サイドB

土曜ソリトンSide-B : あれから20年 ①

 その1:プロローグ

「ソリトンSide-B、観てました」 いままで何度この言葉を聞いただろう。

『土曜ソリトンSide-B』は1995年4月から一年間、NHK教育テレビ(弦・Eテレ)で放送されたバラエティ。僕は緒川たまきさんと2人で司会を務め、毎週エンディングで弾き語りをした。「1年間だけだったんですか? もっと長かったと思ってました」と、これも数えきれないくらい何度も聞いたことば。

タイトルの「Side-B」は「レコードのB面」に由来している。「シングル盤のB面には埋もれた名曲が多くある。そんな、物事のあまり表に出てこない側面に光を当てて掘り下げる番組」たしか企画書の冒頭にそんな文言があった。

今でこそ「サブカル」という価値観は広く認知されているけれど、1995年当時はまだインターネット普及前、CSもなく、BSはWOWOWとNHKしかない時代。全国津々浦々まで届くNHK地上波の影響力は今とは比べ物にならない強さがあって、サブカル的志向を持つ全国の青少年が毎週食い入るように観ていた、らしい。

毎週様々なジャンルの方々をゲストに招いて(参考:http://www.chokai.ne.jp/mimori/side-b.html)司会経験ゼロの2人が言葉につまりながら繰り広げるトークは、独特なアンビエント感を放送事故2歩手前のテンポで醸し出していた。もしあの番組が生放送だったらただのグダグダなUST並のプログラムに過ぎなかっただろう。制作のスタッフは総じて若かったが、NHKのベテランスタッフがその自由なアイデアをしっかりと形にすることで、伝説の番組が生まれたのだ。

今振り返ると、1995年は自分にとっても、この世界においても、大きな転換の年だった。あの激動とシフトがあったからこそ、今の自分がここにあることがはっきりわかる。あれから20年。これからしばらくの間、毎週土曜日にあの頃のことを振り返りながら「ひとりソリトンSide-B」を連載していこうと思っています。

----------------

その2:「激しい時」 >>




この「サポート」は、いわゆる「投げ銭」です。 高野寛のnoteや音楽を気に入ってくれた方、よろしければ。 沢山のサポート、いつもありがとうございます。