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2作品・配信リリース!

今月も、bandcamp fridayのタイミングに合わせて新作をリリース。
今回は特典のデジタルブックレットがないので、ここで詳細を書きます。

①Nathalie Wise 18年ぶりの新シングル

ナタリーワイズはBIKKE、斉藤哲也、高野寛によるバンド。2001年に結成、3枚のアルバムを発表した後、活動休止。2021年4月に無観客配信ライブで「再奏」、サブスク解禁やライブ、bandcampでのライブアルバムリリースを経た後、今回18年ぶりの新曲を解禁。

1曲目はBIKKE作曲のインストをリミックスして作られた書き下ろし曲「何もない世界の果てに」。聴きながらどうぞ。
(「buy」ボタンでご購入の方のみ、ボーナストラックが再生できます)

NW波

何もない世界の果てに
作詞:BIKKE・高野寛 作曲:BIKKE・斉藤哲也・高野寛

さぁ今、全てが終わる さぁ今、時が止まる
幼い あの頃の 記憶がふと 蘇る
悲しいことばかり 寂しいことばかり
涙がふと落ちる 明日がふと消える

真っ白な残像 ちっぽけな感傷 燃え尽きた感情 この空は群青
あの頃の幻想 朽ち果てた現状 錆びついた勲章 輝いて疾走

何もない世界の果てに 誰も居ない 自分の他に
肌を刺す 冷たい風に 吹かれながら 彷徨いながら
踏みしめる 瓦礫の下に すす汚れた グラスが1つ
拾い上げ 口にあてると かすかに 懐かしさが

あの時は 笑っていた 軽々しく 何もかも
振り返ることもなく 全てのものを犠牲にして
触れるもの 触れたいもの 分からぬまま 感じぬまま
帰る場所など そう どうでもよかった 知らなかった

囚われた偶像 道化師は放浪 繰り返す残響 この空は空洞
まっさらな煩悩 惑わせて翻弄 残されてずっと 逃げ出せたやっと

忘れていた 悲しみに 思い出す 寂しさに
声をあげて 空を見上げる 泣き崩れて 膝をつく
何もなかった日々 ありふれた 繰り返し
でも 誰かが側にいた 鼓動が そこにはあった

それでも歩く 闇の向こうへ つまづきながら 傷つきながら
戻らない日々 振り返るたび あの日の夢に 別れを告げて

このエッセイにも書いたとおり、ナタリーワイズ1stアルバムの録音初日は2001年9月11日、ニューヨーク同時多発テロ事件のその日だった。あの日を境に、世界は変わってしまった。その影響は1st〜2ndアルバムには色濃く残っていて、「Sigh」 「O.M.G.」などの曲の僕が歌っているパートは、繰り返し繰り返し見せつけられたあの映像の印象から生まれた。

世界的なパンデミックの元、連日戦場の映像を観ながら息の詰まるような思いで暮らしている今、同時多発テロやイラク戦争の頃を思い出している人も多いと思う。バンド内では誰も口には出さなかったが、今回の新曲にもそんな今のムードは横たわっている。それもナタリーワイズらしいといえばらしい。

2曲めの「波」は、昨年のワンマンからライブでも何度か演奏して仕上げてきた作品。ボーナストラック(*購入特典)にはドラムとベースのない、初期のナタリーワイズに通じるアコースティックバージョンを収録してみた。


作詞:高野寛・BIKKE 作曲:斉藤哲也・高野寛

揺れる 波の中へ 寄せる 消える 岩さえ砕いて
続く 続く 遠い未来 月も 星も 生まれる前から

始まりは 何もない世界 視界に映る光と陰
時間も 何処にいるのかも 考えもしない 理解もしない
動き出す時間の波に 周りだけざわめきだし
過ぎ去る 光の陰に やってくる 陰の光に

沈む 波の中で 荒れる 濡れる 嵐の夜に
同じ 波を 感じたなら 二人 歩く この闇の中で

立ち止まることなく時は 意味もなく理由もなく
曖昧な気持ちだけを 考えたり そう理解したり
何処からも 誰からも 邪魔されない 奪われない
そう 僕らは目を閉じる 何もない世界の中へ

満ちる 月の光に 青く 白く 照らすライン
同じ 夢を 観られるなら 眠る 眠る この闇の中で

知らぬ間に 僕らは消える 知らぬ間に 時も消える
泣いていた僕らのことを いずれ皆んな 忘れるから
優しい時間だけを 優しい光だけを
始まりの時と同じように 眠るように 見つめるのさ

揺れる 波の中へ 寄せる 消える 岩さえ砕いて
続く 続く 遠い未来 月も 星も 生まれる前から

②セルフカヴァーEP「今、あの頃の歌」

2週間前にふと思い立ち、今歌いたい歌を録音して、売上から難民支援の基金に寄付したいと思った。ナタリーワイズの録音と並行して一気に4曲を宅録。アートワークは黄色い花の写真に青を重ねた。

今、あの頃の歌

1. Skylove:2011年の「Kameleon Pop」に収録されていた曲。1970年代の世界初の宇宙ステーション計画「スカイラブ(Skylab)計画」をもじって「Skylove」。アポロはアメリカ、スプートニクはソ連(ロシア)の宇宙船の名前。宇宙から観た地球には、もちろん国境などない。

Skylove 
作詞・作曲:高野寛

アポロとスプートニク スカイラブ
宇宙を遊泳 無重力
視界は今日も 良好
この宇宙でkiss you スカイラブ

窓の外の地球はブルー
闇の中の孤独なサファイア
この小さな星 誰のものでもない
愛し合おう 変わりゆくこの星の上で誰もが

アポロとスプートニク スカイラブ
ここにはない 国境 宗教
視界は今日も 良好
この宇宙でkiss you スカイラブ

2. いちぬけた:2012年の高野寛+伊藤大助(クラムボン)によるEP「太陽と月・ひとつになる時」収録曲。直前にdisney+で「マッカートニー3.2.1.」を観てたからか、ベースが動き回るアレンジに(笑)

いちぬけた
作詞・作曲:高野寛

重大な問題を存在の根本に抱え込んだまま
瞬間の情熱を消費して重心をぐらつかせてる
信念や良心は慣習と馴れ合いに潰されるまま
常識も道徳も教育も形骸化 まるで成すがまま

うろたえるのも忘れ 何も見えないままで
取り憑かれてるみたいに 踊り続けるのなら
俺はいちぬけた ここでいちぬけた
あの日ふっと気がついた 夢がぱっと醒めたみたいに

荒天も曇天も豪雪も干ばつもずっとあるがまま
青天の霹靂や偶然の必然は日常茶飯事
これからはどうなんだ?困難か?そうなんだ、考えぬくのさ
今週の天候の完全な推測さえできないこの今に

閃きを探しだせば 右の脳で想い出せば
YES, NOはすぐ決まる 覆い被さる噂の中で
うろたえるのも忘れ 何も見えないままで
取り憑かれてるみたいに 踊り続けるのなら
俺はいちぬけた ここでいちぬけた
あの日ふっと気がついた 夢がぱっと醒めたみたいに

3. Bye Bye Television(2000−2022):2000年のシングルより。若い人はテレビを観なくなっているらしいが、それでも未だ世の中に対するテレビの影響力は大きい。ロシアでも、テレビしか観ない高齢者と、ネットで情報を得る若い世代との間で戦争に対する認識のズレが激しいという話を訊いた。今回「Good bye 20th world」を「平成world」と歌い替えた。この詞を書いた頃にはまだスマホも動画もなかったけれど、今歌うと「小さな画面」はスマホの事のように響く。

Bye Bye Television
作詞・作曲:高野寛

僕が生まれたのは ちょうどオリンピックの年
ビルを作る工事現場 毎日見ていた
戦争はいつだって 茶の間で目にしてた
本のページめくるように 過去が過ぎていった

Bye Bye Goodbye Television
Bye Bye Goodbye Yesterday
あの大きな画面に映ってた場面は現実の話

臨海副都心からもれる青い光
罪を知らない人は今日も黒く手を染める

Bye Bye Goodbye Television
Bye Bye Goodbye 平成47 world
この小さな画面に映ってる場面に涙が出るから

いらないことを覚えて いろんなものが壊れて
日々は今日も明日も今も カメラに追われる

Bye Bye Goodbye Television
Bye Bye Goodbye Yesterday
あの大きな画面に映ってた場面を僕は忘れない

Bye Bye Goodbye Television
Bye Bye Goodbye 過ぎた日
この小さな画面に映ってる場面に涙が出るから

4. 相変わらずさ:1995年「Sorrow & Smile」収録。1994年に書いた曲だったが、リリース直前に阪神大震災と地下鉄サリン事件が勃発。「平凡な毎日もいつか お金では買えない小さな宝石の日々になる」というフレーズが、まったく違う意味を持って響いてきた。もちろん、今も。

相変わらずさ


*気に入ってくれたら、「buy」ボタンから購入よろしくお願いします。売上の半分を、難民に寄付します。


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*ここでしか配信していないオリジナル音源が200曲以上あります。
そのまとめ。


*bandcampとbandcamp fridayについて


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