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つづみ 〜 君が教えてくれた歌 【251/200】

嫉妬するほどの才能に出会った時、もはや僕は、隠す必要などないと思っている。

素晴らしいものは素晴らしい。



2023年10月21日(土)、練馬familyの昼公演。

シンガーソングライター“つづみ”の初のワンマンライブ。

1st mini Albumのレコ発でもあり、盟友“梨菜”と結成したユニット「晴れのち桜」のお披露目的なライブでもある。


【第一部】
1. Departure
2. ライナー
3. 金木犀
4. 花が咲く頃
5. 6月の雨
6. タリナイ
【第二部】
7. 灯-あかり-
8. はじまりの歌
9. 背中
10. 朝が来る街
【第三部】
11. 春
12. fruits
13. 幸せのステップ
14. 君に歌を
15. ここから
【アンコール】
16. stand by me

2023/10/21 @練馬family


初めてのワンマンライブとは思えない落ち着きを見せながら、柔らかく、優しく、聴衆の心の中にしたたかに入り込み、癒しで満たしてゆく。透明度の高い唯一無二の声で、客席を次々に笑顔に変えてゆく。

ああ、この混じり気のなさがつづみのステージなんだよな、と、安心してライブに入っていくことができた。

今回のライブは三部構成で、一部はソロ弾き語り、二部は梨菜とのユニット「晴れのち桜」としてのステージ、そして三部は再びソロ弾き語り、という構成だった。

時間にして2時間弱。
本人は「長丁場になるので」と言っていたが、体感的にはとても早く感じた。

弾き語りでのワンマンライブを飽きさせない、というのは、簡単なことではない。
でも、つづみの初ワンマンは飽きることなく、あっという間に終わった。
それはなかなか、すごいことだと思う。



一部で印象に残ったのは、やはり『タリナイ』だ。

リリースされたミニアルバムにも収録されているが、彼女はMCで意外にもこう言った。
「実はこの曲がそんなに好きではなかった」と。
今回のアルバム制作を通じて、加治良浩氏のアレンジのおかげでいい曲だと思えるようになった、と。

僕は、彼女と初めて下北沢LOFTで共演した時、カーテン越しの楽屋スペースでこの『タリナイ』を聴いて、思わず客席に出た。
その時の僕は、「一回聴いたら口ずさみたくなる曲」「一度聴いたら覚えてしまう曲」を書きたい、そのためにはどうしたらいいのか、とずっと考えていた。

静かで優しいアルペジオに乗せてリフレインされる「足りない」というメロディ。

ああ、こういうことか、と思った。
僕の悩みの模範解答を、目の前で二周りも年下の彼女が歌っていた。

改めて、本当にいい歌だと思う。

今もCDで聴きながらこれを書いている。



新結成されたユニット「晴れのち桜」の相方、梨菜を呼び込み、2人でのパフォーマンスとなった二部。

ユニット結成前のツーマンライブでふたりが共作した『灯-あかり-』、そして、ユニットとして初めて書かれた『はじまりの歌』と続く。
柔らかく包み込むようなつづみの声と、芯の通った強さと温かさを兼ね備えた梨菜の声。
ユニゾンも、ハーモニーも、グッドメロディに乗って心地よく心に沁みてゆく。

つづみがギターを置いて、ハンドマイクになった。
梨菜のピアノに乗せて歌い出したのは、『背中』だった。

実はこの曲は、僕がつづみから依頼を受けて書き下ろし、3週間前くらいにデモ音源を送ったばかりの曲。

今振り返ると9/24だったようで、奇しくもつづみと僕がツーマンライブをやった1年後の日付だった。

特に意識をしていたわけでもなく、デモが完成したタイミングが奇遇にもその日だった、ということ。

つづみからの依頼を受けて、いろいろ悩んだ結果、僕は“僕自身に歌ってほしい曲”をコンセプトに書いた。
つづみの声で放たれる「おつかれさま」という言葉を、聴いてみたかった。
あの伸びやかな歌声で、ロングトーンをしっかり聴いてみたかった。
そしてそれはきっと、僕ら世代の人たちに、大きな癒しをもたらしてくれるだろうと。

案の定、というか、想像を遥かに超えて、つづみの歌う「おつかれさま」は優しかった。
サビの美しいロングトーンは、深い癒しを与えてくれた。
この素晴らしい記念すべきライブのセットリストにこの曲を混ぜてもらえて、僕はとても嬉しかった。


二部の最後は、アルバム収録曲『朝が来る街』
MCで語った、過去に住んでいた街への想い。その街で共に過ごした友達のこと。
歌唱が不安定になり、堪えきれない涙が滲んだその理由は、おそらく会場に駆けつけてくれたその友達たちへの想いだったのだろう。
客席内でいくつもの肩が震え、息を呑む音が聞こえた。




再びソロに戻り、三部。

姪っ子への思いを込めた『春』、かわいらしく爽やかなポップソング『fruits』、家族や生活をテーマとした『幸せのステップ』と続き、「残り2曲」というMCに沸き起こる「エー!」の声に、彼女は顔を赤らめてはにかんだ。

普段は語らない家族への想いを語り、彼女が音楽活動を始めた想い、そして、胸に抱き続けている大切な「君」への想いを、爽やかなメロディに乗せて軽やかに歌う『君に歌を』

ちゃんと抱えて生きれるかな
私、これから

つづみ『君に歌を』

最後の曲は、僕の予想を裏切り、新曲だった。

『ここから』というタイトル。

『君に歌を』の「私、これから」に呼応する楽曲なのかもしれない。

歌い出しからワンコーラスを聴いて、驚いた。
これまでの楽曲よりも明らかに一段上のクオリティだったからだ。

AメロからBメロ、サビへの展開が、冗長さを排除した理想的な展開で、これまでのつづみ楽曲のサビを飾ってきたようなメロディがBメロに使われ、さらにその上にとどめのような強いサビが押し寄せる。
ギターを弾くこともやめ、アカペラで歌われた最後のサビは、彼女の内に秘めた強い意思を十分に解放していた。

僕はまた ここから 夢を見てもいいかな
何もない僕に夢をくれたのは 君の歌

つづみ『ここから』


彼女が初めて書いたという『Departure』で始まったライブを、大切な人たちへの想いを伝えるというテーマで貫き、新たな出発を宣言する最新曲『ここから』で締めくくる構成に、脱帽した。

アルバム制作、ユニットの結成、初のワンマンライブ、それだけで恐ろしいほどのエネルギーを必要とするわけだが、その中で、過去一と言える衝撃を与える新曲を書き下ろしてきた。

正直、ここまでのクオリティのライブだと想像していなかったし、とても初めてのワンマンライブとは思えなかった。

当然の如く発生したアンコールに応えて、最後は明るく、ということで『stand by me』を披露し、つづみの初ワンマンライブは幕を閉じた。
(僕はこの『stand by me』が本編の最後の曲だと予想していたわけだが、素晴らしい裏切りにあってしまった…)



素晴らしいライブを観た後は、しばらく音楽を聴きたくなくなる。

まさに、そんなライブを観せてもらった。

ライブ中、つづみは「自分には何もない」「たくさんの人たちから教えてもらった、書かせたもらった歌」と語った。

紛れもない彼女の本心なのだろう。
それこそ、つづみの「混じり気のなさ」「完全なるジュブナイル感」という魅力の源泉なのかもしれない。

彼女が音楽活動を始めてから「ここまで」のすべてを詰め込んだライブ。

つづみの楽曲に何度も登場する「君」と「僕」の物語が、たくさんの人たちを巻き込んで、確かに前に進んでいる。

もう、何もない少女はここにはいない。

差し伸べられた手を握る勇気こそ“強さ”だと知ったシンガーが、ここにいる。

“ここまで”のすべてをさらけ出し、“これから”も歌い続ける決意を心に刻み、もう一度“ここから”歩き出すことを伝える。

このライブは、そういう意味の詰まった空間だった。

少なくとも僕には、そう感じられた。



つづみとしても、梨菜との「晴れのち桜」としても、これからの活動が楽しみだし、もっともっと多くの人たちに彼女の(彼女たちの)歌を聴いてもらいたいと思う。

その応援をしつつ、僕は僕でもらった刺激を自分の作品やライブのクオリティに活かし、音楽活動仲間として、一緒にがんばっていきたい。

そして、また来春あたり、一緒にステージに立って音楽を奏でる機会を持てたら、と考えている。



つづみちゃん、今日は本当におつかれさま。

ここからまた、君が夢に向かって歌う姿を、応援していきます。




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■ ヤマカワタカヒロのWork
<音楽活動>

《New Release》



《歌の写真集》


《ライブ・イベント予定》
■11/5(日) the Brand-new Amsterdam

 @下北沢Breath 昼公演「free as a bird」 Open12:00 Start12:30
【料金】3,100円(1drink付)
【出演】
 1. サイダーパレット 12:30 - 13:00
 2. 行方不明 13:10 - 13:40
 3. モンズリーズ 13:50 - 14:20
 4. the Brand-new Amsterdam 14:30 - 15:00


■11/18(土) ヤマカワタカヒロ弾き語り
【会場】下北沢LOFT  Open18:30 Start19:00
【料金】2,600円(1drink付)
【出演】村上たいが/みづき/ヤマカワタカヒロ/柴田ヒロキ
  ※ヤマカワタカヒロは20:20頃からの出演予定


<チケットご予約>
 the.happy.reminder@gmail.com
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