テロリストのlullaby
2016年、私はブラジルのリオデジャネイロにいた。オリンピックを取材するためだ。
オリンピック取材は競技以外もテーマになる。リオの場合は、治安がオリンピックに与える影響やジカ熱の流行など。そして、どのオリンピックにもあてはまることだけれど、テロへの警戒。
ある日、私は競技会場にいた。そして、テロリストに出会った。
すらりと背の高いそのテロリストは、オリンピック関係者の公式ユニホームを着ていた。でも、私はすぐに彼の正体を見抜いた。
だって、
書いてあったから。
ふくらはぎに、
「テロリスト」って。
しかも、日本語で。
こんなにも明確なメッセージがあるだろうか。
わけあって、テロリストになったものの、誰かに止めてほしい、気づいてほしいという葛藤からのメッセージだったのだろうか。
それとも、よくわからない日本語を「おしゃれじゃん」とすすめてしまう適当なタトゥーアーティストに出会ってしまった男の心の叫びだったのか。
とりあえず、聞いてみよう。
「エクスキューズミー。ユアタトゥー。。。。」
テロリストがこちらを向く。
「。。。ソーリー。」
それだけ小さな声で言って、テロリストは力なく笑った。とても悲しい目をしていた。
来年には、東京にオリンピックがやってくる。
もし、彼に出会ったら、なにも言わずそっと抱き締めてあげてください。
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