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凱旋門賞帰りの馬の狙い方

私が競馬を始めた頃、日本馬が海外に遠征することはビッグイベントであり、少し大げさに言うと命がけの挑戦であった。凱旋門賞を含む、ヨーロッパの大きなレースに挑戦したものの全く歯が立たず、衰弱してしまったスピードシンボリに寄り添い、飛行機に同乗して帰国した野平祐二騎手のエピソードが個人的には大好きだ。そのような先人がいてくれたおかげで現在の日本競馬の隆盛があり、海外の大レースに挑戦する日本馬の姿は日常の風景となった。

とはいえ、海外遠征が気軽で簡単になったわけではない。インターネットで世界中はつながったが、1頭のサラブレッドを飛行機に長時間乗せ、気候も風土も全く異なる環境に降り立ち、勝手知らない場所で調教をつけ、走ったこともない馬場やコースにて外国の馬たちと激しい闘いを繰り広げなければならないのだ。もちろん、そこにかかる経費も私たちの想像を絶するものがある。馬にとっても人間にとっても、負担は決して少なくない。

海外遠征における肉体的、精神的な負担は大きいため、帰国して日本のレースに再び出走する場合には、サラブレッドへの影響を考えないわけにはいかない。ひと昔前までは、日本馬が海外のレースに出走しても馬券は買えなかったので、馬券ファンにとっては、日本に戻ってきてからの状態が気になるところであった。特に海外遠征をするような馬は、日本競馬の中では突出した能力を持っているため、体調や仕上がりが良ければあっさりと勝利することができるからである。

そこで当初、海外遠征をした馬の帰国初戦のレース振りをつぶさに観察してみて、「海外遠征帰り初戦は、負けて帰ってきた馬は買い、勝って帰ってきた馬は消し」というヒントを私は思いついた。海外遠征をして勝って帰ってきた馬は、帰国初戦のレースで人気になるが、凡走することが多い。なぜなら、海外のレースを勝つために、全ての力を出し尽くしているからだ。海外のレースを勝つということは、それぐらい大変なことである。しかし、何らかの理由で、力を出し切れずに負けてしまった(凡走した)馬は、国内であれば力上位であるため、好走することが多い。海外遠征帰り初戦は、勝って帰ってきた馬は消し。負けて帰ってきた馬を狙え、という主旨であった。

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