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TOKYO UTOPIA

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余白を余白のまま価値とする。モノに溢れた現代においては、そんなことが可能だと思う。光と水、香り、音、そして触れること。そんな簡単なものだけで、求めている世界は作れるのかもしれない… もっと読む
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#旅行記

遠くに見える、あいまいな境界線

ゴールデンウィークの北海道は我が儘だった。2年前に訪れた時には25度以上の気温で、お昼にはTシャツでも暑いくらいだった。ところが、今年は寒かった。天気がパッとしなかったし、僕らが山奥を目指したのも関係しているが、層雲峡にはまだまだ雪が積もっていて、朝の気温はなんと3度だった。 はじめて訪れた洞爺湖も肌寒かった。写真の通り、湖と空の区別がつかないような曇天で、本当はこの先に小さな中之島があるんだけれど、一切見えなかった。とにかく霧がひどくて、湖を訪れるまでの道は視界が数十メー

沈みゆく夕日を眺めるための場所

 今日は今年最後の日記を書いてみる。以前、誕生日でもある元旦には毎年鎌倉へ朝日を見に行くということを書いたけれど、もちろん来年もそのつもり。一年の最初の日の出はなんとも気持ちがいい。  そんなわけで年末最後に何を書こうかと思案し、やっぱり年始が朝日なら年末は夕日だなと思った。夕日を見る場所もいろいろあって、個人的には日本最西の佐賀県から沈む夕日を眺めてみたいのだけれど、まだ行ったことがない。他にも千葉の房総半島から眺める夕日もすごく綺麗なので、これはまた来年どこかで紹介する

教えたくない、大都会の憩いの場

 誰にだって、人には教えたくないような場所がある。特に東京に住んでいると、週末出掛けた先でカフェが見つからない・・・・なんてことがよくあって、そんな時に「人には教えたくないけれど、くつろげる空間があるんだよなあ」という話は是非とも知りたいもの。  でも、当たり前だけど、そんな貴重な憩いの場を喜んで人に教える人は少ない。雑誌に掲載されている「穴場スポット」はすぐに人でいっぱいになるし、好きだった定食屋がテレビに取り上げられると、たちまち行列ができたりする。悲しい。  フリー

みんながカメラを向ける反対側

 今年はクリスマスにあわせて、週末に丸の内でディナーを予約した。別にクリスチャンではないけれど、世の中がウキウキしているとなんだかこちらも合わせたくなるのが人の常。僕ら夫婦は日本らしくない落ち着いた街並みが特徴の丸の内が大好きで、日比谷から東京駅までの長い道のりを何度も歩いたりする。  そんな散歩コースの最果てにある東京駅も大好きなスポット。すでに有名観光地となっている東京駅だが、日本がほこる建築界の巨匠・辰野金吾による設計で、2012年に全面修復が完了したばかり。  こ

どうしても南国が好きになれない。

 僕は暑いところが苦手だ。反対に寒いところが大好きで、冬になると北海道や北欧へ行きたくなる。冬だからといって南国にバカンスを求めたことがないし、今年の夏なんか最初は冬を求めて南半球へ行こうかと思った。  そんなわけで、沖縄には3〜4回しか行ったことがなくて、リゾートらしい離島に限っては宮古島の1度きり。しかも高校の卒業旅行で、当時も暑いところが苦手だった僕は同じように沖縄にあまり興味のない友達とずっと楽器屋で遊んでいた記憶がある。今思えば勿体無い。  しかし、先日仕事で沖

「なくなりゆく建築」について考える

 高度経済成長にともなって次々と生まれた昭和の名作建築が危機に瀕している。完成からおよそ半世紀、多くが老朽化を理由に取り壊されたり、建て替えられたりするのである。  坂倉準三による「札幌パークホテル」もその一つで、ホテル併設型の大型展示場への建て替えのため、2020年には工事が着工する。ここは天皇陛下が宿泊されることでも知られる老舗ホテルだったので、なんだか悲しいものだ。  札幌で言えば、近くにあった黒川紀章建築の札幌大同生命ビルがすでに解体されて更地になった。ここにあっ

水面に浮かぶ琵琶湖の美術館

 昨日から仕事で滋賀に来ている。琵琶湖をのぞむ温泉街だ。滋賀といえば、やっぱり琵琶湖で、どうしても水の印象が強い。そんな滋賀にぴったりだと感じたのがこの佐川美術館だった。  琵琶湖のすぐ近く、1998年に佐川急便創立40周年を記念して開館した美術館で、日本画家・平山郁夫などの日本美術をメーンに扱う。美術館の敷地のほとんどが水庭になっていて、まさに水に浮かぶ美術館。  しかも、この美術館には巨大な地下展示室がある。こうして水の中に潜っていく感覚が面白い、とてもいい建築だと思

アートも建築も、実はもっと近くにある

 どこかへ出かける際、必ずその土地の有名な建物や建築物を調べてしまうほどには建築好きを自負しているのだが、アートも建築も、思っているよりも意外と近くにあるものである。  そう思うようになったきっかけの一つは表参道駅だった。上の写真は地下鉄からアップルの向かい側へ出るエスカレーターを上がったところなのだが、この建物は実は丹下健三・建築の旧青山大林ビル跡地(現オーク表参道)らしい。  そして、ここに天井から細長く伸びる金属の作品があることを知る人は意外と少ないかもしれない。こ

夕方の大阪港へと抜ける贅沢な道

 いくつか仕事があって今日から数日間大阪へ帰る。大阪は僕が18年間過ごした場所にもかかわらず、高校時代はどうしても学校の周りで遊ぶことしかなく、意外といろんな場所を知らないものだ。特に観光スポットへはほとんど行ったことがない。  今年の夏にロケハンで大阪をウロウロすることがあって、ほとんど初めて海遊館あたりをくまなく歩いた。海遊館の裏には大阪港が広がり、夕日が見られる観光スポットとして、人気を集めているらしい。それでも、海遊館の表側に比べると人通りは少なく、デートにももって

気軽にいけない神聖な場所

 昨日トマムの「星野リゾート」に行った話を書いたが、実は結婚式場を探す一環でここを訪れたのだった。何を隠そう、ここには安藤忠雄建築の「水の教会」がある。  最近では教会での結婚式も一般化したために、意外と馴染みあるものになっているかもしれないが、本来教会とは誰でも簡単に入れる場所ではない。キリスト教徒が祈りを捧げる場所なのであって、ここで結婚式を挙げるのであれば、本来は教会に長い期間通って許しを得なけれないけないということはあまり知られていない。  そんなこともあって、一

まっしろな朝食会場と、氷点下の露天風呂

 昨日翔子ちゃんが「朝食会場がリッチなホテル最高」というツイートをしていたが、本当にそうだと思う。日本には海外のようなリゾート気分を味わえる朝食会場ってあんまりないのだけれど、窓から日本らしい個性豊かな景色を見ることができるホテルってすごくリッチで好きだなあと思う。  そういう視点でいくとやっぱり「星野リゾートトマム」は最高だった。天井が高くて、外は一面雪景色。こんな中で味噌汁を飲むなんて、なんかもう溶けて無くなりそうな幸せだ。  雪景色を見ようと2月に訪れたので、外界の

森林公園の紅葉と、屋台の豚汁

 東京の秋は短い。温度が上がったり下がったりしながら、街路樹が紅葉していると思ったら、次に見たときにはもう枯れているなんてこともある。今年は特に寒暖差が激しいからか、結局紅葉を見れずじまいで冬を迎えそうだ。  ちゃんと紅葉を見にいったのはいつだっけと思い返すと、2年前の秋に森林公園に行ったのだった。森林公園へは東武東上線の快速に乗って池袋から約1時間。まさに僕の得意とする週末日帰りができる郊外の観光スポットだ。駅から公園まではバスが出ている。  森林公園はとにかく広い。東

電波の通じない場所を求めて

 昨日は大規模な電波障害にまんまとやられ、ろくに連絡が取れないが続いた。全く仕事ができない時間があって、その間いつからこんなに電波に依存するようになったのだろうとあらためて考えていた。  僕が小学生中学生の頃は電波状況が今ほど良くなくて、メールを受け取るために何度もセンター問い合わせをしたし、ちょっと車で山間部へ行くとすぐに携帯が圏外になった。和歌山にあるおばあちゃんの家に行く時も、「最近この辺に基地局ができて電話が通じるんや」という話をよく聞いた。地下鉄に電波が通じたのな

昼下がりの日差しを浴びる美術館

 火曜日あたりから急に暖かくなった。今日になってようやく寒さが戻ってきたが、12月だというのに温帯低気圧のせいで20度を超えた。異常気象だ。  そんな温かい日には、いい日差しの入るテラスでゆっくりしたいものである。とはいえ、都内はどこも人が溢れているし、眺めが良くないからとテラスでの日光浴を諦めがちだが、そんな人にぜひ世田谷美術館をオススメしたい。  テラスのある美術館は数多くあるし、郊外へ行けば行くほど眺めも良くなるものだが、世田谷美術館は僕にとってなぜか「日差しを浴び