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ハンディレコーダーで弾き語りをうまく録るには?

全国1万人の弾き語り愛好家の皆さん、こんにちは。
「爽やかと 言われ続けて 30年」ミュージシャンの高野寛です。

ところで、(ギターの)弾き語りの録音って、難しくないですか?
僕も、いつも悩みます。

携帯のボイスメモでも、置く位置をうまく探せば、それなりにバランスよく録れます。声やギターの音量にもよりますが、僕の場合、鎖骨の辺りを狙って角度をつけると、声とギターのバランスがちょうどいいみたいです。

そのバランスを見るには、携帯付属のイヤフォンとかではなくて、密閉型のヘッドフォンをして、実際にマイクが拾っているバランスをリアルタイムに確認しながら録るといいと思います。スタジオ録音の練習にもなります。

携帯よりもっといい音で録りたいと思った時、手軽なのはハンディレコーダーです。こういうやつです。

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この類のハンディレコーダーにはマイクが2つ付いているんですが、そこが実は弾き語りには難しいポイントだったりします。普通は机の上にレコーダーを置いて録ると思いますが、そうすると、左右のマイクの間に、歌もギターも「ぼわん」と定位する形になって、雰囲気はうまく捉えられるんだけど、普段耳にしてるCDの音源よりも歌がぼやけがちです。(CDの録音だと歌は1本のマイクで録って、ど真ん中に定位するように配置するのです)

とはいえ、マイクを2本立てて、それをレコーダーにつないで、歌とギターを別々に拾って録るのも面倒です。モニターする時、左と右でギターと歌が左右に分かれてしまったりするのも厄介です。

そんなわけで、ひと手間かけて問題をクリアするやり方を開拓してみました。

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ハンディレコーダーには大抵カメラの3脚が使えるネジ穴が空いていますが、そこにこんなふうに、横向きに3脚をセットします。

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そして、こんなふうに縦置きにセッティングします。

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正面から見ると、斜めに向き合ったマイクの一本が、自分の真正面を向くようにセッティングします。この黒い●に向かって歌うイメージです。もう一つの下を向いているマイクが、主にアコギを拾うことになります。(僕はZOOMのH4n Proを使用していますが、この辺はそれぞれの機種に合わせて、試してみるべし)

ヘッドフォンして歌いながら、セッティングを詰めます。H4nにはそれぞれのマイクに指向性の角度を微調整する機能がついていますが(僕も最近まで気づかなかった!)、今回は歌を狙っている方のマイクは一番狭い90°にして声にフォーカスを絞り、ギターを狙っている方は最大の120°と最小の90°の間くらいにすると、ギター全体の響きを拾えるようでした。

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録ったファイルは、歌が左に、ギターが右に寄っています。ヘッドフォン・イヤフォンで聞いてみてください。(最初28秒位)96k、24bit録音。

で、これをDAWに取り込んで整えます。僕はLOGICを使いました。
まず「GAIN」をインサートして「mono」をオンにします。これで、左右に分かれていたギターと歌が真ん中に定位します。

この時「input balance」を左に振ると歌が、右に振るとギターが、大きくなります。録音の時楽器と歌のバランスがうまくとれていなかったら、ここである程度補正できるわけです。

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音質の微調整で3kあたりを少し持ち上げたら、歌がよく聞こえるようになりました。当初、上記「Input Balance」で右に寄せて歌を上げていましたが、EQで解決したので結局「Input Balance」はセンターに戻しました。

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後は、なめらかにするためにコンプ。デフォルトのプリセットのスレッショルドとアウトのゲインを少し調整したくらい。

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そしてセンドで、アンビエンスリバーブをうっすら加えます。こうすることで、当初モノラルになっていた音源にステレオの広がりを持たせます。

そして、マスターフェーダーにリミッターを入れてレベル調整、出来たのがこの28秒位からの録音です。

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*2020年4月・追記:

多くの皆さんと同じように自宅待機生活が続く日々、ただ練習しても面白くないので、弾き語りを録ってUPし続けています。

基本、このページに書いてあるハンディレコーダーの録り方メインで録っています。続ける中で気づいたところや改良点を追記。

・レコーダーを置く高さは、アコギのサウンドホールと口のちょうど真ん中くらいに位置させます。ちなみに写真の不自然さが気になると思いますが、昔3Dプリンターで作ってもらったフィギュアです(笑)

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・マイクの「吹かれ」(息を吹きかけてしまった時のボワッという風の音)防止に、以前使っていた別のレコーダーのウインドガードを装着。若干音がこもるものの、ギターの音がまろやかになるので僕は好み。目の荒いスポンジなどで代用できるかも?DIY精神でいろいろ試してください。

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・上記は「モノラルに変換してパンで歌とギターのバランスを取る」というやり方になっていますが、最近は演奏しながら、レコーダーの角度を上下に調節することでギターと歌のバランスを取っています。例えば、やさしく爪弾く時は少し下に向けて、ギターが大きくなるように(上の写真)。逆にピック弾きのときはギターが大きくなるので、レコーダーを上に向けて声をよく拾うように。

・歌とギターがいいバランスで録れたときは、「Gain」でモノラルに変換するよりも、「Direction mixer」(logicだと「Imaging」のカテゴリーに入っている)で、完全なモノラルよりもほんの少しだけステレオで広げる感じにするのも良いです。0.10とか、ほんの僅か。

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・ZOOM H4n proの場合、オプションのリモコンを「つなぐ」(ワイヤレスではなくて線をつなぐタイプ)と快適。録音レベルをマニュアルに設定すると手元で録音レベルも調整可。

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*2021年2月追記
先日、エンジニアの友人と弾き語りの録音について話していたところ、スタジオのレコーディングでも歌とギターのマイクの「位相のズレ」が音質の問題になることが多く、いちばん手っ取り早い解決策は「歌のマイクとギターのマイクのダイアフラム(音を拾う場所)をなるべく近くに配置すること」とのことでした。

同じところに位置するハンディレコーダーの2つのマイクで同時に歌とギターを録音するのは、位相の観点からも、いい結果が得られる可能性が高いとのことでした。

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音楽の聞き方の中心がライブと動画になりつつある昨今ですが、僕のような宅録出身者にとっては、演奏と歌のアベレージを上げることが以前にも増して重要になってきた気がします。

録音して聞き返すと、知らずしらず自分の中に「第三者の耳」(客観性)が育っていきます。感情を載せて歌い弾くのはもちろん大事ですが、演奏中も自分の中の「第三者の耳」を働かせて集中力を高められたら、数多ある銘ライブ盤にあるような演奏を残せるシンガーにいつか成れるのかなーなんて思います。何年やっても道半ばですね。

そんなわけで。

*高野寛のデビューからの30年を振り返る自伝的エッセイ「ずっと、音だけを追いかけてきた」全・42話。https://note.mu/takano_hiroshi/m/mc84b61d33fb1


*以前録った、動画があります。


*「もう、いいかい」は2019年10月発売のデビュー30周年記念アルバム「City Folklore」に収録されました。(サウンドプロデュースは冨田ラボこと冨田恵一さん)


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