コンビニ弁当５％還元をポーター「５つの力」で読み解く
先週の第１回「夜学永井塾」のテーマは「戦略」。競争戦略、創発戦略、ルメルトの「良い戦略、悪い戦略」が題材でした。その一部を紹介します。
先日セブンが消費期限切れ寸前の商品を５％ポイント還元すると発表しました。ポイント還元とは言え、実質は値引き。
このニュースだけ見ると、こう思いがちです。
「絶対に値引きをしない方針だったあのセブンが、ついに値引き。いよいよ価格勝負がコンビニ業界でも始まるのか？」
値引きの理由は、ライバルとの競争が激しくなったからではありません。また顧客からの値引き圧力が理由でもありません。
ポーターの「５つの力」で読み解いてみましょう。
「市場で競っているのは同業者だけではない」というのが「５つの力」の考え方。次の５つとの力関係で競争状況が決まります。
■売り手…ＰＢ商品の製造元など。セブンに商品や労働力を提供する業者です。
■買い手…商品を買う人です。我々消費者です。
■新規参入業者…コンビニへの参入業者です。参入障壁が高いコンビニですが、新技術で無人コンビニを模索するアマゾンＧＯなど。
■代替品…コンビニを代替する業者です。品揃えを充実させているドラッグストアやＥコマース業者など。
■同業者…同じコンビニ業者です。セブン、ローソン、ファミマなど。
（ここまでは拙著「MBA必読書50冊を1冊にまとめてみた」のサマリーです)
コンビニ弁当５％ポイント還元策の発端はセブン本部とＦＣオーナー間での問題です。
セブン店舗の90%以上は、自営業者のＦＣオーナーがセブン本部とＦＣ契約し、運営ノウハウやセブンのロゴ使用、商品供給や経営支援を受け、店舗運営しています。
いま人手不足や人件費高騰で、ＦＣオーナーは厳しい状況に追い込まれています。つい最近も「24時間営業はムリだ」と声を挙げたＦＣオーナーが話題になりました。
さらに店に並べる商品はＦＣオーナーが本部から買い上げています。仕入れ商品を廃棄しても、本部にお金を払わなければいけません。廃棄食品の負担はＦＣオーナーの利益を削っています。
これらはＦＣ契約で取り決めして合意しています。ＦＣ契約のおかげでセブン本部はＦＣオーナーには強い立場でした。
しかしあるＦＣオーナーが「もうムリ」と声を上げ、「ＦＣオーナーは搾取されている」という世論が盛り上がりました。経産省の世耕大臣もコンビニ各社の社長を集め、24時間営業の見直しの指示をしました。
今や世論の後押しで、コンビニ本部はＦＣオーナーに対し「やや弱い立場」になりつつあります。
そこでセブン本部も、24時間営業の見直しや廃棄前のポイント還元に着手せざるを得ないのです。
ただ５％ポイント還元は、nanacoでのポイント還元。還元分は次のセブンの買い物で使います。この辺りはよく出来ていると思います。
コンビニ弁当５％ポイント還元策も「５つの力」で読み解けば、面白いですね。
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