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TOKYO UTOPIA

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余白を余白のまま価値とする。モノに溢れた現代においては、そんなことが可能だと思う。光と水、香り、音、そして触れること。そんな簡単なものだけで、求めている世界は作れるのかもしれない… もっと読む
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2019年7月の記事一覧

裏側まで見通せる真っ白な建築

神奈川県の横須賀市、観音崎公園内に「横須賀美術館」という美術館がある。東京からどうやっていくのか忘れたけれど、電車とバスを乗り継いで少し遠いところにあった。それほど大きくない美術館で、疲れない程度に見て回るにはちょうどいいサイズ。家族連れも多い。 設計は山本理顕。個人的には日本と欧米を掛け合わせたような控えめな建築が好きなんだけれど、無機質ながらも嘘のない山本理顕の建築はとても好きである。一番の特徴なのかわからないが、美術館の屋上がとにかく広くて開放的で(上の写真)、そこへ

遠くに見える、あいまいな境界線

ゴールデンウィークの北海道は我が儘だった。2年前に訪れた時には25度以上の気温で、お昼にはTシャツでも暑いくらいだった。ところが、今年は寒かった。天気がパッとしなかったし、僕らが山奥を目指したのも関係しているが、層雲峡にはまだまだ雪が積もっていて、朝の気温はなんと3度だった。 はじめて訪れた洞爺湖も肌寒かった。写真の通り、湖と空の区別がつかないような曇天で、本当はこの先に小さな中之島があるんだけれど、一切見えなかった。とにかく霧がひどくて、湖を訪れるまでの道は視界が数十メー

なぜこの駅が好きなんだろう

昨日も書いたように、移動自体が目的になるような旅があれば面白いと思うのだけれど、その駅自体が楽しみで電車に乗るってのもの悪くない。その一つが日立駅だった。妹島和世による設計で、建築好きにも海好きにもたまらないであろうこの駅には、全面オーシャンビューのカフェもある。 僕は茨城へ行くついでに、足を伸ばして、日立駅まで行ったのだけど、疲れ果てていたことと帰りの電車が1時間に1本くらいしかなかったので、改札を出て、景色を眺めて、そのまま電車に戻った。往復数千円をかけて、この景色を数

海が見える座席に座るため。

7月の一番大きな仕事でもあった、とある紙媒体の校了(編集チェックを終えて印刷に回すこと)を終えて、帰っている。 (noteもそうだけど)作って公開するだけのウェブ記事とは違って、最終OKを出したら、もう後戻りはできない。印刷が始まる。もちろんウェブだから手を抜くということはないが、やはり校了する時には独特の緊張感があるものだ。 さて、特集に取り組んでいるうちに関西は梅雨明けしたようで、東京でもこのところ雨は降っていない。夏はもうすぐそこだ。 水を眺めるのが大好きなので、

空を見上げてリセットをする。

いつの写真だか正確には思い出せないが、どこからか羽田空港へ向かう機内からの写真である。自由なタイミングでトイレに行きたいので、海外便では基本的に通路側を取るのだが、時間の短い国内便、特に朝夕の時間帯だと、空を見るために絶対に窓際の席を取ることにしている。ぼくは空が好きなのだ。 仕事柄原稿を書くことが多いので、どこかの場所にこもってパソコンとにらめっこしている時間が日中のほとんど。だが、集中力が持たない。だから、頻繁にカフェを出て、ひたすら歩く。空を見上げる。何も考えずに歩い

或る土曜日の決意表明

ソウルから帰国し、品川駅でJR線に乗り換える。夜の10時過ぎ、突然の満員電車へ、無理に乗り込もうと身体をねじ込む不機嫌なサラリーマン。車内から若い女性の小さな悲鳴が聞こえた。ぼくはすぐにイヤフォンで耳を塞ぐ。 いつから東京はこんなに息苦しくなってしまったのだろうか。普通に街を歩くだけでも苦しくて堪らない時がある。生きている心地があまりにしない。都市に生かされているという気さえする。もしかすると、もっと昔から東京はこうだったのかもしれない。 東京という街が悪いのではない。時