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吉本騒動をちゃんと語ります。

私は、お笑いが好きだ。

 吉本騒動は、これで終わっていいのか。私は、お笑い芸人、そしてジャーナリストとして活動している。お笑いが大好きだからこそ、まだまだ伝えなきゃいけないことがあると思い、この度記事を書く決意をしました。
 私は、中学生の時からアマチュアで芸人活動を始め、高校3年の時にナベプロの養成所に入り、大学2年の時にサンミュージックに所属して、2年後話し合いの末、退社した。1年ほどフリーで活動し、自分で株式会社 笑下村塾を設立した。現在は、元々所属していたサンミュージックをはじめ、今回騒動になっている吉本興業、それ以外にも、マセキ、ホリプロ、ケイダッシュなどいろんな事務所の先輩方に出張授業やライブにご出演していただいている。事務所の垣根を超え、いろんな先輩芸人さんにご協力いただき、笑いで世直しをコンセプトに、全国に出張授業を届けている。

芸人をオファーする側であり、オファーされる側である

 芸人としての視点、そして自分も会社経営をしているので経営者の視点、そして政治や社会問題に関心があるからこその視点、この3つの視点で語られている方が少ないから、問題の本質がぶれまくっている…。そして、古い体質の芸能界が何も変わらないまま終焉を迎えようとしている。変わるチャンスなのに。このままじゃダメだ。
 大好きなお笑いが、ダークなイメージへと…。そしてお世話になっている先輩が糾弾されたりしているのを見て、とても辛かった。なので、記事を書くことにした。お前ごときの芸人がいうな!という批判がくることは、もちろん想像がつくが、それでも伝えたいことがあるので書く。

ずらされる論点

 この問題は、最初、お笑い芸人が反社会的勢力のパーティで闇営業をしていたことが発端となった。反社と芸人がつながっていることが一番の問題であった。事務所を通して仕事をしない「闇営業」は、大した問題ではない。

 芸人と吉本の問題であって、公共電波を使って視聴者の我々が毎日知るべきことかと言われると世の中もっと伝えなければならないニュースがある。数字が取れるからこうなっちゃうのが本当に残念。ちなみに、私がワイドショーの偉い人間なら、「私たちの日常に忍び込む反社会的勢力」みたいな形で、吉本騒動をきっかけに、一般社会にも、半グレとよばれる人や暴力団がフロント企業を装った場合、なかなか見抜けないという話に展開させ、「なら、どうやって反社を見抜くのか?」「反社かもしれないと思ったら、どうすればいいのか?」という方向で伝える。ただ、残念なことに、私は偉い人間ではない。だから、個人発信の中で頑張るので、これを拡散してほしいです。勇気を出して踏み込みます。

芸能事務所の古い体質

 雨上がり決死隊の宮迫博之さんと、ロンドンブーツ1号2号の田村亮さんが記者会見を開いた。そこから、世間は、反社のことではなく、吉本の内紛問題に変化した。会見によると、パーティーに行っていた芸人は、反社から「お金を貰っていない」と口裏を合わせ、そのように吉本に報告していたが、実はお金を貰っており、「会見して謝罪したい」と吉本にお願いしたが、それが認められなかったということらしい。しかも、その交渉の中で、「テープを回していないか」「(会見を)やってもええけど、全員連帯責任でクビにする」と岡本社長に言われたことで、注目された。
 そして、ダウンタウンの松本人志さんが「松本動きます」とツイート。幹部と面談し、「ワイドナショー」が緊急生放送をした。そして、岡本社長が記者会見をした。会見では、契約書は交わさないという方向性を示した。しかし、契約を交わしていないことを公正取引委員会から、独占禁止法上の問題となる可能性を指摘され、吉本は希望する芸人とは契約書を交わすとした。
 この社長の会見により、若手芸人から、その労働環境の不満を問う声もたくさん出た。ワイドショーでは、連日この話題が触れられた。テープを回すなと社長が言ったか、言わないか、それが冗談なのかどうかは、そんなに大事なのか。絶対に違う。せっかくなら「芸能人の権利」というテーマで深堀してほしかった。ということで、この騒動、結局、何が問題だったのか、芸能人の権利に詳しい弁護士の方に直接お話を伺った。

 お話を聞いたのはフジテレビ「バイキング」にかつてよく出演していた、レイ法律事務所代表弁護士の佐藤大和さん。芸能人側の権利問題を先駆し「芸能人の人権をもっと守るべき」と主張し、2017年に発起人として芸能人の権利を守る団体「日本エンターテイナーライツ協会」を立ち上げ共同代表理事に就任し、真剣に本音で芸能問題に切り込んできた方です。

契約書があれば反社が付け入る隙はなかった!

ー宮迫さんやロンブー田村さん、カラテカ入江さん、吉本の問題は何でしょうか?

 一番の問題は契約書を作っていなかったことです。芸人さんたちが吉本としっかりと専属契約書を締結し「事務所を通して仕事をしてください」という姿勢を徹底し、事務所の役割や事務所を通す意味について伝えていれば、そもそも反社が付け入る隙はありませんでした。
 ところで、吉本も以前に反社と仕事をしたという報道も出ましたが、その時は、吉本が芸人さんを派遣した主催者であるイベント会社についての反社チェックはしていたものの、そのイベントのスポンサーまではチェックができていなかったようです。通常は、契約相手や取引相手のチェックがメインであって、顧問弁護士の私もそこまで詳細に調べたことはありません。吉本としては取引先の反社チェックだけでは判断が甘かったとしていますが、中小企業にそこまで求めるのは酷かもしれません。
 今回、問題になった宮迫さんや入江さんは、直接の話なので、吉本を通していたら防げたのではないでしょうか。

どこから反社? 実態をつかみにくい半グレの人たち

―私たち芸能人が反社から身を守るにはどうすればいいでしょうか?

 テレビ出演している弁護士ですから、私もプライベートで「写真撮ってください」など言われると「いいですよ」となります。講演会や食事会に来られた方を全員チェックするのはかなり難しいです。
 「もしかして反社かも」と思われる人に写真をお願いされたら、「マネージャーに確認します」「仕事ですみません」など言って逃げる。やむなく撮った場合は、すぐにマネージャーや顧問弁護士、会社に報告・相談するという体制を整えることが大切です。
 反社というと指定暴力団が一般的ですが、これからその範囲をどこまで広げていくかも重要になってきます。暴対法などの法律はありますが、今回の詐欺師集団との問題に対しては不十分であり、法律で規制するにも限界があります。

反社チェックには限界がある!

―暴対法ができて暴力団の人が活動しづらくなった一方で、半グレの人たちは詐欺の案件ごとにグループを結成しているので、警察も実態をつかみにくいと聞きました。私のような小さな会社だと、チェックがすごく難しいのですが、できることはないのでしょうか?

 顧問弁護士として企業側から反社チェックを依頼されることもありますが、こちらも限界があります。
 登記や過去の新聞記事などを調べて、前科前歴が見当たらないとしても、現在犯罪行為をしている可能性もあります。現状を知るには、ホームーページを見る、直接会う、どんなビジネスをしているか、などをチェックしますが、ある程度できても、完全には非常に難しい。
 もし詐欺集団を含めて反社などを絶対的に断絶すべきだと企業側に求めるのであれば、顧問弁護士に調査権を付与するなどの検討が必要となります。前科前歴を調べやすくしたり、取引先等に対して開示請求をして社員等の名簿などを提出させるなどの権限があれば、確度を高めていくことはできると思います。しかし現行法上では弁護士にはそのような権限はありません。

契約書があったからナベプロは迅速に対応できた!

―芸能事務所の運営についてお伺いします。ザブングルさんの対応が吉本と違っていたのは契約書があったからでしょうか?

 危機管理のために大事なことは、原因を究明・特定して、速やかに対応していくこと。
 今回の吉本は契約書がなかったので、「何に基づいて」「どういう理由で」宮迫さんらに対して処分を行い、契約を解消したのか不明でした。
 対するナベプロは契約書でそのようなことが明記されていたので、迅速に、そして芸人さんの人生も考えた対応ができたんですね。素晴らしい対応だったと思います。

あいまいな立場にある芸能人

 テレビ業界や芸能業界は、閉鎖的であり、前近代的な家族感を有していたり、上下関係が強かったり、忖度があることは見て取れます。これらに対して、今まで法律は積極的に介入してきませんでした。
 一つの原因は、芸能人が労働者なのか個人事業主なのかが不明確だからです。契約書上は個人事業主扱いをされていますが、実態をみると実質的には労働者という場合もあります。労働者か個人事業主かで適用される法律が違うため、立場があいまいな芸能人は不当な行為があってもなかなか声を上げることができず、本来の自由競争が難しいという実態にも繋がっていました。

ジャニーズ事務所への注意喚起

■独占禁止法違反の恐れで注意! 

 ジャニーズ事務所が公正取引員会から独占禁止法違反の恐れがあると注意を受けました。元SMAPの3人が所属する事務所・新しい地図に対して、ジャニーズ事務所がテレビに出演させないような圧力を民放各局に出していた疑いがありました。証拠はありませんでしたが、このままいけば、違反に繋がる可能性がある、と注意した形です。

 新しい地図のように所属していた事務所を辞めて独立した後は、独占禁止法上の問題として取り上げやすくなります。しかし、まだ事務所に所属している段階では、労働者なのか、個人事業主なのか判別が難しく、たとえ個人事業主と判断し、独占禁止法上の問題と考えても、単なる個人間の契約上の問題に過ぎないとされることも多く、独占禁止法上の問題にするためには法律の解釈等が必要になってきます。これは法律の不備と考えます。芸能業界の特殊性もあるため、芸能人などエンターテイナーのための権利保護や地位向上のための法律が不可欠です。

―所属事務所に不満があって辞めたい方も、今の状況で法律が適用されるか分からないし、干されるという慣習もあるので、なかなかそこまで踏み込めません。古い考えですよね。公正取引委員会はなぜこのタイミングで入ったのか気になります。

公正取引委員会がなぜ、今?

 2017年に公正取引委員会が「人材と競争政策に関する検討会」をしました。この報告書で、おそらく初めて芸能人や芸能界に対する言及がなされました。そこで行政としてもようやく注目し、調査も始めたのでしょう。そして、2年たった今のタイミングだったのだと思います。

―今まで知らなかったということでしょうか?

 芸能界では、芸能人が係争中の場合、その芸能人をCMに出演させなかったり、テレビ出演も難しくなったりすることから、たとえ不当なことがあっても芸能人自身が裁判を起こないため、芸能に関する過去の裁判例の蓄積がほとんどありません。基本的に行政が動くときは、法律だけではなく、判例や裁判例も前提にしているため、直接適用できる法律や裁判例等がなければ、今回の芸能界のような話については難しい面がありました。
 実際に、現在、私は裁判例を作るために芸能に関する事件について独占禁止法違反等になるのではないかと裁判をしていますが、過去の裁判例等もなく、また裁判官も芸能業界についてほとんど知らないため、大変な側面が多いと感じています。

芸能人よ、立ち上がれ!

 芸能人らが事務所に対して申し入れや交渉するなどの機能を持たせるような、労働組合のような団体を芸能人自身が作っていくべきです。
 ただ、作ったとしても圧力とか干されるという恐れの中で、どこまで加入するかは疑問ですので、やはり同時に芸能人の権利を守るためにしっかりと法律を作っていくことも大事です。

―吉本は力もあるし、たくさんの売れている先輩たちのバーターになれたりとチャンスも多いので、プレーヤーとしては「給料が少なくても自分で選択したんだから」という気持ちも持ってしまいます…

 しっかりと契約内容等について説明を受けて、例えば報酬は少なくても月謝があったり、出演チャンスがあるなどを納得する説明があり、一方的ではなく対等に契約を締結していたら、お互い平等で公平な契約書と言えます。それを曖昧にして、「家族」という言葉で誤魔化し、契約書も作らず「気づいたらこの金額だった」「こういう契約内容だった」など芸人さんたちもよく分からない状態での契約だったのは問題です。もちろん、これは芸人さん側にも問題があると思っています。事務所だけではなく、芸能人自身も自分たちの権利についてもっと勉強をするべきです。
 僕たちのような外にいる弁護士が外野からあーだこーだ言うだけではなく、芸能人自身が今回の問題を「対岸の火事」と考えずに、一人一人が立ち上がって発言していかないと、いつまで経っても停滞したままであり、テレビ業界も芸能業界も変わらないでしょう。何より大事なのは当事者の力だと思っています。

説明責任を果たせばいいだけだった

 「芸能人自身が立ち上がって発言していかないと、いつまで経っても停滞したまま」という佐藤さんの言葉が脳裏にこびりついて離れません。ここで、発言しても得しないから、静観するというのは、本当にダメだなと思い、自分の意見を最後に書きます。
 私は根本的に、吉本は説明すれば良かっただけだと思う。誠意をもって、芸能界の歴史を説明し、芸能界と反社は極めて密接な関係にあり、それを断絶するために吉本が努力してきたこと、そしてまだできていない点を言えば良かったのではないか。そして、芸能人に反社は忍び寄ってくることと防ぐことの難しさ、でも、だから再発防止のためにこういうことをやるという宣言で十分だったのではないか。吉本はめちゃくちゃ、ちゃんとSDGsの伝え方を考えている。以前、役員の方と打ち合わせさせていただいた時に、その温度や気迫たるものがすごかった。仕事を選ぶ判断基準もしっかりしていた。だから、もったいない。本当に。
 ただ、やっぱり今回隠し通そうとした点だけが残念だ。説明責任を果たしてほしかった。古い体質で「遅れている」というイメージを植え付けてしまったと思う。本当にもったいない。行政とも組んで、お笑いの力を遺憾なく発揮して欲しかったのに。悔しい。

自分の子は吉本に入れたい

 最後に、吉本は月給が少ないという意見がある。全員を食べさせるべきだという識者のコメントを見た。若手芸人からの不満もたくさんあった。しかし、私は、それはちょっと違うと思った。もちろん、不透明なのはだめだ。自分のギャラの配分比率を知らないのは問題だ。
 しかし、しかしだ。吉本は魅力的すぎる。みんなが知っている会社だ。そして、日本全国に劇場がある。ルミネtheよしもとに19歳の時、初めて立った。あの時の感動は忘れられない。NGKにはまだ、立ったことがない。あんな立派な劇場、そして毎日お客さんがぱんぱんなのはすごい。
 ある時、楽屋で「自分の子供がお笑い芸人になりたいといったら、どこの事務所にいれるか?」という話で盛り上がった。賞レースで決勝に行ったことがあるような方々と話した。全員吉本って答えた。お笑いライブに出ているだけだと、他事務所じゃなかなか食べていけない。私は、事務所ライブに出てもギャラ0円だったし、それは割と普通だったと認識している。最初は、3千円とか払ってライブでていたし。
 ライブを主戦場に食べていく。それが辛うじてできるのが、吉本だ。1ステ500円とかネタにしているけど、他事務所は0円だったりする。ライバルの数ははんぱなく多い。だけど、賞レースで決勝にいければ、ライブのギャラがあがり、劇場の出番が増え、食べれる可能性が高くなる。テレビでは見ない渋谷の無限大ホールに出ている世間的には知られていない芸人が、月に100個ぐらい小さな仕事をして、食べて行けていたりする。そして、吉本が制作している番組がたくさんある。だから出演できる機会も多い。それに、売れたらライブを卒業することが多い他事務所。それに比べ、ライブを大切にしている事務所だからこそ、若手芸人が有名芸人と絡めたりする。それをテレビに出た時に、有名芸人が覚えてくれていて、同じ絡みをしてくれたりする。他事務所の芸人は、初対面で挑まないといけないところを、だいたい吉本芸人は若手でも先輩がいることが多い。吉本のノリに入っていけなかったこと何回あるだろうか…。
 吉本のギャラの配分が9対1というネタはお馴染みだ。不透明なのは本当によくないが、それを分かった上で、吉本に入ってきている。それに、私も昨年単独ライブをやったが、チケットが4500円、約600人完売したが、ギリギリ赤字が出ないというような形に終わった。スタッフさんのギャラが少なすぎたので、私のギャラは0にした。それが現実だ。ライブや劇場は人が多く関わるし、お金がかかる。不満をただ単純にぶちまける方々は、お金の勘定ができないのかなと思ってしまった。松竹もナベプロも自社で劇場をもっているが、貸し出しをしてお金をまわしているのが実情だ。自社の興業のみでまわせるのは本当にすごい。あんな立派な劇場をかりれるだけでも、恵まれていると思ってしまう。それは私の考えが古いのだろうか。
 ただ、私の会社、笑下村塾は所属芸人はいない。あくまでも、教材を作り、出張授業をする会社だ。理由は、所属してもらっても、食べさせていけないからだ。事務所によっては、同じキャラの芸人は食い合うだけだから、とらなかったりする。そこをどう捉えるのか。事務所選びから、もうスタートが始まっている。何より移籍をしにくい。これがお笑い界や芸能界を狭めているのは事実だろう。相性があわなければ、すぐに辞めたり、事務所のトレードができればいいのに。

最後に

 芸能界は変わるチャンスを逃した。私はそう感じだ。私は大学生のとき、もうテレビ出れないかもしれない、芸能界から干されるかもしれないと一大決心をして事務所を辞めた。ただ、私の場合は、恵まれていて、事務所の方が辞めたあとも暖かく見守ってくれ、今もちょこちょこテレビに出ている。でも、そんな流動性のない世界信じられないですよね。。転職して、前の会社に干されたりする業界ってやばい。。優秀な人材の引き抜きとか普通にあるのに。。

 偉そうにニュースを語っていたりするのに、自分たちの問題を自分たちで解決しきれなかった。私も含め、反省しなければならないのではないか。変わるために、発信した人、動いた人もいた。その人のことを本当に応援してほしい。もし本件について、ご関心の芸能人の方や、何か悩んでいる方、組合を立ち上げたいなどという方は、ぜひご連絡ください。ご一緒に連携しましょう。

infotaka7@gmail.com  株式会社 笑下村塾 たかまつなな

夢や希望を与える私たちの仕事。少しでもよくしていきましょう。行政に何か言われる前に、自分たちの力でよくしていきましょう。と書いていたら、公正取引委員会が動きましたね…。自分たちの手で本当に変えなきゃ。





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