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若者人気の古着 供給足りず値上がり

世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。きょうのテーマは「若者人気の古着 供給足りず値上がり」。フリマアプリの浸透やリサイクル店の増加で「古着文化」が定着し、若者を中心に消費が拡大しています。若い人だけでなく、40〜50歳代にも古着や中古品への抵抗感がなくなっています。人気はアメリカなど海外メーカーの商品です。国内で流通している古着は10万トンありますが、アメリカ古着を中心に輸入古着は1万トンを超え、過去最高となりました。貿易統計から計算する去年の輸入単価は1キログラム1229円で5年前に比べ3割程度上昇しました。

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜〜金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。

値上がり目立つビンテージ

古着には2種類あります。一般的な中古品としての古着と希少価値があるビンテージです。今の古着の値上がりを牽引しているのはビンテージのほうです。特に海外メーカーのものが値上がりしています。
東京・原宿にある古着店「JAM」で取材してきました。大阪を中心に26店舗を全国に展開している大手です。

店内にはアメリカの古着を中心に1万点以上の商品が並んでいます。売り場の担当者は「古着の単価は5~6年前から比べると全体的に上がっている」と話します。象徴的なのはアメリカのスポーツウェアブランド「チャンピオン」のスウェット。1着2万円を超える価格で販売されている商品もありました。5年前は7000円程度で売られてましたが、今は2倍以上で推移しています。

個性的なファッション求める人に人気

JAMを運営するJAM TRADINGの福嶋政憲社長は「ファストファッションが飽きられてきた。より個性的な古着が注目されてきたり、アメカジ(アメリカン・カジュアル)古着の需要がすごく世界的に高く、取り合いになっている」と話します。1990年代に販売されていた商品はこれまで比較的安く買える商品でした。ここ数年でチャンピオンやリーバイスなどの定番商品がビンテージに移行していて価格が上がってきました。個性的なファッションを求める人が希少性の高い海外産の古着に流れているようです。

世界的ブームで古着奪い合い

値上がりの理由はほかにも。①円安②海外(欧州)バイヤーによる買い占め。古着は日本だけでのブームではなく世界的にブームになっていて、そこで買い負けが起こっています。一般的に古着の仕入れは何トンもの古着を一気に海外から大量に格安で仕入れています。世界的に物価が上がっている今、この大量仕入れの値段も上がっています。さらに円安ということもあり、せっかく仕入れた商品もヨーロッパのバイヤーが買い占めているといいます。JAMでも仕入れ価格がここ5年で2〜3割上がっているといいます。

今日の方程式はこちら。

輸入古着の高騰=希少性の高い服の人気+海外(欧州)バイヤーによる買い占め

今年に入り、関係者の間では「世界でも日本でも古着の発生が減ってきた」との声が聞かれます。一般的に家庭が古着を売ったり処分したりするのは購入後2〜3年後が多いとされます。2〜3年前といえば、ちょうどコロナ禍の真っ只中の時期。外出自粛の影響で新しい衣料品の購入を絞っており古着の供給量が減っているそうです。
逆にあらゆるモノが値上がりする中、節約志向が高まり、割安な古着の需要は増えています。今回取材したJAMではコロナかで店舗拡大し全体の売り上げが3割ほど増えたそうです。

日本は輸出超過

海外古着が値上がりしている一方、国内メーカーの古着は値段が付きにくく上がっている商品は少ないです。ファストファッションは大量生産することで流行を取り入れながら低価格に抑えた衣料品を短いサイクルで販売しています。新品でも安く買えるので古着としては値段がつきにくいのです。多くが分別拠点である東南アジアに流れています。2022年の日本の古着輸出は22万トンと輸入の1万トンを大幅に上回っています。

今後も輸入古着は値上がりしていくとみています。今上がっている商品は今後も希少性がさらに高くなるからです。コロナ禍での買い控えの影響で、供給量が限られた状態は2~3年続きそうです。
気になる動きも出てきました。欧州でアパレル事業者に売れ残った服や靴の廃棄を禁止する法律が大筋合意されました。こうした動きが衣料品の再利用や古着市場にどんな影響を与えるのか。今後の注目ポイントです。












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