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いくらなんでも高すぎた イクラ値下がりの理由

BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラス」。年末年始を挟んで約1カ月ぶりとなった今日の「値段の方程式」のテーマは「イクラ」でした。高級食材ですが、今はかなり安くなっています。最近は値上がりが続いていたのに、ここに来ての値下がりにはどういう理由があるのでしょうか。

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上のグラフを見てください。いくらの卸値は2016年から18年にかけて上昇しています。この時期に何が起こっていたのかというと……

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親魚サケの漁獲量落ち込み

2017年に漁獲量は例年の半分以下と記録的な不漁になりました。最も高い時には卸値は1キロ9000~1万2千円と、バブル期以来、30年ぶりの高値をつけました。店頭価格も100グラムあたり1200~2000円と、前の年に比べ4割近く上昇しました。
親魚のサケが減れば、イクラはより希少なものになって値段も高くなるというです。
では、イクラが安くなっているのは、サケの漁獲量が回復したからでしょうか。実はそうではないんです。

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2019年シーズンは漁獲量がさらに減っています。2017年を下回り、40年ぶりの大不漁になるのが確実と言われています。

理屈が合わない、不思議な値動きですね。なぜこうなったのでしょうか。高値の時、イクラの店頭価格は100グラム1200円~2000円でした。この100グラムがどのくらいの量か、イメージするためにスタジオ内にイクラ100グラムを用意しました。キャスターの八木ひとみさんが「晩酌だと一人で食べる量ですね。これが2000円だとやはり高いです」と感想を話しました。
そうなんです。やはり「高い」と感じてしまいます。もともと高級食材ですが、値段が高騰しすぎた結果、みんなイクラを買わなくなってしまった。

「いくらなんでも高い」

流通業者も売れなければ在庫を抱えるだけですから何とか売るために値下げする。そして、どんどん安くなっているのが、イクラ値下がりの構図です。じつは2019年の漁期当初の秋、サケの水揚げ回復の予想が出ていました。サケが増えればイクラも増えますから、在庫を抱える流通業者が慌てて売ったのも響いています。イクラバブルがはじけたというような格好です。

値段が急激に下がった要因の一つに、輸入品の増加もあります。イクラの値段が高騰するのに合わせて、国産品に代わって、ロシア産とか北米産が台頭しました。輸入品の卸値は国産に比べ3割安い。流通量の8割近くを占めていた国産ですが、今は半分くらいが輸入品になりました。
代替品として、小さなマスの卵も使われるようになったことも影響している。こちらは国産イクラの半額程度です。国産のイクラの需要は減って、売れないから値段も下がっています。

キャスターの天明麻衣子さんが「代わりのモノがなければ、高くても買うという選択につながりそうですけど、代わりのモノがあると、『そっちでもいいか』ってなりますよね」とコメントしました。
そうです。この消費者の気分というのは恐ろしく、一度、「それでいいか」と思うと、なかなか元に戻らない。適正な値段水準を見誤ると後々まで響きます。

コメも高値で消費減に拍車

主食のコメも同じような影響を受けています。

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2003年、2012年と突出して値上がりしました。03年は冷夏による不作、11〜12年は東日本大震災の影響で不作だったのが理由です。流通量が減ったことで、値段を大きく切り上げた。
この値上がりが、コメ離れを加速させることにつながりました。コメの値段は急激な値上がりの後、上がる前より下がってしまいます。
現在も様々な政策でコメの値段を維持しようとしています。2019年産米も高値で始まりましたが、足元で急激に下がっています。それでも消費量は戻りません。もし、値段が高くなりすぎないように抑制していたらコメ離れの速度は緩まっていたかもしれません。

和食ブーム追い風、世界でイクラ人気

今後、イクラもどんどん安くなるのでしょうか。コメとは事情が異なり、今後は再び上昇しそうです。和食ブームを背景に欧米、中東、アジアで人気が高まっている。それに合わせて輸入品の値上がりが予想されます。
天明さんが「サケは養殖が盛んですね。養殖が増えればイクラの流通量も値段も安定するのでは」と質問してきました。ですが、養殖は刺し身やすしとして食べられる生のサーモンの生産が目的です。卵を抱えてしまうと、脂やうま味が卵にとられてしまうため、産卵前に出荷するのが一般的です。日本各地でご当地サーモンの養殖が増えていますが、イクラの供給増にはつながらりません。
イクラの値下がりから見える、値段の方程式はこれです。

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値段を上げすぎると客離れで値段は下がる

需要と供給のバランスで価格が決まるというマーケットの大原則ですから、仕方ない面もありますが、極度に価格乱高下をどのように抑えていくかは生産者や流通業者にとって頭の痛いところですね。

    



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