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水の輪廻

地球が地球として存在し始めてから46億年といわれているが、誰が言っているのだろう。人の想像力は意外とチープなもので、どうせ地質学だとか天文学だとかの専門家が言っているのだろうけど、あやしい・・・。

一億年前に何があったのかもはっきりしないのに(私は1週間前の事さえはっきりしないことが多い)46億年とは随分大きくでたもんだ。
別に私は自分の物忘れを地質学者のせいにしようとしてこんな事を書いている訳ではない。だけど今日は地球が気にかかるのだ。

地球には大気圏というものがある。宇宙からの映像を見ると、大気圏からこっちが地球の領地、という感じがする。たぶんそうなんだろう。
実際に地球は岩石圏、水圏、大気圏と三圏から成り立っているといわれている。(誰が言った?)その大気圏、結構丈夫なものらしい。

スペースシャトルでさえ大気圏を出るのにはものすごいエネルギーが必要になる。よく見るNASAの映像の中に、まるで電信柱にセミがとまっているような不恰好なロケット発射シーンがあるが、あの電信柱の部分が燃料というのだから、原始的な話だ。

それはいいとして、地球上のものをみだりに宇宙に出さないために大気圏がしっかりと蓋をしていることは確かなようだ。
ということは、46億年(だとして)の間、大気圏内の殆どの要素は変わっていないということになる。大きな要素としての「水分」は46億年の間一滴も増えず一滴も減っていないということになるのだ。

赤ちゃんの体の80%は水分だという。そして人は水分が50%を切るとその命を終えるらしい。水を消費してゆくことが人の一生なのかも知れない。
では消費された水は何処に行ったのだろう。人が呼吸をしたり排出したりすることで多くの水分を体外へと出し、それらの水分は川を流れ、海に出たり、気体に姿を変えて空に上ったりと、様々な所へと運ばれる。

しかしその水分が地球から外へ出ることはない。そう、循環するのだ。
海になった水分はいつか蒸発して雲になり、やがて雨になる。大地に吸われて樹木を育てる。
樹液は昆虫の水分となり、昆虫は鳥の栄養源になる。

その鳥がある日寿命を終えたとき、その中にわずかに残った水分も蒸発し空に戻るのだ。空に上った水分の中には、山深い沢に流れて百名水に名を連ね、しばらくしたら銘酒、越の寒梅とか何とかいうのになるのもあるわけだ。

ということは、毎日飲んでるビールの水分にも、テーブルの上のポン酢にも過去があるわけだろう。何しろ46億年循環し続けている水分が入っているのだから、ぜったーい新参者ではないのだから、なにかあるのだ。

しかし、そのビールの過去が知りたいと言うほど私は大物ではない。
もし、忌まわしい過去がそのビールにあったりしたらどうすればいいのかわからない・・。血みどろぐちゃぐちゃ、怨念、因縁付の水分だったら、私は迷わず人に勧めてしまうと思う。

いくつかの宗教の教えの中にある「輪廻転生」の考え方もまた、このあたりから発生しているのかも知れない。
地球という限りある要素を抱え込んだ袋の中で水分やその他の要素が組み変わり、もつれ合って今の世界を作っているのだろう。

私たちの体にある水分も過去様々なものに姿を変えてきたのだろう。

今という時点では「人間の中身の水分」になってはいるが、ちょっと前までは海だったのかも知れないし、雲だったのかも知れない。

昔、坂本竜馬だった水分がテーブルの上のポン酢の中の水分じゃないと誰が言えるのだろう。冷奴の水分だって、西郷隆盛だったかもしれないじゃないか(それって明治維新が食卓に乗っていることになるな・・・)。

そんな事を考えると、みんな密接な繋がりを持っているのだと深く感じる。
自分が生きたことや感じたことが水の中に柔らかく溶け出して大気圏の中を未来永劫に循環し続けるのだろう。

私の周りを浮遊する全ての要素が(実は私自身も)悠久の時間の中で何かを造り、破壊してきたのだなぁと思う。

スルメになったイカは水に入れても元のイカには戻らない。水っぽいスルメになるだけなのは、何故なんだろう。ああ水の謎は尽きない。


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