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日本産真珠の価格上昇 SDGsで熱視線

世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。今日のテーマは「日本産真珠の価格上昇 SDGsで熱視線」。6月の誕生石でもある真珠の価格が上昇しています。

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜〜金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。

真珠は最近、SDGsの観点でも注目されています。真珠は母貝となるアコヤ貝などの貝が真珠を生成する段階で二酸化炭素を吸収してくれます。貝の真珠となる部分以外でも貝柱は食用にしたり貝殻はボタンなどの装飾品にしたりと活用されており、資源の無駄が少ないのです。生産から流通までの過程も透明性が高いとされSDGsに貢献しているとして見直されています。

日本では長崎が生産量1位

日本で最も生産量が多いのは長崎県。愛媛県も多く生産しています。三重県が3位なのは意外に思う人が多いかもしれません。

真珠の中でも日本で生産されるアコヤ真珠の価格が上がっています。そもそも真珠の仕入価格は入札会と呼ばれる生産者と流通業者とのやり取りで決まります。全国真珠養殖漁業協同組合連合会によると2022年度の入札会の全国平均価格は1匁(もんめ)=3.75gあたり7318円。コロナ前の2019年の2倍近くにまで跳ね上がっています。
仕入価格上昇に伴って、販売価格も高くなっています。銀座にある真珠の販売店「enwsp東京銀座店」で取材してきました。真珠専門店としてネックレスやイヤリングなどを取り扱っています。主力商品は、冠婚葬祭用のネックレスと耳飾りのセット。標準的な8ミリ玉のものでおよそ29万円です。担当の中村さんは「去年から比べると1.5~2倍近くに値段は上がっていますね」と話します。「最近ですと、やはり海外のお客様もご来店されることが増えました。円安ということもあるのか、売り上げとしては伸びています」。確かに取材中にも中国人観光客が何人か来店していました。

店頭価格が急激に上昇

こちらがenwspの販売価格の推移です。

年々、値上がり傾向でしたが、ここ1年は特に急激に上がっています。去年の17万6000円から今年は29万7000円へと12万円以上の値上がりです。

アコヤ貝大量死で生産減少

理由は主に2つあります。「アコヤ貝大量死による生産減少」「海外からの日本の真珠人気」です。

アコヤ貝の稚貝が4年前に7割死ぬ被害がありました。ウイルスが原因とみられており、2019年以降の真珠の生産量が一気に落ちています。2022年は13.2トンと、大量死前の2018年に比べ4割減っています。

日本の輸出も急回復

一方で中国の需要が拡大しています。元々中国では金や赤サンゴなどが人気でしたが、市場の成熟で富裕層が増加し、貴金属の金や赤サンゴに次ぐ新たな宝石として真珠に目が向けられています。
世界の真珠の取引の中心地である香港での国際見本市で多くの中国人が日本の真珠を購入しています。こうした商談会はコロナの影響で2年ほど中断されていました。「買いたくても買えない」状態が解消し、購入量も一気に回復してきました。
日本の輸出額も急回復。年間300億円を超えていた日本の輸出額はコロナ禍の2020年に76億円にまで落ち込みましたが、2022年には237億円まで戻ってきました。

国・地域別では、1位の香港では前年比38%増、2位のアメリカでは前年比15%増です。日本の真珠は販売元や産地が明確なため信頼性が高く、他の国の真珠と比べ、四季による海水温の変動により光沢や深みが強いとされます。日本が世界で初めて真珠の養殖に成功した国なのもブランド力につながっています。最初に挙げたSDGsの観点も含めて注目が集まっています。

きょうの方程式です。

真珠価格上昇=生産縮小+世界からの注目

真珠価格の上昇はアコヤ貝の大量死で生産が縮小した一方で、中国など海外から日本の真珠が注目されたことで起こったんですね。
今後の真珠価格はどうなるんでしょうか。中国を中心にアジアの真珠人気は一段と高まりそうです。生産は急激に上向かないので価格はまだ上がりそうです。宝飾品の需要は世界景気によって左右される面も大きいです。実際に現在は世界景気の後退懸念からダイヤモンド価格が下落しています。真珠は世界から注目されていることが価格の下支え要因になり、今後も堅調に推移するとみています。











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