見出し画像

大学「卒業」 / デビュー30周年と、これから(2018〜)

*2020.1.5. 加筆しました。
*この連載は今回が最終回です。このページ単体で¥200でも読めますが、¥3000でマガジン「ずっと、音だけを追いかけてきた」をご購入いただくと、過去30年分全ての連載記事(全42話・¥4800相当)を読むことが出来ます。
*2018年の出来事: 韓国と北朝鮮の軍事境界線・板門店で韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が史上3回目の南北首脳会談を実施 / タイのタムルアン洞窟に現地のサッカー少年団が閉じ込められる事故が発生 / オウム真理教事件に関わった6人に対する死刑が執行される / 北海道胆振東部地震や大阪府北部地震、西日本豪雨、北陸豪雪、記録的猛暑や大型台風など異常気象が続く / 全米オープン決勝で大坂なおみが優勝 / 安室奈美恵が引退 /

-----

画像1

2018年3月で京都精華大学ポピュラーカルチャー学部・特任教授としての5年間の契約は満了した。毎週京都に通う日々に別れを告げ、2018年4月からは「客員教授」という肩書で年に数回特別講義を行う立場になった。自分にとっての社会勉強でもあった「大学教授」の仕事もこれで一区切り。
特別講義後に学生と写真を撮ると「客員教授」の威厳など相変わらず微塵もないんだなこれが(笑)


この5年間で一期生と二期生を入学から卒業まで見届けることができたのは感慨深かった。卒業生の中では、一期生で僕やAoki Takamasa君の授業をずっと受講していたトラックメイカーのisagenが頑張っている。2018年8月にiTunes / Apple Musicの「今週のNEW ARTIST」に選出され、「c.b.a.g. EP」がiTunes エレクトロニックチャートで最高位2位を獲得するなど話題になった。

---

2018年の最初のリリースは、アルバム「A-UN」から始まった。Dr.kyOn & 佐橋佳幸の二人組・Darjeeling(ダージリン)のプロデュースで、’60〜'70年代のセッションミュージシャンによる生演奏黄金期のサウンドをイメージして作られた作品だ。

きっかけは2017年11月8日発売のダージリンのコラボアルバム「8芯二葉〜WinterBlend」だった。細野さんの「泰安洋行」もイメージしつつ作詞と歌とウクレレで参加した収録曲「春が来りゃ 乙女じゃなくても 夢見がち」が好評で「一発録りで一緒にアルバムを作ろうよ」というダージリン先輩からのお誘いを頂いた。ダージリンのレーベル・GEAEG(ソミラミソ)レコードからリリースされることも決まった。

佐橋さんと一緒にソロ作品を録音するのは、2000年のシングル「Bye Bye Television」以来およそ20年ぶり。kyOnさんとは1993年にボ・ガンボスと対バンして以来高橋幸宏さんの還暦祝いのライブなどステージでは何度もご一緒させてもらっているが、自分の曲でレコーディングセッションするのは初めてだったと思う。

参加ミュージシャンはダージリンのお二人に加え、ビートニクスや高橋幸宏さんのセッションでよく一緒になっていたCurly Giraffeこと高桑聖君 (B)、そして1996年のシングル「KAORI」のプロデューサーでもあり、近年京都精華大の先生仲間で毎週のように会っていた屋敷豪太さん(Drs) というメンバー。全員が歌えるソングライターでありプロデューサーでもある。ちなみに、佐橋さんは高桑君が以前在籍していたバンド、ロッテンハッツのプロデューサーでもあった。

それぞれ旧知でありながら初顔合わせのセッションは、冗談を言い合って、音で会話するだけでよかった。全曲のベーシック録音がたった3日間で終了したのは、そんな「阿吽(A-UN)」の呼吸があってこそ。仕上げに紅二点、野宮真貴さんへの提供曲「上海的旋律(Shang-hai Melody)」のセルフカヴァーには野宮真貴さんを、矢野顕子さんとの共作曲「Me & My Sea Otter」のセルフカヴァーには坂本美雨さんをゲストヴォーカルに迎えた。

歌とバンドの演奏を同時にスタジオライブで録る作り方は2014年のブラジル録音盤「TRIO」以来。みんなで1本のマイクに向かってコーラスをハモったりする昔ながらのやり方はやはり楽しい。CDに載せられたスタジオの写真にも、音楽の空気感があふれている。

画像2

「A-UN」はオーガニックなタイトさもありながら、でもどこか懐かしいシティポップの香りも漂うアルバムになった。他のアーティストに提供した楽曲のセルフカヴァーを中心にボブ・ディランの「時代は変わる」の日本語訳詞カバーも含む構成は、ダージリンのお二人の選曲・アイデアだ。

アルバム最後の「Salsa de Surf」は僕が全編リードギターのインストで、思えばこういう曲は今まで録音したことがなかった。中間部のアドリブソロ回しも含め全部一発録りで、スタジオライブの緊張感が漲る。「とおくはなれて」「みじかい歌」の新曲2曲も気に入っている。 

--

----

デビュー30周年を迎える10月には、ユニバーサルミュージックから2枚のオールタイムベスト+コラボレーションベストによる初の3枚組ベスト盤「Spectra ~30th All time & Collaboration Best~」をリリース。

ここから先は

5,983字 / 8画像
この記事のみ ¥ 200

この「サポート」は、いわゆる「投げ銭」です。 高野寛のnoteや音楽を気に入ってくれた方、よろしければ。 沢山のサポート、いつもありがとうございます。