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強い逃げ馬が2頭いるとき、“行った行った”は起こる

「行った行った」とは、逃げた馬と2番手の馬がそのままの形でゴールすること。最近は大レースではあまり見なくなってしまったが、かつてはここぞという場面であっと言わせる2頭による逃げ切りが起こっていた。あまりの勢いで2頭が競っているため、どこかで潰れるだろうと高を括っていると、意外や意外に、どちらも最後まで残ってしまうことがある。逃げ馬は自分のペースや型で走ってこそと思われがちだが、それだけが逃げ切りの成功や失敗を決める要因ではない。簡単にはバテない相手と馬体を併せて競り合うことで、自分が持てる力以上の粘り腰を発揮できることもあるのだ。

このことに気づかされたのは、今から10年前の皐月賞のこと。武豊騎手を背に弥生賞を勝った良血アドマイヤオーラが1番人気、共同通信杯を制し無傷の4連勝で臨んできたフサイチホウオーが2番人気に支持されていた。スタートが切られ、押して押してハナを切ったサンツェッペリンの外から、大外の8枠から発走したヴィクトリーがコーナリングを利して先頭を奪い返す。勢いがついた2頭は、向こう正面に入っても他馬を引き離す形で大きく先行した。そして残り600mの時点で、2番手を追走していたサンツェッペリンの松岡正海騎手がムチを抜き、ヴィクトリーに馬体を並べに動いたのである。

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