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牝系の勢いに気づき、馬券に活かす

私がサラブレッドの牝系の奥深さや重要性に気づかされたのは、スペシャルウィークという名馬を通してであった。スペシャルウィークの牝系を辿っていくと、4代母にシラオキ、9代母にフロリースカップという、日本競馬の礎を築いた牝馬たちに行き着く。ビューチフルドリーマー系、アストニシメント系、フラストレート系、ヘレンサーフ系など、いわゆる小岩井牝系と呼ばれる牝系の代表のひとつであるフロリースカップ系である。現代の競馬の世界は完全にボーダレス化し、外国から超一流の種牡馬や繁殖牝馬が続々と輸入され、その産駒たちが活躍している中、スペシャルウィークは日本の在来血統から出た超大物であった。

日本の在来血統といっても、決して古くて劣っていたわけではなく、むしろ当時としては破格のマネーを積んで、三菱財閥の威信をかけ、イギリスから超一流の繁殖牝馬と種牡馬を買い求めた経緯がある。小岩井牧場に最初に導入された繁殖牝馬20頭の中に、前述のフロリースカップやビューチフルドリーマー、アストニシメント、ヘレンサーフらがいて、第二次世界大戦やその後の財閥解体、農地改革などの影響を大きく受け、各地に散り散りになりながらも、それぞれに血を繁栄させていったのである。

これら日本の在来血統や小岩井牝系に特徴的なのは成長力とスタミナである。種牡馬の血統イメージ以上に距離をこなし、かつ古馬になってからの成長力に富み、衰えを知らずにタフに走り続ける。サンデーサイレンス産駒の中でも、のちに登場するディープインパクトのような突き抜けた存在を除き、日本ダービーを勝ち、クラシックで活躍しながらも、古馬になってからさらに強くなったのはスペシャルウィークぐらいのものである。サンデーサイレンスは基本的には早熟で仕上がりが早く、軽い馬場に適応できるスピードと瞬発力に長けた種牡馬であるからこそ、サンデーサイレンス産駒の中におけるスペシャルウィークの異質さが牝系に依ることは間違いがない。

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