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走るフォームを教え込んで強い馬をつくる

4月に上梓した単行本「馬体は語る—最高に走るサラブレッドの見つけ方」を読んだと、新規開業の厩舎で働く厩務員から連絡をいただいた。その方は、「ROUNDERS」のファンでもあり、手紙でのやり取りを経て、今回の単行本の発売を機に初めてお話をすることができた。その会話の中で、「vol.1で書かれていた走るフォームはとても参考になりました。実は、新しい厩舎では走るフォームに力を入れているのですよ」と言われ、嬉しく思うと共に胸が熱くなった。7年前に調教について書いたことが、競馬ファンだけではなくホースマンたちにも届き、時代を経ても現場に生かしてもらえていたのだ。

なぜ私が調教について語るとき、走るフォームについて語ったのかというと、現在の調教の潮流自体が走るフォームにあると感じていたからである。強い馬づくりを掲げ、ここ数十年で目覚ましい進化を遂げてきた日本競馬の調教技術の最先端は、走るフォームにあると言っても過言ではない。どのような調教をするかだけではなく、どのようなフォームで調教をするか、が強い馬を作る上での大きなテーマとなってきていたのだ。

そこで角居勝彦調教師と藤原英昭調教師という2人の調教師を私は取り上げていた。両厩舎には走るフォームに関する考え方が通底していたからである。馬は鍛えれば強くなるわけではなく、人間に出来るのは、持っている能力を出せる状態にしてあげることだけ。だからこそ、調教で速いところをビュンビュンやるのではなく、軽いキャンターで、馬の息を整え、きれいなフォームで走らせることを徹底する。きれいな姿勢で走ると、良い筋肉がつく。そもそも、両厩舎では、壊れる心配のない常足の時に、頭の位置やハミの取り方、後脚の踏み込み方など、歩くフォームにも時間を掛けて教え込んでいるのだ。

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