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水生生物マニアにインタビュー Vol.2 〜小生物を愛する実験家〜

こんにちは、イノカの河野です。前回のインタビュー如何だったでしょうか!前回のインタビューではイノカの増田(なおきさん)を取り上げ、生き物への愛情をたっぷり語ってもらいました。水生生物への愛情・アクアリストとしての熱量が伝わったのではないでしょうか?
前回の記事をまだ見ていない方はこちら→水生生物マニアにインタビューVOl.1

さて今回も早速水生生物を愛するマニアの方にインタビューをして行きたいと思います!

今回インタビューをさせて頂くのは東京在住の水生生物マニアの王英さん(Twitter)です。王英さんとなおきさんは知り合いだそうで、なおきさんも王英さんはイチオシのマニアだと推していました。どうやら王英さんが書かれていたブログを見てファンになったとか。かなりの水生生物マニアでもあるなおきさんが推している人だということで、私もお話が聞けると思うとワクワクが止まりませんでした。

今回はご自宅の方にお尋ねさせて頂くことができたので、実際に水槽を見せて頂いたり、直接様々なお話を聞かせて頂くことができました。

-所有している水槽を見せてもらいました-

まずは王英さんに水槽を見せて頂きました。玄関が入ってすぐのところに水槽が置かれており、インパクトがありました!

この水槽にはかなりの特徴がありました。なんと内部環境が実際の自然とかなり近い状態で生態系が出来上がっているそうです。そのためほとんど餌をあげていなくても成り立っており(週に1回ほど気が向いたらあげる程度だそうです。)、濾過器も使用していないそうです。
私は水槽で生き物を飼っているのなら餌はあげて当然のものだと思っていたためかなり驚きました。

また、王英さんはこの中に採取してきた小生物を入れて何を食べるのかなどを実験しながら調査しているそうで、ここまでやるのか・・・と驚くほどのかなりのマニアでした。
王英さんの水槽の中にはタカラガイ(下画像)が沢山いるのですが、実験的にキャベツをあげてみたところ食いついたそうです(笑)見せて頂いた時も当たり前のようにタカラガイがキャベツを食べていました。

次々と水槽の中からタカラガイを取って下さいました。タカラガイの話をしてらっしゃった王英さんの表情は楽しそうで水生生物への愛情がひしひしと伝わって来ました。

今回そんな自然を愛する実験家でもある王英さんから色々な話をお伺いすることができました。インタビュアーは前回はインタビューを受ける側でもあったイノカ代表マニアのなおきさん(以下、なおき)です。

-飼育している水生生物の種類について-

なおき:王英さんとはこうやってかしこまって「なんでその生き物が好きか」とかの話ってしたこと無かったですよね(笑)今日はよろしくお願いします。
王英さん(以下、王英):そうですね(笑)よろしくお願いします。
なおき:まずは飼育している生物の種類を教えてもらってもいいですか?
王英:メインはサンゴですかね。でもだんだん移りつつありますね(笑)磯の小さい生き物にだんだんシフトしていっていますね。

-飼育歴について-

なおき:この水生生物の飼育歴はどのくらいになりますか?
王英:マリンアクアリウムで言うと10年ちょっとですかね。きっかけは息子とニモを見に行って、息子がヒトデを飼いたいと言ったことですね。
なおき:そんなきっかけだったんですね(笑)しかもニモじゃなくてヒトデ!
王英:そうなんです(笑)当時は水量9Lくらいの20cm水槽から始めたんですよ。
なおき:それはやっぱりヒトデを飼い始めたんですか?
王英:はい、ヒトデを飼い始めて。それだけでは寂しいなってなってマメスナ(マメスナギンチャク)を入れたんですよ。そしたらヒトデに食われちゃって・・・(笑)
なおき:なるほど・・・(笑)
王英:そこから水槽を大きくしようと思って60cmの水槽にしました。また、その時釣りもしてたから釣った魚とかも飼ってたんですけど、ちょうど3.11の時に照明とか水槽の中に全部落ちちゃって水槽が崩壊してしまって。これから何しようってなった時にミドリイシを始めました

-飼育している水生生物の魅力-

なおき:飼育している水生生物の魅力を教えて下さい。王英さんの場合はハマサンゴや磯の小生物ですかね?
王英:そうですね、やっぱりやり始めて思ったのは水槽のサイズには限度があるということ何ですよね。だから生き物を飼う上では水槽にあった生き物を飼いたいんですよね。その点でいえばハマサンゴに関してはやっぱり成長が緩やかであるから長く飼いやすいんですよね。しかも比較的強い。
また、単純に磯の小生物に関してはよく分かっていないものが多いんですよね。飼い方や種類がよく分かっていない物が多いんですよね。だからこそ開拓しがいがある
なおき:なるほど、ロマンがあるというか。
王英:そうなんですよ。自分で試行錯誤のしがいがあるんですよね。
なおき:王英さんは自分で研究者に同定(種の特定)を依頼したりしてますもんね(笑)ヨコエビとかですよね?
王英:そうですね。ヨコエビなんかは特に分類体系が毎年変わるくらいなんですよね。日本でも毎年新種の発見があるほどなんです。海産生物って水産資源に関係のあるものは良く研究されているんですよ。例えば水産資源に被害を与えるものとか。それ以外は研究者の知的興味の範囲で、その生物が好きな研究者しか研究しないんですよ。だから謎が多い。
なおき:なるほど。分からないことが多いっていうのが魅力なんですね。
王英:そうですね。

-飼育する上で大変だったこと-

なおき:水生生物の飼育で大変だったことはありますか?
王英:そうですね、さっきも言った通り生態の情報が論文を探してもなかなか見つからないことですね。論文でよく取り上げられているのが分類に関してなんですよ。もちろん最初はどこに何がいるのかということが大事なんですが、それ以上の生態に関することまでは情報が無くてよく分からないことが多いですね。
なおき:なるほど。だから王英さんは様々な飼育方法を一つずつ試しながら調査をしているんですね
王英:そうですね。例えばヨコエビやコツブムシなら同じ種類なのに食べるものが違う。藻類食(海藻を食べる種)もいるし腐った肉も食べる雑食に近いものもいますし。
なおき:同じ種類でも違うんですね。
王英:また、磯などで取ってきたものを同定するのも難しいんですよね。さらにそれが何を食べているのかもわからないので、水槽の中で繁殖させていくのが難しいんですよ。
なおき:私はずっとブログを読んでたファンでもあるので分かるのですが、王英さんは色々と実験されてましたよね(笑)やっぱり私と王英さんが目指しているところが「(自然)環境作り」という点で似ているところがあると思っているんですよね。なので王英さんにする質問って他のアクアリストの方にする質問と違ったりしているんですよ。「この生物が何を食べて生き延びているのか」とかの情報の擦り合わせを王英さんとしたおかげで助かってました。

-工夫していること・チャレンジしたいこと-

なおき:水生生物の飼育で工夫していることはなんですか?
王英:もちろん研究者の論文を当たることは、ネットで調べればできることなのである程度やっています。また、生物は採ってくるのがメインなのですが、できるだけ採る時に、まわりの環境を観察しておくというのは工夫としてありますね。
なおき:水槽の状態はかなり自然に近いですもんね。
次の質問なのですが、水生生物の飼育でこれからチャレンジしたいことはなんですか?
王英:水槽内での累代(るいだい)飼育ですね。
なおき:るいだい飼育というのは・・・?
王英:水槽の中で交配し子孫を産むような環境を維持することです。
なおき:なるほど。要は環境を作ってあげて常に繁栄し続けさせるってことですよね。
王英:そうですね。
なおき:なるほど、それを累代飼育って言うんだ・・・良いですね、すごくワクワクしますね!

-水生生物を世の中に広めたいか-

なおき:水生生物を世の中に広めたいですか?
王英:ブログはやっているのですが、基本的には仲間探しに使っていて発信に関してはあまり考えていなかったです。でも、自分の興味の範疇に寄生性の甲殻類がありまして。これに関してはぱっと見気持ち悪いと思われるかもしれないですけど、この生物は面白い性質を持っているので、みんなそういうのを面白がってもらえたらなとは思っています。
なおき:寄生性の甲殻類ですか(笑)多分知らない人の方が多いんじゃないですかね・・・(笑)
王英:水生生物に寄生する甲殻類なんですよ。寄生性の甲殻類に関する本を持ってまして・・・

なおき:こんな本あるんですね!初めて見た・・・(笑)サインが書かれていますけど、これはどなたのものですか?
王英:この本の著者で、説明を書いている齋藤さんです。実は知り合いで・・・
なおき:研究者に知り合いがいるんですか!やっぱりここまで進んでいるのが王英さんの凄いところだと思います(笑)
王英:いえいえ、偶然知り合っただけですよ。以前エダコモンが白化した時に寄生虫が付いていてたんですね。その際、無脊椎動物を扱う掲示板で僕が「これ何ですかね?」と聞いたら、向こうの方から「良かったら同定しますよ」という風に声を掛けてくださって。そこから付き合いがあります。
なおき:なるほど・・・本当にすごいですね。
王英:また、以前僕がサンゴをメンテナンスしている際にぴょんとテッポウエビが出てきたんですね。最初それを見たとき卵持ってるなって思ってたんですよ。でも違和感があって。よく見てみるとエビノハラヤドリっていう種類の寄生性甲殻類がいたんですね。
なおき:おお、エビノハラヤドリが。
王英:そして先程の齋藤さんのところに持っていったんですよ。「こんなの取れたよー良かったらいるー?」って。そしたら、それを見て齋藤さんが「これなんか未記載種っぽいよ?」っていう話になったんですね。
なおき:王英さん新種発見したんですか!?
王英:そうですね(笑)それでこの間の分類学会で齋藤さんが論文(下画像)を出した際に僕も名前だけ好意で載せて頂いたんですよ。

なおき:ええええ、凄いじゃないですか!
王英:そういうこともあるんだなと思いました(笑)このエビノハラヤドリなんですけど基本的には甲殻類は左右対称なんですけど、寄生すると不思議なことに左右対称じゃなくて足が片側に寄っちゃうんですよ。(足:下画像の赤丸部)これはメス何ですけどオスはかなり小さくてメスにちょこんと乗ってるだけなんですよ。(オス:下画像の青丸部)

なおき:面白いですね!アンコウ的な感じですか?吸収されていっちゃうみたいな。
王英:そうですね。そういう小さい甲殻類がいることも知らない人は多くいるとは思うんですよね。話はちょっと逸れてしまったんですが、これらの種も面白いんだよということは伝えたいです。

-あなたにとって水生生物とは-

なおき:最後の質問になりますが王英さんにとって海の生き物とは何ですか?
王英:私はまだ磯に足を踏み入れただけですが、言うなれば「いつ行っても楽しませてくれる遊び相手」ですね。
なおき:おおー素敵ですね!でも磯遊びとかも何回やっても新しい発見があって楽しいですもんね。
王英:そうですね。よかったら今度冬の夜磯(夜の磯)に行きましょうよ(笑)
なおき:夜磯なんて言葉初めて聞きました(笑)夜の磯ですか?めちゃくちゃ行きたいですね。ぜひ!

なおき:改めてお話聞けて楽しかったです。本日はインタビューに答えて下さりありがとうございました!
王英:こちらこそありがとうございました。

-最後に-

いかがだったでしょうか。分かっていないことが多い磯の生物を論文を探しながら調査していることや、実際に研究者の方に同定を依頼していることから王英さんが持つ未知への熱い探究心を感じました!

これ以外にも載せきれないほどの量のマニアックな話を王英さんからは聞くことができ大変楽しめました!

我々はまだまだアクアリストの方々を取り上げていきたいと思っております。では次回のインタビューもお楽しみ下さい!











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