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難しい馬への乗り替わりこそルメール騎手の腕の見せどころ

昨年、外国人として初のJRA所属騎手となったクリストフ・ルメール騎手は、今年度も引き続き素晴らしい成績を残している。昨年度は112勝を挙げ、連対率は0.353という安定感であった。今年度もすでに106勝を挙げ、連対率も0.357という快進撃を続けている(8月7日時点)。ある程度は予想されていたこととはいえ、ジョッキー群雄割拠の時代に、これだけ突出した成績を安定して収めるのだから、ルメール騎手にしかない何かがあるのだろう。たしかに勝てる(勝負が掛かった)馬が回ってきている流れはあっても、それだけではなく、実際に馬の力を十全に発揮させる技術があるということである。

そのひとつとして、行きたがる馬を抑える技術がある。ルメール騎手は、その柔らかな顔つきからは想像できないが、腕力が非常に強いと言われている。彼に乗り替わった馬が、それまでは後ろから行っていたにもかかわらず、スッと先行してピタリと折り合い、そのまま押し切ってしまうというレースを何度も見たことがあるだろう。

ハーツクライに乗ってディープインパクトを負かした2005年の有馬記念。リトルアマポーラに跨ってカラ馬をものともせず勝利した2008年のエリザベス女王杯。そして、ウオッカと共に府中の2400mを先行して後続の追撃を凌ぎ切った2009年のジャパンカップなど。どのレースも、観ているこちらがヒヤヒヤするほど、馬を前に出して行っての勝利であった。

私にとって最も鮮明な記憶として残っているのは、

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