マッチ売りのこじき

坊や「マッチ、マッチはいりませんか?」

坊やのそばを素通りしていく人たち。

坊や「どうしてうれないの……」

今にも泣きそうになる坊や。

中年男性「坊や。どうしたの?」

声をかける中年男性。

坊や「マッチがぜんぜんうれないの」

中年男性「そうか……よし。私が全部買おう。いくらだい?」

坊や「え! ほんとに! やった!」

中年男性「坊や。嬉しいのはわかるから、いくらか教えてくれないかい?」

坊や「うん! 98,000えん!」

うろたえる中年男性。

中年男性「桁、間違えてない?」

満面の笑みをうかべる坊や。

坊や「これで合ってるよ」

中年男性「随分と高いね。そんなにいいマッチなの?」

坊や「うん! それにね! きょうはマッチのねだんがすごくたかいの!」

中年男性「今日の値段? 昨日は安かったの?」

坊や「うん。きのうはぜんぶで9,800えん」

中年男性「随分と値上がりしたね。10倍なんてそうそうないよ。どうして値上がりしたの?」

坊や「よくわからないけど、マッチのさきものっていうのがあって、いきなりねだんがあがったの」

まさか先物取引が出てくるとは思わず、声がひっくり返る中年男性。

中年男性「マッチの先物なんてあるの!? 聞きたいことが色々あるけど、先物なんてどこで見てるの?」

坊や「ここ」

ポケットからスマホを取り出す坊や。

目を見張る中年男性。

中年男性「……それより、スマホ持ってるならマッチ売る必要ないんじゃない?」

坊や「だって……おこづかいくれないから……」

今にも泣きそうになる坊や。

中年男性「それはつらいね。お父さんとお母さんはどこ?」

坊や「もうあえないの……」

涙を流す坊や。

中年男性「……ごめんね。坊や。悲しいことを思い出させてすまない。おわびに、マッチ一箱なら買うよ」

坊や「うん! ありがとう!」

中年男性「お値段は?」

坊や「20,000えん!」

中年男性「高いねえ。一個しか買わないのに」

坊や「セットでかうとおとくなの!」

中年男性「ちゃっかり商売上手だねえ。はい、2万円」

坊や「ありがとう! はい! マッチ!」

中年男性「ありがとう。商売についてもうちょっと勉強しておいで」

去っていく中年男性。

坊や「バイバーイ」

大きく手を振る坊や。

坊や「……」

スマホを手に取り、先物取引の画面をなぞる坊や。

坊や「次は……2万5000円だな……ふふふ🎶」

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【スキ220達成】平根 貴仁

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