であるオレンジ色だけを強調することで、都市の命がどこに宿っているのかを強調しました。レントゲンに写る人間の骨のように、都市を這う道を見ていくと、都市の血流や骨格が見えてきます。

(都市の主役は巨大な建造物であるのは確かだが、道路のオレンジだけを取り出すと、あたかも隠された地図があぶり出されてきたかのように、都市の本当の性格が見えてくるように思える。)

【POINT】
各色の彩度を細かく調整する
 固有の色だけを強調するには、彩度全体ではなく、カラースライダーのHSLのセクションで、全体のバランスを見ながら各色の彩度や輝度を調整する。その上で、コントラストの調整を中心に、道の明るさがより強調されるよう全体を整える。

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以上、新刊のチャプター5「大都会の光と闇を紐解く」の全文でした。序文と合わせて読んでいただくと、この本が「物語」をテーマに、各被写体をどういう風にして構図化していくかということを書いた本であることが、大体おわかりいただけると思います。お気に召していただいたら、ぜひとも下記よりご購入いただければ幸いです。

この章は夜景でしたが、他にも飛行機、花火、蛍、天の川、地元、京都、ドローンといった、風景のメインジャンルを横断しつつ、今回はなんとポートレートのセクションも設けています。「風景写真が撮るポートレート」の文章というのは、あまりまだ存在しないんではないかと思います。ぜひとも皆さんにお目通しいただければなと思います。

そして今回も投稿企画「#推薦図書 」と「#noteでよかったこと 」に参加させていただきました。自分で自分の本を推薦しちゃのもあれなんですが、まあそこはアメリカ人気質を出していこうかなと。

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別所隆弘 / Takahiro Bessho

フォトグラファー。アメリカ文学研究者。滋賀、京都を中心とした”Around The Lake”というテーマでの撮影がライフワーク。インスタはこちら: https://www.instagram.com/takahiro_bessho/

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