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心の傷を治す薬

*安田菜津紀著「写真で伝える仕事」

内戦終結後のカンボジアの農村部で、
騙され人身売買された子どもたち。
自分に値段がつけられ虐待を受け、
言葉では言い尽くせないような辛酸を嘗めてなお、
自分を売った家族を思いやる子どもたち。
衝撃を受けた安田さんがどうしてこの仕事を選んだか、
彼女の生い立ちをまじえながら話していく。

中高校生に向けて書かれた本だが、
耳にした彼らはどんな感想を持つだろうか?
日本は戦争がないのにも関わらず自殺率の高い国だ。
身体的不幸が少ないのに、
精神的な痛みを抱えている人が多い。
カンボジアは遠い国すぎてピンと来ない人もいれば、
響きすぎて目を背ける人もいるだろう。

聞いて何になるの?
何もできない無力な自分ではどうすることも出来ない。
それより自分の痛みを分かって欲しい。
遠い国の知らない子どもじゃなくて
目の前の自分をまず幸せにして。
世界には酷い目に遭っている人も、
虐げられる人もいるかも知れないけど、
人と比べて我慢しろと言われても困る。

日本が安全で恵まれた国であることは知っている。
でも実際に傷ついているのは自分なのだから。
こんなに苦しいままじゃ他人の幸せなんて願えない。
法治国家ならば身体的に受けた痛みは、
いずれ法が裁いてくれる。
多くの人から支援の手も差し伸べられる。
でも心に受ける痛みから守ってもらうのは難しい。

癒す場所のない傷と言葉にできない痛みは、
他に依存してやり過ごすしかない。
それは音楽やゲーム、動画や人だったりする。
どんなに傷だらけでも他の人には分からない。
いつ癒えるのか分からない傷を抱えて呻いている。
自分の人生を生きているのかさえ分からない。
そんな風に感じる国なのは何故か?

それは価値観の多様性がないからだ。
テストの点を取れる子が褒められる。
いい学校良い会社に入れる人が評価される。
“そんな社会は間違っているでしょ?
そんなのおかしい!”と言える大人は、
どうして少ないのだろう?
誰でも幸せになるために生まれてきて、
人を幸せにして生きていたいと思うのに。

アトリエでこんな話をする。
「心の傷につける薬はありません。
でも心が傷つかない方法はあるのです。
“人の言葉で傷つかない自分でいる”と決めてしまうこと。
そのためには自分を大好きって思うこと。
そう思えると、他人との距離感がきちんと分かるんです。
大切なあなた達の心が傷ついたら私が悲しい。

あなたを傷つける嫌な人や場所からは、
ちゃんと逃げて下さいと。
自分を好きになるって難しいですよね?
けれどアトリエの子達は、
その方法を一番知っている人たちなんだよ。
だって“自分が楽しい♡”と思えることを、
一生懸命やればいいだけだから。
親御さんもそれだけを望んで通わせてくれています。

人から受けた痛みにめげて泣いて、
文句を言って突っ伏しているうちは前に進むことが難しい。
人間であれば課題は誰でも必ずあります。
ひとつクリアすれば、また次の課題です。
地球は魂の修行道場ですから。
ただ自分を大切にして、
一生懸命やっていればそれで良いの。
心のバリアをしっかり作ろう。」と。

安田菜津紀さんは最後にこう書いている。
“皆さんはこれからそれぞれ、
自分自身の道を切り開いていくことと思います。
どんな立場にも職業にも、
必ず持ち寄り合える役割があるはずです。
大切なのは皆さんが今感じている
「無力さ」を忘れないことだと思っています。
「今は何もできないけれど、何かしたい」と思うその気持ちが、
心の糧となって将来、
行動のチャンスが訪れたときに必ず花を咲かせるでしょう。“

役割を持ち寄り合える人を、

育てさせていただける幸せに感謝して。

今日もおかげ様


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