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サブスクの本当の可能性は「プロダクトがメディアになりうる」ことにある

 「ホテルはメディアである」。

 ホテルプロデューサーの龍崎翔子ちゃんが言い続けている言葉です。出版社で編集・執筆をしていた自分にとって「メディア=(ウェブや紙などの)媒体」という固定観念があまりにも当たり前になっていて、「メディア=何かと何かをつなぐ媒介」だという大事なことを思い出させてくれた言葉でした。

 最近「プロダクトがメディアとしての側面を帯始めている」ということをしきりに感じます。コミュニティーが趣味嗜好によって細分化され、思想をベースに繋がれる時代に、メディアはそうしたコミュニティーと共にあるべきものだと思うのです。だとすれば、コミュニティーに通ずる思想を反映したプロダクトというのは一番のメディアになりうるのではないかと。

 ちょっと抽象的すぎるので、具体例を示します。阿部成美さんが始めたyasaiccoというサービスがあります。「旬のリズムを生きていく。」をテーマに、毎週旬の個性豊かな野菜たちを届けるサブスク型の八百屋サービスなんですが、阿部さんが選んだ愛のある野菜が毎週届くわけです。

 規格化によって愛を失った野菜を栄養補給のためだけに機械的に食べるのではなく、形がいびつでも愛らしい野菜によって自然の変化そのものを感じられる。そんな思いを伝えたい阿部さんと、それに共感する消費者がコミュニティーを作るのだとすれば、両者をつなぐ「野菜」自体がメディアになっているんです。毎週阿部さんの思いを乗せた異なる「野菜」というコンテンツが手元に届くことで、消費者がハッピーになる。これぞ「メディア化するプロダクト」の最たる例でしょう。

 これはサブスクビジネスに顕著な傾向じゃないかと思います。お花のサブスクは、毎週届くお花によって気分を変えられるし、お洋服のサブスクだって、その時のムードを演出してくれる大事な要素。

 そして、メディアが何かと何かをつなぐものであるなら、別に相手に伝えるべきは文字情報でなくてもいいはずですよね。メディアによって得られるものは知識じゃなくて、その時のムードとか気分でもいいわけです。そうなると、記事よりもプロダクトが圧倒的に強い。僕としては、そうなると何かを作るクリエイター、起業家はみんな編集者に見えてきてしまいます。ライバルがどんどん増えるぞ。

 まあ雑誌だって、ある意味ではメディアというよりもプロダクトなわけですしね。僕もメディアの形にかかわらず、やれることを粛々とやっていこうという気概であります。

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