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映画『竜馬暗殺』

昨日はコラムを載せてみましたが、ちょっとかた苦しかったかな、と反省。今日は古い映画を紹介してみます。
黒木和雄監督、原田芳雄主演の『龍馬暗殺』(1974年)。
私は大学生の頃、テレビの深夜放送で初めて観ました(笑)。


「わしゃよう、ある時逆立ちして世の中見てみたんよ。おまん、これは奇っ怪な風景だぜよ。権力の亡者どもがうじゃうじゃしちょるけえ」

慶応3年(1867)11月13日、坂本竜馬(原田芳雄)は居を京都四条の近江屋の土蔵に移した。1ヵ月前の、大政奉還の立役者の隠れ家としてはあまりに粗末だが、命を狙われる身ではやむを得ない。

大政奉還を成功させたことで竜馬は、幕府はもとより、武力倒幕派の薩摩藩や、土佐陸援隊率いる盟友中岡慎太郎(石橋蓮司)からも命を狙われていたのである。

そんな中でも竜馬は、向かいの家の遊女幡(中川梨絵)と屈託なく遊んでいた。しかし幡の弟右太(松田優作)もまた、薩摩藩より送られた竜馬の命を狙う刺客の一人だった。

折しも京は「ええじゃないか」の大騒ぎ。竜馬は白粉を塗り、女物の着物姿で乱舞にまぎれ、陸援隊屯所から中岡を外に連れ出す。中岡は薩摩藩に迎合しようとする隊士らと反目し、監禁されていたのだ。

あくまで武力倒幕を叫ぶ中岡に竜馬は、単に徳川から薩摩・長州への権力交代になる危険性を説く。そしてそうならないためにも、長崎の海援隊を拡大し、別の道を模索する夢を語る。竜馬の明るい人柄と夢物語に、中岡も幡も、刺客の右太すらも次第に惹かれていった。そんな中、近江屋に暗殺者の群れが迫る・・・。

坂本竜馬が暗殺される直前の3日間を描いた異色モノクロ映画。台詞などに製作された70年代当時の世相を感じさせるものもあるが、原田芳雄演じる竜馬が生き生きしており、古さを感じさせない。

決して格好良くはないが、男女を問わず人を惹きつけずにはおかない竜馬。刺客の右太と並んで屋根の上に座り、「おまん、なんもしゃべらんのう。無口なんじゃねー」と頷くシーンや、中岡、幡、右太とともに墓地で記念撮影するシーンでは、原田が竜馬そのものに見えてくる。随所に笑いを交えながら、最後の3日間に竜馬の魅力を凝縮し、周辺の若者たちも躍動感たっぷりに描いた青春時代劇というべき作品である。

原田さんも中川さんも他界されていますが、映像の中では永遠に若者ですね。


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