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よるくまは主人公「僕」の夢の中で生きている。あるいは、よるくま(そのぬいぐるみ)は、主人公「僕」の中で、本当に生きているのかもしれない。

絵本作家である酒井駒子さんが描いた『よるくま』という絵本は、読む人を失望させない素晴らしい絵本だ。

子どもの心は本当に純粋である。大人から見ると、明らかにフィクションと分かるような物語を、真実であると信じる。しかし、子どもは馬鹿ではない。

フィクションとして語られる物語を、子どもたちは、真実だとは思わない。子どもたちは、フィクションとして、その物語を楽しむ。大人が夜9時から始まるテレビドラマを楽しむのと同じである。

子どもたちは絵本『よるくま』を真実だと思っているのか、それともフィクションだと分かって楽しんでいるのか。

僕には2人の子どもがいる。上の子が4歳、下の子が2歳。この絵本の物語について、おそらく2人とも理解は出来ているし、楽しんでいると思う。

でも、おそらく2人の物語の捉え方には違いがある。

4歳の上の子は、大人に近い目線で、この物語を楽しんでいる。おそらく、主人公「僕」が夢を見ている時の物語であることを認識している。

2歳の下の子は、おそらく、夢や現実の区別なく、主人公「僕」とよるくまとの冒険物語のような視点で、この物語を認識している。

35歳の僕は、この物語を、誰も失望しない秀逸な物語であるなあ、と感心している。

そして、主人公「僕」と「僕」お母さんとの関係、さらには、よるくまとよるくまのお母さんとの関係に、あたたかさと力強さを感じ、羨ましいなあ、と思う。

フィクションとして語られていても、この物語にある子と母親との関係性は、紛れもない真実である。その関係性を人は愛と呼ぶ。この物語は母と子の真実の愛の物語と言ってもいいと思う。

お手元にある人は是非、お子さんに読んで上げてください。

子どもがずっと家にいて不安でたまらないお母さん、そんなお母さんに気を使うお父さん、サブスクの動画配信観尽くした子どもたち、熊のぬいぐるみ持っている子にオススメです。是非。


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