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厩舎の偏り=強みを見極める

厩舎には、ある特定のタイプの強い馬が出やすい傾向がある。スプリンターからステイヤーまで、またはダート馬から芝を得意とする馬まで、あらゆるタイプの競走馬を育て上げ、出世させる厩舎は案外少なく、たとえばスプリンターばかり、中距離馬ばかりが活躍する厩舎がほとんどである。その馬の資質に合わせて調教し、バラエティに富んだ強い馬たちを育てたいと願っていても、どうしても偏ってしまう。

たとえば、ウオッカやヴィクトワールピサ、エピファネイアなどを育てた角居勝彦厩舎から、スプリント戦への出走馬がほとんどいないのは有名な話である。一部の関係者の間では、「角居の1200嫌い」ともささやかれているそうだ。決してそのようなことはなく、もっぱらマイル戦以上の距離で力を出し切れるような調教を施し、それに合ったレースに出走させているだけのこと。ただ単に馬の持っている能力を引き出すだけではなく、そこに厩舎独自の調教・育成技術を掛け合わせることで、スペシャリストをつくるのである。

スプリンターとマイラー以上では育て方が違います。
1200mは、短いなりに独特のタメを作れるものの、スタートからゴールまで一本調子でも勝てる。一方、マイル以上では、じわっとしたタメを作らなければ決して勝てない。調教法がガラリと変わってくるのです。
たとえば、サクラバクシンオー産駒であれば、「スタートしてから押してスピードに乗る」というつくり方。すると、そのための従業員教育も必要です。
(中略)
ウチの場合はクラシックを目指す中長距離が基本で、その特徴と血統を持った馬を預からせてもらっていますし、中長距離のための調教が基本です。実績を挙げるなどして「角居は中長距離が得意」と色が付けば、ますますその傾向が強くなる。逆に短距離血統の馬は、その距離で結果を出している厩舎に預けられることになる。自然と、短距離が得意な馬とは縁遠くなってしまう。(「競馬感性の法則」より)

厩舎によってそれぞれの調教法や考え方があることに起因し、強い馬を誕生させることによって、その傾向のある血統や資質を持った馬が集まりやすくなり、その偏りはさらに強まる。色がついてしまうと、どうしても縁遠くなってしまうタイプの馬もいるかもしれないが、厩舎としては色がつかないよりもついた方が良いだろう。なぜならば、偏りこそが厩舎の強みであり、そのような厩舎からはG1レースで活躍する看板馬が誕生しやすいからである。

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