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エリザベス女王杯は世代交代のレース

エリザベス女王杯において、世代交代の問題は避けて通れない。最近は、調教技術や馬をケアするレベルの高まりに伴い、ウオッカやジェンティルドンナなど比較的長く一線級のレースで活躍する牝馬も少なくないが、一般的に牝馬は牡馬に比べ、現役の競走馬として活躍できる期間が短いとされる。それは牝馬には血を繋ぐという役割があるからであって、肉体的そして精神的にも、競走馬から繁殖牝馬へと変遷していく時期が自然とある。

私が競馬を始めた頃、ダイイチルビーという美しい宝石のような馬がいた。父トウショウボーイ、母ハギノトップレディという超良血馬で、特に母系はヤマピット、イットー、ハギノトップレディなどを出し、華麗なる一族と呼ばれるファミリーに属している。デビューしてからの戦績も実に華麗であり、マイル以下の距離のレースにおいては連対を外したことすらなく、4歳時の安田記念では並み居る牡馬を斬り捨ててG1馬に輝いた。牝馬らしい切れ味を武器にして、弓を引けば引くほど、最後の直線で真っ直ぐに伸びてくる。そんな生粋のマイラーであった。

ダイイチルビーは4歳の年の暮れにスプリンターズSをも制した。しかし、それまでの輝きが嘘のように、5歳となった翌年は目を覆いたくなるような惨敗を繰り返しそのまま引退していった。あれだけ強かったダイイチルビーが、こんなにも走ることができなくなってしまうことに、競馬を知り始めたばかりの私は素直に驚いた。その時、伊藤雄二元調教師が言った、「ルビーはもうお母さんの目になっているね」というセリフが印象的であった。肉体的には走れる状態にあったが、精神的にはレースを走り抜くだけの闘争心がすでに失われていたのであろう。

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